ちいさなちいさな いのりのことば

 * にしだひろみ *

おんじん(2)

2013年12月29日 | Weblog


あなたは母を
“おんじん”と言った

息子よ
そうではない

それは反対なのだ

母は
あなたが来る前
いかに小さく
ものごとを見ていたか

あなたが来たことで
越えられずにいた山を
いくつ登りきれたことか

あなたらしさの全てが
母への教えであり
恵みであった

真実へと
母の目を開かせてくれたのは
あなただった

だから母は
“おんじん”ではなくて
ひとりの
弱くて幸福な
母なのだ












美しい人

2013年12月28日 | Weblog


その人は
来る日も来る日も
男たちにまぎれて
土木作業をしていた

短く刈り込まれた髪は
その大半が白く
顔や手はいつも
黒く焼けていた

ある時その人は
作業の合間に顔を上げ
隣の人に微笑んだ

その笑顔が
健やかで
清らかで
足が止まった


心に愛するものをもち
目の前のことに喜びを見出だす時

装わなくとも人は
本当は
こんなにも
美しいのかもしれない















世界がひとつになるまで

2013年12月27日 | Weblog


「世界がひとつになるまで」
っていう歌
ママ知ってる?

習わなかったの?

じゃあね
ぼくが一番好きなところだけ歌うから
きいててね

“世界がひとつになるまで
ずっと手をつないでいよう”

ああ
やっぱりね

ママはぜったい
喜ぶと思ったんだ

この歌は
普通の歌とは違ったの

大きな声が出てきたの

それを
ママに話したくて
ぼく
走ってきたんだ













“おんじん”

2013年12月18日 | Weblog


はずかしくて
口でいえないから
かみにかきます

ママはぼくの
“おんじん”です

“おんじん”ていうのは
たすけてくれる人のことだよ

ぼくのきもちを
いつもいつも
わかってくれた

ぼくには
それがいちばん
うれしかったんだ