ちいさなちいさな いのりのことば

 * にしだひろみ *

『誰でしょう』

2015年01月30日 | Weblog

いま

木の葉を揺らしたのは

誰でしょう




あの鳥に

この鳥に

美しい声を与えたのは

誰でしょう





ええ 、きっと

おなじひと



おなじ誰かの

やったこと






こうして毎日

毎秒ごとに

細密な音楽を

二度とない音楽を

奏で続けていけるひと






どんな音も

どんな声も

除けることなく



みな必要と

かんがえて

みな大切と

かんがえて


ひとつのものとして

抱いたから




最も優しく美しい

音楽が生まれたの








心で聴こう

この音を




そしたらわかる


この音は

手紙だと




この音は

熱烈な

愛の言葉だと






“誰か”から

わたしたちへの















『森と少年』

2015年01月28日 | Weblog

心に重い塊を抱え
少年は
森を歩く


少年は
森に問う

自分を生きることの難しさを


森は
激しいほどの慈しみをもって
少年を包む

とても静かに

とても大きく



少年は
再び
森に問う

どう生きたらいいのかと



少しの時間を経てから
森は
少年に贈る

思いつく限りの
豊かな夢を



少年は
顔を上げる

小さな拳を握りしめ
森を後にする


心の塊は
そのままでも

微かに感じた
素敵な夢が
消えないように



少年を見送った
その夜

森は
熱情をもって
天に話してきかせる

少年の痛みを
少年の願いを


天は
月と星ぼしは
すぐに少年を見つけ

一晩中
一晩中
よいものを降らせる



夢の中や
ひらめきを通して

少年の心が
いつか
受け取れるよう

自分にこそ出来ることを
いつか
見つけられるよう



その日が来るまで
森はずっと
祈り続ける



























春のにおい*日々のつれづれ*

2015年01月27日 | Weblog

それは、ひんやりと晴れた朝でした。


大好きな里山を歩いていたら、わたしの心をとらえるもの。



それは、土のにおい。

大地のにおい。

春のにおいです。





まだ、寒い寒い冬だけど、

地面の下で、春はもう、始まっているのだわ。






身体いっぱい、吸い込んだら、

わたしも春になりたくて、

気の早い春になりたくて、

髪を切りに行きました。







冷たい風が吹いても、

襟元をキュッと閉めて、

背筋を伸ばして、

歩いていくわ。




春のにおいが、したのだから。


















印章*日々のつれづれ*

2015年01月26日 | Weblog

篆刻の印章をいただきました。


印材は、石。

篆書で、わたしの名前の頭文字が彫られています。





ずっと欲しいと思っていました。


以前、県外にある篆書家の方のお店を訪ねたことがありました。

小さいけれど雰囲気のある素敵なお店で、人足も絶えません。

篆刻教室も人気の様子。


手彫りの印章は、あたたかい。

そして、世界でひとつ。


今はまだ、その時ではないけど、いつかきっと、わたしの印章を持とう。

そう思いました。







それから半年後。

引き寄せられるように親しくなった方が、篆刻の達人でいらしたのです。

書を習うと同時に篆刻の腕も磨かれ、先生から篆刻を全て任されるまでになったのだそうです。


そして、わたしに、プレゼントしてくださいました。





あんまり嬉しくて、感謝の気持ちをどうお伝えしたらいいのか、言葉になりませんでした。




ひんやりとした石。

丸くて不思議な篆書の文字。

文字が生まれた時の喜びが踊るよう。

こんなに可愛いなんて。




これが、わたしの名前なんだわ。

これは、わたしのしるし、そのものだわ。

両親がくれた、名前。

両親の、願い。

ここにみんな、こもっているわ。






宝物の石。

ほんとうの宝石。

大切にしよう。


胸に抱きしめました。




創作やお手紙に、添えたら。

小さな宝石は、わたしのいのちを、しっかりと、宿してくれるでしょう。
















『対話』

2015年01月24日 | Weblog

子どもと一緒に

冬の森を訪ねてみる




子どもがいると

森は

森全体は

よろこびに輝いている





子どもは駆け回る

子どもは跳ね回る

子どもは見つめる

子どもは触れる

子どもは試みる

子どもは感じる



そのすべてが

森を幸せにする





やがて子どもに

素晴らしいアイディアがもたらされ

嬉しくて嬉しくて

踊り出す



くすぐったくて

楽しくて

木の葉も一緒に踊り出す





子どもと森の

ことばのない

対話

























素晴らしいもの*日々のつれづれ*

2015年01月22日 | Weblog

なんだかとっても素晴らしい気持ち


背筋がしゃんとするような清々しさ


湧き出でる優しい気持ち


溢れ出して止まらない愛


心震えるような感動


涙が出るような尊さ


踊り出したいようなよろこび


・・・こんな気持ちになる時、
人は、目には見えない素晴らしいものに、触れているのだと思います。




それは、何でしょう?








それは、色々な呼び方がありますが、わたしはやはり“素晴らしいもの”と表現するのが一番好きです。




“素晴らしいもの”は、この世界に溢れています。

この世界中に満ち満ちています。






木々に宿っていたり、

空や大地にあったり、

ひとつひとつの蕾にあったり、

すべての人のそばにも。



見えないけれど、呼びかければ、必ず応えてくれる。

こちらの知らない間に、触れてくれていることも。





“素晴らしいもの”は、人の心にある素晴らしさが大好きで、それに会いたくてたまらないようです。

仲間ですものね。



人の素晴らしさを引き出してくれたり、

人の素晴らしさに呼び込まれたり、

一緒に増幅していったり。






もしも、そんな風に働いている“素晴らしいもの”を感じたら、触れているような気がしたら、

心のなかで、声をかけてみる。

わたしが“素晴らしいもの”だったら、とても嬉しいから。





“素晴らしいもの”たちと一緒に、何かをしていきたい。

みんなが、そうなったらいいな。

それが、今のわたしの夢です。



世界を、この地球を、もしかしたら宇宙まで、

今より、ずっと、ずっと、ずっと、
素晴らしくしていけるに、違いないから。











恋文*日々のつれづれ*

2015年01月17日 | Weblog

恋文を、書いてみたくなりました。

恋文のような俳句を書かれる方に、出会ったのです。



それは、季語もない、心象風景画のような俳句。

それは、詩。

一行の、詩。




ふと訪ねた折に、作品のいくつかを見せていただいたのですが、

その鮮烈さに、言葉が出ませんでした。


大きなキャンバスに描かれた絵が、突然現れたようで、

大切な写真を、見てしまったようで。



短い言葉のなかに、全てが凝縮されていて、

想いが、読む人の心に、飛び込んでくる。




これは、恋文だわ。

まぎれもなく。







散文や童謡のような詩を愛するわたしには、とても、このような俳句は書けません。


でも、

でも、

こんな風に鮮烈な、恋文を、

わたしも、書けたら・・・。






若い乙女では、なくなっていても、

いのちの根底に、絶えることなく流れ続けている、熱い熱いものがある。



その熱さを表現するとしたら、

どんな言葉を、わたしは、選ぶでしょうか・・・。





















お手紙を書くときは

2015年01月15日 | Weblog

お手紙を、書くときは。






まずはお部屋を掃除します。

ある程度きれいになっていないと、その状態が、書くことの妨げになるからです。

身の丈の文章しか書けないけれど、できるだけ素敵なお手紙を送りたいから、

それに釣り合うようなお部屋に、するのです。



そんなに大がかりな掃除をするわけではないですが、

気持ちがいい空間だわ、と思える程度に、清めます。


窓を開けて、風を入れて。






さあ、お手紙を書きましょう。


便箋と封筒、切手を用意します。

わたしは、便箋も封筒も白、と決めています。

どんな心境の時でも、どんな状況の時でも、抵抗なく使えるからです。



柄物も、素敵なものを見つけた時に購入しておきます。

時々、使うこともあります。

でも、基本は、白。



白、といっても、青みがかった白でなく、優しいトーンの白、オフホワイトです。

コピー用紙のような、さらさらの紙よりも、和紙が好きです。




ペンは、毛筆、筆ペンを使います。

鉛筆を使う時もあります。




切手は、色々なものを買い揃えておきます。

四季折々の花の切手。

ちょっと変わった記念切手。

季節や、お手紙の内容を考えて、選びます。


封筒が白なので、どんな切手でも合います。

柄物の封筒を使う時は、その色に合うような切手を選びます。






さあ、道具は揃いました。

どこでお手紙を書きましょう。



普段の創作は、椅子に座って机に向かって行うことが多いですが、お手紙の時は、ちょっと違います。

お手紙を書くときは、畳の部屋に正座をして書くのが一番、とわかりました。


椅子もいいのですが、背筋がしゃんとするのは正座。

背筋が伸びると、いい字が書けます。

以前は毛筆が主でしたので、なおさら、きちんと座っていないと文字が乱れます。







和室の机に道具を運び、きちんと座り、

相手の人のことを想います。

伝えたいことが、心の泉に湧きだしたら、

真っ白な便箋に、それをあらわしていきます。





それは、絵を描くことに似ている。

歌をうたうことにも、似ている。

わたしというものを、心をこめて、あらわしていく。


たいてい、想いに筆が間に合わず、大変読みにくい文字になってしまうのですが・・・。






書き上げたら、読み返してみます。

誤字はないかしら、脱字はないかしら、変なところはないかしら。


変なところは、あったりするのですが、わたしらしければ、そのまんま、お送りしちゃいます。






大切に畳み、一度胸に抱いて、それから封筒に入れます。

この時、人に気づかれないように、便箋と一緒に、こっそりと入り込むものがあります。

キラキラと光る、何か。

そうっと封筒に入り込むのです。



それが何かは、届いた人にだけ、わかるでしょう。

ええ、それは、目には見えないものだから、わからない人もいるかもしれません。


でも、それでいいのです。

わからなくてもいいのです。

届いていれば、それでいいのです。





宛名を書き、切手の花を添えたら、完成。

そのまんま、ポストに走ります。

早く早く、届いてほしくて。



ポストにお手紙を託したら、こっそりと、呟きます。

“どうぞよろしくお願いします”








わたしのお手紙、

書いたことも、書かなかったことも、まっすぐに飛んでいって、

どうか、どうか、あの人を、

包んでね。
















お手紙が届いたら

2015年01月13日 | Weblog

お手紙が、届いたら。




まずは、しげしげと見つめます。
(切迫したものを感じた時以外は)

文字と、封筒、それに切手。

シールやスタンプ、マスキングテープ。



その全てが、教えてくれます。

書いてくれた人の、心情や、内容。

書くことのできなかった想いも、少し。



それから、手紙を胸に抱きます。





さあ、ようやく開きます。

できるだけ、ひとりの時に。

書いてくれた人や、感じられる内容に合わせた、準備をして。




正座をして、背筋を伸ばし、呼吸を整えてから、開くお手紙。

飲み物を用意し、静かな音楽を流してから、開くお手紙。

手紙を胸に抱いたまま、しばらく開けないものも、あります。






開封の時。

秘密の小箱が開く時。

便箋の文字より先に、書いてくれた人の想いが、溢れだします。

それを、大事に受け止めてから、便箋を開きます。




まだ、読むには至りません。

便箋そのものにも、感じ入ってしまうからです。


華やかなもの、落ち着いたもの、可愛らしいもの、シンプルなもの。

どれも素敵。

その便箋を選んだ心境に、そっと、思いを馳せる。




そうしてようやく、本文にたどり着きます。

丁寧な文字、心はやったであろう文字、躊躇いがちな文字、よろこびに躍る文字、感激に溢れる文字、悲しみをこらえながらの文字・・・。

ゆっくりゆっくり、辿っていきます。



たいてい、二度繰り返して読みます。

一度目ではわからなかったことや、こぼれ落ちてしまった想いを、すくい取るように。






手紙を畳みます。

ため息をついて。

送ってくれた手間、綴ってくれた想いに、胸がいっぱいになって。






手紙。

それは、人にできる、最高の贈り物。



画面で読書ができるようになっても、手に取れる本を愛する人々が健在なように、

手紙も、なくなることはないでしょう。



書いた人の分身となって、大切な人のところへ飛んでいって、文字以上のことを伝える。

それは、ひとつの、魔法かもしれない。









真っ白な便箋と、使いなれたペンを、用意して。


さあ、手紙を書こう。


大好きな、大好きな、あの人に。














『冬の木立』

2015年01月12日 | Weblog

冬の木立は眠るかな


いいえそうではありません

とても静かでいるけれど

眠るわけではありません



雪を分けて側に行き

それがわかった日のことです









両手に雪の華をのせ

腕が折られてしまうとて

思い煩うこともなく

一途に描いていたのです


次に咲かせる花のこと






どんな風に咲こうかと

心いっぱいに描いて

身体のずっと奥のほうで

準備を進めていたのです




聴こえてくるはピチピチと

なにかがじっくり熟す音



色が生まれかけている

その木がいちばん好きな色



天から地から来るものを

大事に大事に醸してる





冬の木立は燃えている

心を熱く燃やしてる

燃える身体に降る雪は

心地よいのかもわからない






想うは次の春の夢

圧倒的なその願い




ちょっと火傷をしたように

胸のところに手を当てて

森を後にしたわたし




あれから心が熱いまま

するべきことを教えられ

いまも心が熱いまま