ちいさなちいさな いのりのことば

 * にしだひろみ *

完全なものだけを*私の本棚*

2017年08月04日 | Weblog

度重なる読書に耐えうる本は、そんなに多くない、と思っています。


何度読み返しても、あたらしい発見があったり、

その時にこそ感じられることがあったり、

より深く読めるようになったり。



年を経るごとに、色あせていって、日焼けをして、

カバーがぼろぼろになっていったり、どこかへいってしまったり、

それでも、折に触れては手に取りたくなる、

そんな本。




『海からの贈りもの』を、今年の夏も、読み返しています。

夏が来ると、どうしても、読みたくなる。



今年は、ここが、心にとまりました。



“たったひとつの つめた貝のほうが、三つあるよりも心に残る。

空の月はひとつしか輝いていない。

(中略)

だんだんわたしは選ぶことを覚え、完全なものだけをそばに置いておくようになった。

珍しい貝でなくてもいいのだが、形が完全に保存されているものを残し、それを海の中の島に似せて、少しずつ距離をとって丸く並べた。

なぜなら、周りに空間があってこそ、美しさは生きるのだから。

出来事や対象物、人間もまた、少し距離をとってみてはじめて意味を持つものであり、美しくあるのだから。”




本を閉じて、ふたたび、思いました。


いい本だな。

何度でも読みたい、いい本。

来年の夏にも、きっと、読むのだろうな。

その次も、その次も・・・、わたしが生きているかぎり。



こんな本だけを、わたしの本棚に置けるようになりたい。


一度に読んだらよし、という本は、旅する本。

巡りゆく本。

そういうお役目の本。



わたしの本棚には、

ながく人生に寄り添ってくれる、そんな本だけを、持っていたい。


一冊、一冊、大切に、ほどよい距離をもって、並べられるように、

たくさんではなく、大好きなものだけを。



もう何ヵ月も続けている、家の片付けですが、

まだ、終わりが見えません。










お月さまに誘われて*日々のつれづれ*

2017年08月03日 | Weblog

昨日の夕方、忘れな草色の空を眺めていました。

時を忘れて。


そうしたら、いつの間にか、煌々と輝くお月さま。


誘われるように、なんとなく、夜のお買い物に出かけました。


ひんやり、涼しい風と一緒に。




そうしたら、遠雷のような音。


雷かしら?

いいえ、夜空は素晴らしい晴れ。


では、なにかしら?




遠くの空に目をやると・・・



まあ!

花火!



それも、野菊ほどの、ちいさなちいさな。



ああ、そうか、

今日は長岡花火の日でした。


お天気がよかったから、新潟市からも見えるのね。



それにしても、なんて可愛い。

野菊が一輪、

また一輪。


ていねいに開いていくのです。



歓声をあげかけて、思いとどまりました。


わたしの歓声のほうが、花火の音より大きいんだもの。


だから、すこし、静かに、そうっと、見ることにしたのです。





静かな、ひそやかな、花火見物。

こんな楽しみ方も、あったのですね。




お誘いありがとう、お月さま。














極上の本*日々のつれづれ*

2017年08月01日 | Weblog

少しずつしか読めない、そんな本に、時々、出逢います。


一語一語、噛み締めながら読む本。

そうしないと、溢れ出して、消化できないような本。

少し読んでは、ため息をついて、本を閉じて、

少しして、また開いて。


家で読んでも十分素敵なんだけど、

森のなかや、静かなカフェで読んだら、どんなにいいかしら・・・。

そんな本。



例えば、この一冊。



『詩の樹の下で』(みすず書房)
長田弘 著


(いつかは私の本棚にも・・・と想いながら、図書館から借りて読んでいます。)




「大きな木から下げられたブランコは、漕げば漕ぐほど木の影のなかへ、じぶんが音もなく没してゆくような感覚に引き込まれる。

木のなかへ、木の時間のなかへ、木のひろがりのなかへ、意識が浮き上がっては、またすぐに沈んでゆく。

(中略)

木のブランコをずっと漕いでいてはいけないのだ。

われを忘れて漕ぎつづけていると、きっと自分を見失ってしまう。」


(「ブランコの木」より)





幼いころ、たのしくてたのしくて、でもちょっとだけ怖かった、あの感覚を、

この人は、なんと的確に表現するのでしょう。



ああ、わかる・・・

そうなの、

きっとそうなんだわ・・・


何度もため息をつきました。




ようやく半分ほどまで読んだ、昨日、

パタン、と本を閉じました。



続きは、どこか、素敵な場所で・・・。


素敵な本を読んだ、素敵な記憶を、より素敵に仕舞いたくなったのです。











小鳥さん*日々のつれづれ*

2017年08月01日 | Weblog

文房具やさんで、一目惚れしたもの。

それは、レモン色の小鳥のペーパーナイフ。



尾の曲線のところがナイフ。

デザインが素敵です。

自立するところもいい。

ゆらゆら揺れながら転ばないところも好き。



小鳥さん、

小鳥さん、

これから、長い間、わたしと一緒にお手紙を待ってくれるのね。

きれいに開くお手伝いをしてくれるのね。


嬉しいお手紙もあるでしょうね。

悲しいお手紙もあるでしょうね。

お知らせだけの、印刷だけの、手紙もあるでしょうね。


わたしは、喜んだり、感動したり、心を痛めたり、涙をこぼすことも、あるのでしょうね。


そして、あなたはいつも、そこにいてくれるのね。


今からもう、ありがとう。

ありがとう。

お世話になります。

どうぞ、どうぞ、よろしくね。




語りかけ、そっと触れると、

唄うように揺れる、小鳥。