5月9日のことです。
息子が、嬉しそうにやってきて、わたしにこう訊ねました。
「ママ、好きな動物はなあに?」
「オオカミと熊。」
すぐに答えられました。
オオカミと熊は、わたしがどうしようもなく惹かれる動物です。
シートン動物記や、星野道夫さんの本を幾度も読み、抑えようのない憧れを感じてきました。
熊にもオオカミにも、家畜や人を襲う残虐さがあります。
逆にまた、熊やオオカミが、人間の子どもを育てたという事実もありました。
わたしが憧れてやまないのは、遥か昔にあった、太古にはあったはずの、人と動物との繋がりです。
今よりも、ずっと強く深い関係があったに違いない・・・
そんな、確信に近いものが、わたしの魂にあるのです。
息子がまた、尋ねます。
「どっちが、一番好き?」
「うーん、そうね、選ぶのはとても難しいけど・・・、そうね、熊かしら。」
「熊にもいろいろいるでしょう?
どの熊が一番好き?」
「そうねえ、みんな素晴らしいと思うから・・・。
それでは、月の輪グマにしようかな。」
「わかった!!」
息子は飛び跳ねるようにして、自分の机のところに走っていきました。
何やら、始めたようです。
数分後、楽しそうな声が飛んできました。
「ぼくが“いいよ”って言うまで、見ちゃだめだよ?」
「うん、見ないね。」
さあ、何をしているのでしょう。
少し、想像がつきますが、
楽しみに待っていることにしましょう。
30分ほど経ったでしょうか。
息子が飛んできました。
「ママ、明日見るのがいい?それとも、今日見るのがいい?」
何のことだか、わかるような、わからないような。
「そうねえ、明日まで待つのもいいかもしれないね。」
すると、息子は残念そう。
問いを重ねます。
「明日にするの?」
おやおや、今日の方がいいようですね。
「やっぱり、今日にしようかな。」
そう答えると、目を輝かせて、部屋に走って行きました。
慌ただしく戻ってくると、両手を後ろに隠したまま、
「目を閉じてね。いいよ、って言うまで。」
と言います。
「いいよ!」
息子の声に、目を開くと、
わたしの手のひらに、手紙と、手作りの熊の工作が載せられていました。
黒い画用紙で作られている熊、立体的で、四本の足でちゃんと立ちます。
耳も鼻も、尻尾も、立体的。
顎には可愛い三日月模様が。
おまけに、優しい顔をしています。
手紙を広げると、
“ママへ
母の日、おめでとう。
これはぼくからのプレゼントだよ。”
と書かれていました。
なんて素敵な贈り物でしょう。
息子は、嬉しそうに、わたしを見守っています。
子どもの手は、魔法の手。
どんなものでも創造できる。
それは、“できる”と、思うから。
そして子どもは、人を喜ばせることが大好き。
何かをもらった時よりも、何かを贈る時の方が、幸せそう。
我慢できなくて、飛び跳ねているのだから。
どこにも売っていない、素敵な素敵な、熊さん。
何にも代えることのできない、素敵な素敵な、贈り物。
今日も、優しい顔で、わたしを見上げています。