ダニエル書2章37節~49節
ネブカドネツァル王は、即位して2年目のこと、何度か奇妙な夢を見て、不安になり眠れなくなりました。夢を見て、ある程度、今の自分の状況を逆に理解させられるときがあります。つまり、今の自分は、このようなところに欲求を感じているのだな、ストレスがあるのだな、不安があるのだな、そういったことです。ところが、何ら、思いあたるものがない、まったく意味不明、そのような夢を見ますと、それも、何度も同じような夢を見ますと、いったいこれはどういうことなのだろう、と不安になってくるということはあります。
このときのネブカドネツァル王がまさにそうでした。そこで、占い師、祈祷師、まじない師、賢者を呼び出して、自分の夢の意味を教えよと、伝えたところ、彼らは、その夢の話をしてくれれば、解釈をしますと答えました。ところが、王は、自分の夢を言い当て、その上で、その夢の解釈をしれくれなければ、お前たちの体を八つ裂きにし、お前たちの家を打ち壊す、と言ったのでした。
王は、彼らが、自分の見た夢の内容を話すことで、それをどう解釈するかに時間稼ぎをするだろうと考えたようです。それはいったいどういうことだったのでしょうか。王は、「いいか、わたしの命令は絶対だ。もしお前たちがわたしの見た夢を言い当て、その解釈をしてくれなければ、お前たちの体を八つ裂きにし、お前たちの家を打ち壊す。しかし、もしわたしの見た夢を言い当て、正しく解釈してくれれば、ほうびとして贈り物と大いなる名誉を授けよう」ということでした。
つまり、単純に長くは待てないと言った思いだったのかもしれません。あるいは、占い師、祈祷師、まじない師、賢者たちが、王の夢の内容を話したならば、その意味が王の気持ちに沿わなければ、殺されてしまう、だから、夢の内容を聞いて、しばらく検討させてほしいといって、時間稼ぎをした挙句に、それが王様を納得させることは無理だと判断したならば彼らの中には逃げてしまう者が出てくるのではないか、といったようなことを王は考えたのではないでしょうか。
賢者たちは、王の求めに応じることのできる者は、この地上にはおりませんと告げました。また、これまでの王や支配者たちの中に、このようなことを占い師、祈祷師、まじない師、賢者などに行った者もいないと答えました。そして、その求めに応じることのできるのは、人間と住まいを共にしない神々だけです、と答えました。賢者たちも必死でした。なぜならば、自分たちの命がかかっていたからです。
そしてまた、王も、実は、彼らのことをあまり信用していない風があります。「わたしの前で、うそをついたり、いいかげんなことを述べ立てたりして、わたしの考えが変わるまで時を稼ごうとしているにちがいない。さあ、夢を話してみよ。そうすれば、解釈できるかどうかも分かるだろう」と王は述べています。これまで、彼らとの関係において、いくつかの不信を感じていたものと思われます。
テレビを見ていますと、予知能力者、あるいは占い師とか言われる方々の中に、ときに、相手が今どのようなことで悩んでいるのか、あるいは、相手の家族構成なども具体的に言い当てる人がいます。しかし、よく見ていますと、相談に来た者との会話の中から逆にいろいろな情報を巧妙に聞き出していて、あたかもそのことを占い師の方が悟ったように言うケースが、多くありました。このときの、占い師、まじない師、祈祷師、賢者などが、「王様のお求めに応じることのできる者は、この地上にはおりません」と答えたのは、ある意味では、非常に正直なところでした。しかしながら、王は、激怒して、バビロンの知者(占い師、まじない師、祈祷師、賢者)を皆殺しにするように命令を出しました。
ダニエルたちも知者の範疇に入りましたから、役人が捕えにやってきましたが、ダニエルは、侍従長アルヨクに思慮深く賢明に対応して、王の出された厳しい命令の訳を聞きました。ダニエルは、王のもと(王宮)へ行き、時間をいただけるならば、解釈します、と約束を取り付けました。そして、ダニエルは、他の3人の仲間たちに事情を説明し、相談をしました。そして、彼らは、他のバビロンの賢者と共に殺されることのないよう、神様に憐みを願い、その夢の秘密を知らせていただきたいと祈りました。
神様は、王の夢の秘密を教えて欲しいと祈るダニエルたちの祈りに応えられました。王の見た夢は、頭が純金、胸と腕が銀、腹と腿が青銅、すねが鉄、足は一部が鉄、一部が陶土でできている巨大な像でした。そして、見ているうちに、一つの石が人手によらずに切り出されて、その像の鉄と陶土の足を打ち砕きました。そして、鉄も陶土も、青銅も銀も金も共に砕け、もみ殻のように、風に吹き払われ、跡形もなくなりました。そして、その像を打った石は大きな山となり、全地に広がったというものでした。
そして、ダニエルに示されたこの夢の解釈というものは、どのようなものであったかと言いますと、まず、ネブカドネツァル王が金の頭を意味しているということでした。そして、ネブカドネツァル王のあとに、他の国が興る、しかし、これはネブカドネツァル王よりも劣ります。メデアです。その次に興る第三の国が、青銅で、この国は全地を支配します。ペルシャのことを指していました。このペルシャのクロス王によって、バビロンは滅びます。そして、第4の国が興ります。これは、鉄のように強い国で、足の指が一部が鉄、一部が陶土ということで、ギリシャとそれに続く分裂国家を表しておりました。
そして、これらの王たちの時代に、神様は一つの国を興され、この国は永遠に滅びることのない国で、主権が他の民に渡ることはなく、すべての国を打ち滅ぼし、永遠に続くというのです。神様の興される国、永遠に滅びることのない国、主権が他の民にわたることがない国、永遠に続く国、というのですから、いわゆる、いずれ完成される神様の国であると理解してよいでしょう。
この夢が意味するところを説明されて、ネブカドネツァル王は、ダニエルに、「あなたたちの神はまことの神々の神、すべての王の主」と告白するのでした。しかし、ネブカドネツァル王にとって、この夢のお話はハッピーなものではなかったはずです。というのも、ダニエルは、ネブカドネツァル王に、「あなたがその金の頭」といい、それから、夢の内容も「鉄も陶土も、青銅も銀も金も共に砕け、夏の打穀場のもみ殻のようになり、風に吹き払われ、跡形もなく」なったわけですから、いずれは、このバビロンも滅びるというのですから、おもしろくなかったと思われます。
しかし、王は、この話を聞いて、安心したようです。それは、夢の意味がわかったというところに最大の原因があります。誰にも話さなかった夢を言い当てたのですから、ダニエルへの信頼は、それだけでも大きなものがあったでしょう。そして、王は「あなたがこの秘密を明かすことができたからには、あなたたちの神はまことに神々の神、すべての王の主、秘密を明かす方にちがいない」、と答えました。この中に、「あなたたちの神はまことの神々の神、すべての王の主」と告白をしておりますが、ここで、ネブカドネツァル王は、真の神様が誰かがわかり、この真の神様に帰依したかというと、そこまでは至っていないと判断せざるをえません。というのも、次の3章では、彼は、巨大な金の偶像を造らせ、これを拝むことを国民に強いているからです。
王は、このとき、単純に、自分だけしか知らないこの不気味な夢を言い当てる者がいて、この者が、その夢の解釈をしてくれた、それだけで満足がいったということです。そして、夢の内容も、よく考えるならば、どうということもない、ごくこれまでもなされてきた世の歴史についてのお話で、次から次へ、支配者とか王国とかは変わっていくものである、その力の移り変わりはあるものである、そういうお話ではないかと思ったかもしれません。何か、急な大きな事件が起こる、自分の身にふりかかるという話ではなかったのです。まずは、やりやれ安心といったところだったのではないでしょうか。
ダニエルは、このことで、バビロン全体を治める高官となりました。また、バビロンの知者すべての長官にもなりました。すばらしい褒美ももらいました。他の3人もバビロンのそれぞれ行政官に任命されました。
ダニエルたちは、捕囚先の異教徒の地で、いろいろな局面において、自分たちのイスラエルの真の神様を信頼し、従っていくという姿勢を貫き、祝福に与ることになっていったのです。
今の時代に生きる私たちは、このお話からどのようなメッセージを受け取るべきでしょうか。私たちは、いつの時代も神様の主権を語っていく、神様の御国を語っていく、そういうことが一つにはあるでしょう。神様の主権と神様の御国こそが永遠に続くものであって、それ以外は、どうなるのかわからない、変わっていく可能性を大いに孕んでいる存在です。どうも地上から戦争がなくなるというのはなさそうですし、これからの長い歴史においても、国の形は領土や形態、統廃合など、変わる可能性の方が大きいと言えます。
日本という国も、戦争などはなくても、度重なる地震などで、沈んでしまうという可能性だって、まったくないとは言えません。不変などというのは、ありえません。神様の御国だけが不変です。それは、天の御国でしょうし、わたしたちのただなかにあるものだとも言えます。この世にあっても、神様の支配の及んでいるところ、神様の御心が行われているところ、そこはすべて神の国だという言い方もできます。当時の強大な国、バビロンもモンスターの金の頭でしかなく、神様のお力の前には、風に吹き飛ばされるもみ殻でしかなかったということです。くれぐれもこの世の国の繁栄や権力ある者に絶対的なものを見出してはならないということです。
ネブカドネツァル王が、このとき、自分の権力もまた相対的なものであって、それゆえにこそ、すべてのことを神様に委ねることを学んだとはとても思えません。先ほども申しましたように、3章にはこれらの出来事など、なかったかのように、金の偶像を作りそれを拝ませるという愚かな行為をしているからです。彼もまた自分の権力を誇り、それを誇示するといった他の王たちと変わる者ではありませんでした。しかし、自分だけしか知らない夢を言い当て、それについての解釈もそれなりに納得できるものであったがゆえに、王は、安心し、ダニエルを優遇するまでに至りました。
ダニエルのしたことをもう一度たどってみます。彼は、殺されそうになったときに、恐怖におののいて、あわてるということをせず、侍従長アルヨクに思慮深く賢明に対応しました。それから、時間をくれたら、解釈しますということをわざわざ王宮まで出向いて伝えました。誠実な姿勢を示したと言えます。それから、仲間たちに、事情を説明しました。一人で解決しようというのではなく、仲間の力を借りようとしました。それから、天の神に憐みを願い、その夢の秘密を求めて祈りました。いろいろと画策するのではなく、第一に、神様により頼むということをしたのでした。
神様に聞き、神様をより頼むところから、私たちの第一歩が始まります。そして、祈りは、いつも具体的であるべきだということを教えられます。それから、ネブカドネツァル王に、説明をするときに、神様の主権、神様への信仰告白を添えて、語っています。自分らが王の夢を知ったのではなく、神様が教えてくださった、この神様が、将来何事が起こるかを王にお知らせになったということです。王が、先々のことを思いめぐらしておられたので、神様はそのことをお告げになられたのです、と伝えました。
また、神様は、王に、国と権威と威力と威光を授け、人間をはじめすべての生き物をあなたに委ね、すべてを治めさせられました。神様がそれらの権威を授けたのです。そして、これから起こることをすべて王にお知らせになったのです、と言いました。ですから、ネブカドネツァル王は、「あなたがこの秘密を明かすことができたからには、あなたたちの神はまことに神々の神、すべての王の主、秘密を明かす方にちがいない」と告白しました。
しかし、彼は、だからといって、本気でこの神を畏れ、自分の従うべきお方とは思わなかったのです。それどころか、次の瞬間には、金の偶像を作り、それを神として民たちにそれを拝ませるという罪を犯していくのです。
私たちは、この世にあって、どなたが神様なのかを明確に知っております。この方を信頼し、この方に従っていくのです。神様の造られた永遠の国に属する者たちであって、この神様を世の王たち、支配者、権力ある者たちに告げる者たちであることをおぼえておきたいと思います。時代は変わり、政権が代わり、どのような国になろうとも、私たちは、いつもこの不動の神の国に属する者であって、立ち位置は変わらず、神様を信頼し、神様に聞き、神様にゆだね、神様に従っていくのです。そのとき、ダニエルたちがそうであったように、いろいろな危機から解き放たれ、逆に、祝福に与ることになっていくのだと信じます。
平良師
真の主権者
ネブカドネツァル王は、即位して2年目のこと、何度か奇妙な夢を見て、不安になり眠れなくなりました。夢を見て、ある程度、今の自分の状況を逆に理解させられるときがあります。つまり、今の自分は、このようなところに欲求を感じているのだな、ストレスがあるのだな、不安があるのだな、そういったことです。ところが、何ら、思いあたるものがない、まったく意味不明、そのような夢を見ますと、それも、何度も同じような夢を見ますと、いったいこれはどういうことなのだろう、と不安になってくるということはあります。
このときのネブカドネツァル王がまさにそうでした。そこで、占い師、祈祷師、まじない師、賢者を呼び出して、自分の夢の意味を教えよと、伝えたところ、彼らは、その夢の話をしてくれれば、解釈をしますと答えました。ところが、王は、自分の夢を言い当て、その上で、その夢の解釈をしれくれなければ、お前たちの体を八つ裂きにし、お前たちの家を打ち壊す、と言ったのでした。
王は、彼らが、自分の見た夢の内容を話すことで、それをどう解釈するかに時間稼ぎをするだろうと考えたようです。それはいったいどういうことだったのでしょうか。王は、「いいか、わたしの命令は絶対だ。もしお前たちがわたしの見た夢を言い当て、その解釈をしてくれなければ、お前たちの体を八つ裂きにし、お前たちの家を打ち壊す。しかし、もしわたしの見た夢を言い当て、正しく解釈してくれれば、ほうびとして贈り物と大いなる名誉を授けよう」ということでした。
つまり、単純に長くは待てないと言った思いだったのかもしれません。あるいは、占い師、祈祷師、まじない師、賢者たちが、王の夢の内容を話したならば、その意味が王の気持ちに沿わなければ、殺されてしまう、だから、夢の内容を聞いて、しばらく検討させてほしいといって、時間稼ぎをした挙句に、それが王様を納得させることは無理だと判断したならば彼らの中には逃げてしまう者が出てくるのではないか、といったようなことを王は考えたのではないでしょうか。
賢者たちは、王の求めに応じることのできる者は、この地上にはおりませんと告げました。また、これまでの王や支配者たちの中に、このようなことを占い師、祈祷師、まじない師、賢者などに行った者もいないと答えました。そして、その求めに応じることのできるのは、人間と住まいを共にしない神々だけです、と答えました。賢者たちも必死でした。なぜならば、自分たちの命がかかっていたからです。
そしてまた、王も、実は、彼らのことをあまり信用していない風があります。「わたしの前で、うそをついたり、いいかげんなことを述べ立てたりして、わたしの考えが変わるまで時を稼ごうとしているにちがいない。さあ、夢を話してみよ。そうすれば、解釈できるかどうかも分かるだろう」と王は述べています。これまで、彼らとの関係において、いくつかの不信を感じていたものと思われます。
テレビを見ていますと、予知能力者、あるいは占い師とか言われる方々の中に、ときに、相手が今どのようなことで悩んでいるのか、あるいは、相手の家族構成なども具体的に言い当てる人がいます。しかし、よく見ていますと、相談に来た者との会話の中から逆にいろいろな情報を巧妙に聞き出していて、あたかもそのことを占い師の方が悟ったように言うケースが、多くありました。このときの、占い師、まじない師、祈祷師、賢者などが、「王様のお求めに応じることのできる者は、この地上にはおりません」と答えたのは、ある意味では、非常に正直なところでした。しかしながら、王は、激怒して、バビロンの知者(占い師、まじない師、祈祷師、賢者)を皆殺しにするように命令を出しました。
ダニエルたちも知者の範疇に入りましたから、役人が捕えにやってきましたが、ダニエルは、侍従長アルヨクに思慮深く賢明に対応して、王の出された厳しい命令の訳を聞きました。ダニエルは、王のもと(王宮)へ行き、時間をいただけるならば、解釈します、と約束を取り付けました。そして、ダニエルは、他の3人の仲間たちに事情を説明し、相談をしました。そして、彼らは、他のバビロンの賢者と共に殺されることのないよう、神様に憐みを願い、その夢の秘密を知らせていただきたいと祈りました。
神様は、王の夢の秘密を教えて欲しいと祈るダニエルたちの祈りに応えられました。王の見た夢は、頭が純金、胸と腕が銀、腹と腿が青銅、すねが鉄、足は一部が鉄、一部が陶土でできている巨大な像でした。そして、見ているうちに、一つの石が人手によらずに切り出されて、その像の鉄と陶土の足を打ち砕きました。そして、鉄も陶土も、青銅も銀も金も共に砕け、もみ殻のように、風に吹き払われ、跡形もなくなりました。そして、その像を打った石は大きな山となり、全地に広がったというものでした。
そして、ダニエルに示されたこの夢の解釈というものは、どのようなものであったかと言いますと、まず、ネブカドネツァル王が金の頭を意味しているということでした。そして、ネブカドネツァル王のあとに、他の国が興る、しかし、これはネブカドネツァル王よりも劣ります。メデアです。その次に興る第三の国が、青銅で、この国は全地を支配します。ペルシャのことを指していました。このペルシャのクロス王によって、バビロンは滅びます。そして、第4の国が興ります。これは、鉄のように強い国で、足の指が一部が鉄、一部が陶土ということで、ギリシャとそれに続く分裂国家を表しておりました。
そして、これらの王たちの時代に、神様は一つの国を興され、この国は永遠に滅びることのない国で、主権が他の民に渡ることはなく、すべての国を打ち滅ぼし、永遠に続くというのです。神様の興される国、永遠に滅びることのない国、主権が他の民にわたることがない国、永遠に続く国、というのですから、いわゆる、いずれ完成される神様の国であると理解してよいでしょう。
この夢が意味するところを説明されて、ネブカドネツァル王は、ダニエルに、「あなたたちの神はまことの神々の神、すべての王の主」と告白するのでした。しかし、ネブカドネツァル王にとって、この夢のお話はハッピーなものではなかったはずです。というのも、ダニエルは、ネブカドネツァル王に、「あなたがその金の頭」といい、それから、夢の内容も「鉄も陶土も、青銅も銀も金も共に砕け、夏の打穀場のもみ殻のようになり、風に吹き払われ、跡形もなく」なったわけですから、いずれは、このバビロンも滅びるというのですから、おもしろくなかったと思われます。
しかし、王は、この話を聞いて、安心したようです。それは、夢の意味がわかったというところに最大の原因があります。誰にも話さなかった夢を言い当てたのですから、ダニエルへの信頼は、それだけでも大きなものがあったでしょう。そして、王は「あなたがこの秘密を明かすことができたからには、あなたたちの神はまことに神々の神、すべての王の主、秘密を明かす方にちがいない」、と答えました。この中に、「あなたたちの神はまことの神々の神、すべての王の主」と告白をしておりますが、ここで、ネブカドネツァル王は、真の神様が誰かがわかり、この真の神様に帰依したかというと、そこまでは至っていないと判断せざるをえません。というのも、次の3章では、彼は、巨大な金の偶像を造らせ、これを拝むことを国民に強いているからです。
王は、このとき、単純に、自分だけしか知らないこの不気味な夢を言い当てる者がいて、この者が、その夢の解釈をしてくれた、それだけで満足がいったということです。そして、夢の内容も、よく考えるならば、どうということもない、ごくこれまでもなされてきた世の歴史についてのお話で、次から次へ、支配者とか王国とかは変わっていくものである、その力の移り変わりはあるものである、そういうお話ではないかと思ったかもしれません。何か、急な大きな事件が起こる、自分の身にふりかかるという話ではなかったのです。まずは、やりやれ安心といったところだったのではないでしょうか。
ダニエルは、このことで、バビロン全体を治める高官となりました。また、バビロンの知者すべての長官にもなりました。すばらしい褒美ももらいました。他の3人もバビロンのそれぞれ行政官に任命されました。
ダニエルたちは、捕囚先の異教徒の地で、いろいろな局面において、自分たちのイスラエルの真の神様を信頼し、従っていくという姿勢を貫き、祝福に与ることになっていったのです。
今の時代に生きる私たちは、このお話からどのようなメッセージを受け取るべきでしょうか。私たちは、いつの時代も神様の主権を語っていく、神様の御国を語っていく、そういうことが一つにはあるでしょう。神様の主権と神様の御国こそが永遠に続くものであって、それ以外は、どうなるのかわからない、変わっていく可能性を大いに孕んでいる存在です。どうも地上から戦争がなくなるというのはなさそうですし、これからの長い歴史においても、国の形は領土や形態、統廃合など、変わる可能性の方が大きいと言えます。
日本という国も、戦争などはなくても、度重なる地震などで、沈んでしまうという可能性だって、まったくないとは言えません。不変などというのは、ありえません。神様の御国だけが不変です。それは、天の御国でしょうし、わたしたちのただなかにあるものだとも言えます。この世にあっても、神様の支配の及んでいるところ、神様の御心が行われているところ、そこはすべて神の国だという言い方もできます。当時の強大な国、バビロンもモンスターの金の頭でしかなく、神様のお力の前には、風に吹き飛ばされるもみ殻でしかなかったということです。くれぐれもこの世の国の繁栄や権力ある者に絶対的なものを見出してはならないということです。
ネブカドネツァル王が、このとき、自分の権力もまた相対的なものであって、それゆえにこそ、すべてのことを神様に委ねることを学んだとはとても思えません。先ほども申しましたように、3章にはこれらの出来事など、なかったかのように、金の偶像を作りそれを拝ませるという愚かな行為をしているからです。彼もまた自分の権力を誇り、それを誇示するといった他の王たちと変わる者ではありませんでした。しかし、自分だけしか知らない夢を言い当て、それについての解釈もそれなりに納得できるものであったがゆえに、王は、安心し、ダニエルを優遇するまでに至りました。
ダニエルのしたことをもう一度たどってみます。彼は、殺されそうになったときに、恐怖におののいて、あわてるということをせず、侍従長アルヨクに思慮深く賢明に対応しました。それから、時間をくれたら、解釈しますということをわざわざ王宮まで出向いて伝えました。誠実な姿勢を示したと言えます。それから、仲間たちに、事情を説明しました。一人で解決しようというのではなく、仲間の力を借りようとしました。それから、天の神に憐みを願い、その夢の秘密を求めて祈りました。いろいろと画策するのではなく、第一に、神様により頼むということをしたのでした。
神様に聞き、神様をより頼むところから、私たちの第一歩が始まります。そして、祈りは、いつも具体的であるべきだということを教えられます。それから、ネブカドネツァル王に、説明をするときに、神様の主権、神様への信仰告白を添えて、語っています。自分らが王の夢を知ったのではなく、神様が教えてくださった、この神様が、将来何事が起こるかを王にお知らせになったということです。王が、先々のことを思いめぐらしておられたので、神様はそのことをお告げになられたのです、と伝えました。
また、神様は、王に、国と権威と威力と威光を授け、人間をはじめすべての生き物をあなたに委ね、すべてを治めさせられました。神様がそれらの権威を授けたのです。そして、これから起こることをすべて王にお知らせになったのです、と言いました。ですから、ネブカドネツァル王は、「あなたがこの秘密を明かすことができたからには、あなたたちの神はまことに神々の神、すべての王の主、秘密を明かす方にちがいない」と告白しました。
しかし、彼は、だからといって、本気でこの神を畏れ、自分の従うべきお方とは思わなかったのです。それどころか、次の瞬間には、金の偶像を作り、それを神として民たちにそれを拝ませるという罪を犯していくのです。
私たちは、この世にあって、どなたが神様なのかを明確に知っております。この方を信頼し、この方に従っていくのです。神様の造られた永遠の国に属する者たちであって、この神様を世の王たち、支配者、権力ある者たちに告げる者たちであることをおぼえておきたいと思います。時代は変わり、政権が代わり、どのような国になろうとも、私たちは、いつもこの不動の神の国に属する者であって、立ち位置は変わらず、神様を信頼し、神様に聞き、神様にゆだね、神様に従っていくのです。そのとき、ダニエルたちがそうであったように、いろいろな危機から解き放たれ、逆に、祝福に与ることになっていくのだと信じます。
平良師