わたしは、言葉を綴ることが好きです。
想いを、詩というかたちに絞りこむことも好きですが、
より自由な、そのまんまの姿をあらわす文章も、好きです。
本はたくさん読んでいる方だと思いますが、その中でも、詩人の書く文章って、素敵だなあ、と思います。
どこか、とても自由なのです。
独特な方向に想いを広げていて。
最近は、そんな本を、読んでいます。
先日、上田市「NABO」で求めた本も、詩人の書いた文章でした。
『プラテーロとわたし』(理論社)
J.R ヒメネス 著
伊藤武好 ・伊藤百合子 訳
長新太 絵
プラテーロというのは、愛するロバのこと。
ヒメネスは、愛するプラテーロに語りかけるように、日々を生きました。
そのひとつひとつを文章にし、まとめたのが、この本です。
感じやすく繊細な詩人には、生きることは大変なものです。
まわりの人にはわからないような、精神的な大きな困難に満ちているから。
だからこそ、描き出すことばが、希少で、輝きを放つのでしょう。
例えば、ヒメネスは、教会の鐘の音が響いてきた時のことを、こんな風に語るのです。
“ ごらん、プラテーロ。
ほら、こんなにバラの花びらが降っているよ。
青いバラ、白いバラ、何色ともいえないバラ・・・
まるで、空がくだけて、バラになってしまったようだ。
(中略)
おまえには、このやさしい花が、どこからくるのかわかっているんだろうね。
私には、わからないんだよ。
(中略)
プラテーロよ、お告げの鐘が鳴り響いている間に、私たちの生活は、日々その力を失っていくように見えるが、
他方では、もっと崇高な、もっと不変な、もっと純粋な、内からわきでる力が、
めぐみの噴水のようにすべてのものを、バラの間できらめきはじめた星のもとへ、とどかせてくれるように思われる。
もっとバラを・・・
おまえには、自分のその目が見えないのだろうがね、プラテーロ。
おだやかに空を仰いでいるおまえの目も、まるで二つの美しいバラの花だよ。”
美しい、ほんとうに美しい文章です。
ヒメネスの、この本に、1956年、ノーベル文学賞が贈られました。
およそ100年前、スペインの詩人、ヒメネスの、この本に。