鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

「花がしゃべらない」という命題は「鏡の国」で虚偽&日常的現実でも延長的真理(GLASS2-5)

2011-09-21 09:31:01 | Weblog
 丘の頂上がアリスには見えるが、そこに行く方法はない。しかしともかく彼女は鏡の国の探検に出発する。彼女は花壇に行き当たる。鬼百合が風に揺れる。アリスが話しかける。「鬼百合さん!あなたがしゃべれたらいいのにね!」と。

 PS1:アリスは一人で、話し相手が誰も居ないから、鬼百合にいたずらに、ふと話しかけた。

 鬼百合が「私たちはしゃべります。しゃべるに値する人に対してはね!」と答える。アリスはあまりに驚き、しばらく何も言えない。彼女は息を飲む。

 PS2:花は普通、しゃべらない。アリスに花がしゃべり返答した。これは架空の話だろうか?
 これまで、この日常の現実では花がしゃべることがなかった。だからといって、「花がしゃべらない」という命題が真と証明されたわけではない。「しゃべるに値する人」に対して花がしゃべるとしたら、この日常の現実でも花がしゃべることはありうる。

 PS3:アリスが驚いたのは、日常の現実でアリスは、花にしゃべりかけられたことがないし、花にしゃべりかけられた人について聞いたことがないためである。日常の現実で花がしゃべらない理由。(1)「しゃべるに値する人」がいないから。(2)日常の現実では、「花の本性」として花はしゃべらないから。
 日常の現実では、普通は、花がしゃべらないのは、「花の本性」のためとされる:理由(2)。アリスも、そう思っていた。
 ここで気をつけよう。「花がしゃべらない」という命題が真と証明されたわけではない。日常的現実のなかで、過去に否定されたことがない限りの真理が、延長的に永遠の真理とされているだけである。

 PS4:「鏡の国」でアリスは、日常的現実では過去に否定されたことがない真理、「花がしゃべらない」が、あっさり否定される事実に出会う。命題「花がしゃべらない」が虚偽と証明される。
 日常的現実の中で、命題「花がしゃべらない」を真理であると思い込んでいたアリスは、鏡の国の現実の中で、その命題が虚偽であることを知り、あまりに驚き息を飲んだ。

 PS5:命題「花がしゃべらない」は、日常的現実でも、過去に否定されたことがない限りの真理だから、未来に虚偽と証明される可能性が残る。
 
 PS6:また日常的現実でも、花がしゃべらないのは「しゃべるに値する人」がいないからかもしれない:理由(1)。実際に日常的現実で、未来において花がしゃべれば、一方で命題「花がしゃべらない」が虚偽と証明されるとともに、他方で、この理由(1)“花がしゃべらないのは「しゃべるに値する人」がいないから”が、正しいかどうかも分かる。しかし、これまでのところ日常的現実において、過去に花がしゃべったことがないので、この理由(1)が間違っているとも、また正しいとも言えない。

「道が家に連れ戻す」のかor「家が邪魔する」のか?(GLASS2-4)

2011-09-10 19:19:02 | Weblog
 アリスが丘の頂上に行こうとしても、道が彼女を家の前に連れ戻す。アリスが言う。「全く最悪だわ!こんなに邪魔ばかりする家なんて見たことないわ!全く!」と。

 PS1:アリスが注目する主題が変わる。アリスは初め道に注目していた。「道が彼女を家に連れ戻す」(命題1)と。ところが今やアリスは家を主題とする。「家が丘の頂上に行くことを邪魔する」(命題2)と。この二つの命題はどういう関係にあるのか?

 PS2:おきている事態は、ひとつ=同一である。事態を命題化するとき、注目される主題が主語となる。上記の命題1と命題2は、同一の事態について述べ、等価関係にある。両者は、注目される主題である主語が異なるのみである。

突然ねじれ、身震いし、瞬間移動させる道(GLASS2-3)

2011-09-04 23:57:27 | Weblog
 丘に向かって道を歩いても、どうしても道が家へともどる。「文句を言っても無駄よね!」とアリスが家に言う。アリスは家と話す。
 「まだ元の現実の部屋にもどる気はないわ!」と、彼女は再び、丘への道を歩き始める。「丘に向かってともかくまっすぐ行く!」とアリスが決意する。

 PS1:先ほどの2本目の道は、アリスが曲がるか否かを選択できる。彼女はともかく、まっすぐ行くことを選択。

 しばらくはうまくいき、アリスも「今度は大丈夫そう」と思う。するとその時、道が突然ねじれ、そして身震いした。次の瞬間、彼女は家の戸口のところを歩く自分に気づく。

 PS2:突然ねじれ、身震いする道とは何か?アリスを戸口に瞬間移動させる道とは何か?