ちいさなちいさな いのりのことば

 * にしだひろみ *

魔法の手 *日々のつれづれ*

2015年05月15日 | Weblog

5月9日のことです。


息子が、嬉しそうにやってきて、わたしにこう訊ねました。


「ママ、好きな動物はなあに?」



「オオカミと熊。」

すぐに答えられました。



オオカミと熊は、わたしがどうしようもなく惹かれる動物です。

シートン動物記や、星野道夫さんの本を幾度も読み、抑えようのない憧れを感じてきました。



熊にもオオカミにも、家畜や人を襲う残虐さがあります。

逆にまた、熊やオオカミが、人間の子どもを育てたという事実もありました。




わたしが憧れてやまないのは、遥か昔にあった、太古にはあったはずの、人と動物との繋がりです。

今よりも、ずっと強く深い関係があったに違いない・・・

そんな、確信に近いものが、わたしの魂にあるのです。





息子がまた、尋ねます。

「どっちが、一番好き?」


「うーん、そうね、選ぶのはとても難しいけど・・・、そうね、熊かしら。」


「熊にもいろいろいるでしょう?
どの熊が一番好き?」


「そうねえ、みんな素晴らしいと思うから・・・。
それでは、月の輪グマにしようかな。」


「わかった!!」


息子は飛び跳ねるようにして、自分の机のところに走っていきました。

何やら、始めたようです。




数分後、楽しそうな声が飛んできました。

「ぼくが“いいよ”って言うまで、見ちゃだめだよ?」


「うん、見ないね。」




さあ、何をしているのでしょう。

少し、想像がつきますが、

楽しみに待っていることにしましょう。






30分ほど経ったでしょうか。

息子が飛んできました。


「ママ、明日見るのがいい?それとも、今日見るのがいい?」


何のことだか、わかるような、わからないような。


「そうねえ、明日まで待つのもいいかもしれないね。」



すると、息子は残念そう。

問いを重ねます。


「明日にするの?」


おやおや、今日の方がいいようですね。


「やっぱり、今日にしようかな。」


そう答えると、目を輝かせて、部屋に走って行きました。



慌ただしく戻ってくると、両手を後ろに隠したまま、


「目を閉じてね。いいよ、って言うまで。」

と言います。




「いいよ!」

息子の声に、目を開くと、

わたしの手のひらに、手紙と、手作りの熊の工作が載せられていました。



黒い画用紙で作られている熊、立体的で、四本の足でちゃんと立ちます。

耳も鼻も、尻尾も、立体的。

顎には可愛い三日月模様が。

おまけに、優しい顔をしています。




手紙を広げると、

“ママへ

母の日、おめでとう。

これはぼくからのプレゼントだよ。”

と書かれていました。




なんて素敵な贈り物でしょう。

息子は、嬉しそうに、わたしを見守っています。








子どもの手は、魔法の手。

どんなものでも創造できる。

それは、“できる”と、思うから。



そして子どもは、人を喜ばせることが大好き。

何かをもらった時よりも、何かを贈る時の方が、幸せそう。

我慢できなくて、飛び跳ねているのだから。







どこにも売っていない、素敵な素敵な、熊さん。

何にも代えることのできない、素敵な素敵な、贈り物。


今日も、優しい顔で、わたしを見上げています。











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