度重なる読書に耐えうる本は、そんなに多くない、と思っています。
何度読み返しても、あたらしい発見があったり、
その時にこそ感じられることがあったり、
より深く読めるようになったり。
年を経るごとに、色あせていって、日焼けをして、
カバーがぼろぼろになっていったり、どこかへいってしまったり、
それでも、折に触れては手に取りたくなる、
そんな本。
『海からの贈りもの』を、今年の夏も、読み返しています。
夏が来ると、どうしても、読みたくなる。
今年は、ここが、心にとまりました。
“たったひとつの つめた貝のほうが、三つあるよりも心に残る。
空の月はひとつしか輝いていない。
(中略)
だんだんわたしは選ぶことを覚え、完全なものだけをそばに置いておくようになった。
珍しい貝でなくてもいいのだが、形が完全に保存されているものを残し、それを海の中の島に似せて、少しずつ距離をとって丸く並べた。
なぜなら、周りに空間があってこそ、美しさは生きるのだから。
出来事や対象物、人間もまた、少し距離をとってみてはじめて意味を持つものであり、美しくあるのだから。”
本を閉じて、ふたたび、思いました。
いい本だな。
何度でも読みたい、いい本。
来年の夏にも、きっと、読むのだろうな。
その次も、その次も・・・、わたしが生きているかぎり。
こんな本だけを、わたしの本棚に置けるようになりたい。
一度に読んだらよし、という本は、旅する本。
巡りゆく本。
そういうお役目の本。
わたしの本棚には、
ながく人生に寄り添ってくれる、そんな本だけを、持っていたい。
一冊、一冊、大切に、ほどよい距離をもって、並べられるように、
たくさんではなく、大好きなものだけを。
もう何ヵ月も続けている、家の片付けですが、
まだ、終わりが見えません。