ちいさなちいさな いのりのことば

 * にしだひろみ *

秘密の箱

2013年05月31日 | Weblog




なにかあるかしら
あなたのために

とっておきの
秘密の箱に

いろんなところで見つけた
宝物が きらきら

要らないようなものばかり
入っているように見えるでしょう

でもね
そうでもないの

だって
ほら、
あなたが笑ったもの









銀の糸

2013年05月30日 | Weblog



天から降りる
銀の糸

草花たちに注がれて
うれしい声が
聴こえるよう

天から降りる
銀の糸

田んぼ畑に注がれて
嬉しい顔が
見えるよう

天から降りる
銀の糸

大地のみんなに育まれ
やがては人を
潤すの













2013年05月28日 | Weblog

スカートの裾を握り
ついてきたあなたが
ゆっくり
手を離していく

不安そうな目
恥ずかしそうな目が
穏やかな信頼と好奇心に変わり
嬉しそうに
走っていく

人を
世界を
信じられるようになった
そのことが
眩しくて眩しくて
小さくなるその背中が
霞む

あなたは
みんなよりずっと遅い時期に
恐る恐る
世界へ
橋を架けようとした

それは脆く
変わっていたから
笑われたことも
認めてもらえないことも
あったね

涙を浮かべたまま
あなたは
共に悲しむ母を
ちいさな手で
抱きしめたっけ






そうして今
橋は架かった

あなたの橋は
思いがけない素材で造られ
考えられないような方向へと
伸びている

でも
とても自由で
工夫を凝らしてあり
滅多なことで
壊れたりしない

その橋には
いろんな世界の人たちが
渡って来れそう

そうしてみんな
仲良しになれたら
そんな世界になったら
あなたはどんなに
嬉しいでしょう


母はね
あなたの橋が
とてもとても好き

いつの日も
あなたの造るものが
大好きよ












空気

2013年05月27日 | Weblog



なくなれば
たちまち
いのちが終わる

それほどのものを
無償で与えられている

いくらでも
というわけではないけれど

それを汚し続けている
わたしたちにも









さや豆さん

2013年05月26日 | Weblog



さや豆さんが
やってきた
ヨシばあちゃんの
自転車で

袋に大事に包まれて
さや豆さんが
やってきた

ヨシばあちゃんは
なかなかの
馬力でもって
やってくる

上り坂なんて
なんのその

砂利道だって
なんのその

ところによっては
さや豆さんも
みんなでジャンプを
したかしら


ヨシばあちゃんの
秘密はね
野菜を孫と思うこと

大事大事に思うから
うれしくうれしく育つのね

風の冷たい春先も
夏のような暑い日も
ヨシばあちゃんの丸まった
小さな背中が行き来して
大事に大事にしてくれる
それを毎日見てたのね


わたしにあなたが加わって
あなたの気持ちがやってくる

わたしにあなたが加わって
うれしくうれしく思うから

わたしわたしも
なおのこと
ヨシばあちゃんが大好きよ










2013年05月24日 | Weblog



あの日
あなたが止めてくれたから
わたしは
この道を歩いてこれた

あの日
あなたが
悲しみを共にしてくれたから
わたしは
光を見いだすことができた

あの日
あなたが信じてくれたから
わたしは
先に進むことができた

あなたが悩み
あなたが弱った時
わたしは
あなたの存在が
どんなものであったかを
知った


あなたは
母であった

想い、祈り、
悲しみや喜びを共にし、
察知し、待ち、
ゆるし、信じる、

あなたは
母であったのだ


季節がまたひとつ
行く時
季節をゆるすように散る花を
見た時

わたしは
あなたを想う

やわらかで深い
あなたを想い

会いたいと
涙ぐむことがある









たんぽぽさん

2013年05月23日 | Weblog




たんぽぽさん
わたし昨日ね
あなたのお友達をね
お茶にして
飲んでしまったの

それもね
あなたたちの一番大切な
根っこを

たんぽぽのお茶は
人の体をきれいにしてくれて
助けてくれるの

掘り出して
引っこ抜いちゃって
ごめんなさい

でもね
引っこ抜かれた
そのたんぽぽは
なんとなく
許してくれているような
そんな感じがしたの

もしかしたら
勘違いかもしれないけど

わたし
申し訳なくて


あなたたちはこうして
人を助ける力を持つけど
人は
どうなのかしら

時々おさなごが
あなたを摘み
やわらかな髪に飾り

あとは
踏んだり
抜いたり
枯らしたり

でもあなたたちは
負けてない

丈夫な根っこは
深く深く伸び
何度でも新しい葉を広げ

その力こそが
人を補い助けられる

そして
いつも静かな強い心で
咲いている


たんぽぽさん

なんにもお返しできないけど
わたしね
あなたのようでありたいと
心から思うの

そしてね
あなたに少しでも
近づくことができたらいいなと
思っているの


だからね
そういうことだから

明日もあなたのお茶
飲んでもいいかしら











しあわせの庭

2013年05月22日 | Weblog




あなたは
旦那さまが遺された庭で
風に吹かれていました

大きな木が
やわらかに葉を揺らし
少しでも華やかにと
早起きして植えた花は
その庭に
時をもたらしたようでした


心のままに生きる
旦那さまとの人生は
大変なことも
たくさんあったでしょうね

でも
旦那さまが追いかけていた
尊い夢を
あなたは
そばにいてちゃんと
わかっていたのですよね

やりたいことを全うし
旅立っていかれ
なにひとつ
遺さなかったようでいて
そうではなかった


その庭の木の下で
今日も誰かが休んでいる
風に吹かれている

その庭を心に据えて
生きている人もいる

そんな
みんなの心の庭の中に
あなたの笑顔がある

それこそが
旦那さまの
遺していったもの

それを守っていかなければと
あなたの娘さんは
頑張っているのかもしれない


たくさんの涙は
きれいな花になり
来る人を
優しく迎えるでしょう

今度はその庭で
あなたの夢を
みんなの夢を
叶えていきましょうね

旦那さまは
どんなに
喜んでくださるでしょう












一緒に

2013年05月21日 | Weblog





どうして生きるの
どうして
生きなくてはならないの
こんなになってまで

あなたは泣いた

あなたは知っていた
苦しいのは
生きたいからだと
生きようとしているからだと


そんなにまで苦しまない人生も
もっと楽しい人生も
いくらでもあった中で
あえて
過酷な人生を選んできたと
どこかであなたは
感じているのね

選んだことは憶えていない
選んだなんて信じたくない

それくらい
つらいのにね


ただ
そんな難コースを
選ぶことができたのは
それだけの
精神的な器があったことと
それだけのものに
挑む力があったことだけは
確かだと思うの


遥かな視点から
この世界を眺めると
みんなそれぞれに
何かに挑んでいる

三級の人には二級は難題だし
一級の人には初段は難題

心が砕ける人生は難題だし
体の一部を失う人生も難題だし
人を傷つける痛みを知る人生も
本当に難しい

対象は違っても
みんな何かに挑み
そこから何かを掴もうとしている

みんな
おんなじね


あなたが掴み取ろうとしているものは
たくさん泣いてきた分だけ
尊いものだと思うから

掴み取った時の
あなたの心からの笑顔を
見たいの

そして
その何かは
あなただけでなく
みんなを
幸せにしていくはずだから


一緒にいこう

重い荷を
時には分けあい
重いね、って
笑いながら
まだ先かなあ、って
泣きながら
この花きれいね、って
感動しながら

一緒にいこう

道草もしようね
回り道もしてみよう
おやつもたくさんあるよ

一緒にいこう

その手に
あなたの夢を掴み取る
その日まで













旅の果てに

2013年05月19日 | Weblog

切なかったね

待ち望んできた赤ちゃんは
まだ
来てくれなくて

つらい治療や心の痛みに
ずっとずっと
耐えてきたね

賑やかな家族連れや
大切そうに抱かれている
赤ちゃんを見るたび
あなたがどんなに
傷ついてきたか

そして
そんな自分を
責めたんだよね

“こんなこと思う私は 嫌な人”

そして余計に
悲しくなったね






でも
あなたは言った

“心も体もボロボロになったけど
いろんなことに気づいたの
そのためだったのかなあ”


涙をそっと拭い
あなたは
恥ずかしそうに
笑ったね

その言葉が
あまりにも尊くて
胸が痛くなりました


険しい旅の果てに
あなたが何を見つけるか
まだおぼろげにしか
わからなくても

きっと
物凄く
尊いもので

あなたは
それをもって
まわりを照らしていくようになる


そんなあなたを
地上からも
空からも
見守っているいのちが
あることを
感じていられますように

かけがえのない願いは
飛ばされないよう
傷つかないよう
そのてのひらに
包みこんで