ちいさなちいさな いのりのことば

 * にしだひろみ *

風花

2019年02月02日 | Weblog
もう、10年もお世話になってきた美容師さん。

素敵なパートナーに出会われ、

沖縄へ、行かれることに。



明るさ、あたたかさを、いつも湛えた人だから、

数ヶ月に一度の美容院が、本当に楽しみでした。



1月の、最後の日。


予約がいっぱいで、お世話になることはできないけれど、

お手紙だけでも渡したい、

そう思い、

美容院に向かいました。



お忙しいはずだから、

お店の受け付けにいる方に、そっとお渡しして、

すぐに帰るつもりで、

ドアを開けたら、


受け付けに、その美容院さんが。



びっくり、のお顔。



わたしも、びっくりの顔で、

それから、急いで、


「お手紙だけ、お渡ししたくて。

最後にカットをお願いしたかったのですが、

ご予約いっぱいでした。

ああ、でも、

お会いできて本当によかった!」


そんなことを、あたふたとお伝えしたら、


美容師さん、

満面の笑顔で、


「すごーい!

にしださん、

ついさっき、キャンセルが出て、

今ちょうど、入っていただけます!」



美容師さんとわたしは、

手を取り合って、跳び跳ねました。



わたしの癖も、願いも、知り尽くしている美容師さんのハサミが、

気持ちよく音を刻みます。




よかった。

最後に、もう一度、お世話になれて。



いっぱい話して、

いっぱい笑って、

最後のカットが、終わりました。




別れ際、

握手をして、

何かお伝えしようとしたけど、

言葉ではないような言葉と、

涙が、溢れてきました。



美容師さんも、

何かをおっしゃり、

目を抑えて・・。




ここは寒いですから、お入りになってくださいね、とか口ごもり、

美容師さんに手を振り、

わたしは、駆け出しました。




雪が舞っていた。

大きなふわふわの、花びらのような雪が、

街に、舞っていた。



花吹雪みたいに、

桜みたいに、


祝福みたいに・・