おばあちゃん
幼い頃から奉公で
学校へは行けなくて
最後まで
字があんまり
読めなかったね
でも
おばあちゃん
わたしね
おばあちゃんのものがたり
みんなみんな
おぼえてる
囲炉裏端で
お布団で
話してくれた
ものがたりは
見えるようで
聞こえるようで
触れるようだった
それはみんな
おばあちゃんが体験した
ほんとうのことだったから
おばあちゃんには
ものがたりが詰まっていた
おばあちゃんの手紙は
おさなごのような綴りで
半分くらい
読めなかった
でも
おばあちゃん
わたしね
おばあちゃんの手紙
大好きだった
あんなに一生懸命に書かれた手紙
見たことなかった
読めなくても
おばあちゃんの想いは
紙を飛びだして
ちゃんと届いた
わたしの名前ばかりが
何度も書いてある手紙は
他の言葉なんてなくても
みんなみんな
わかったよ
おばあちゃん
わたしには
おばあちゃんが
ものがたりだったのね
おばあちゃんが
手紙だったのね
今になって
わかっても
あなたは
ここに
居ないけど
おばあちゃん
わたしも
おばあちゃんのように
一生懸命に
何かを伝えたいと思う
おばあちゃんのように
生きることが
ものがたることに
なりたいと思う
それが
おばあちゃんへのお返事に
なるかなあ
なれるかなあ
おばあちゃん
おばあちゃん