バーネット作『秘密の花園』
わたしの大好きな物語のひとつです。
初めて読んだのは小学生の時でした。
既に『赤毛のアン』や『若草物語』が愛読書になっていました。
どれもみな、あたたかな、しみいるような感動があります。
『秘密の花園』は、穏やかな他の作品とは少し趣が違い、ラストの感動へ向けて、心が大きく揺さぶられます。
そこにあらわれる奇跡には、何回読んでも涙したものでした。
最近になって、改めて読み返してみました。
そして、大変驚きました。
わがままで無感動な心だった少女メリーは、大自然のなかで、ゆっくりゆっくり、生き生きとした心と体を獲得していきます。
虚弱で心は固く閉ざされ、死を待つように暮らしていた少年コリンは、メリーらに連れていかれた庭で過ごすうち、生命力と自信を取り戻します。
二人を導いたのは、動物植物たちと心を通わせ、友達のように接して生きる、心優しい少年ディッコンでした。
二人はディッコンを師のように慕います。
お庭でのコリンの言葉です。
「太陽が輝いている、太陽が輝いている。これは魔法だ。
花は咲く、根はのびる、これも魔法だ。
生きているのも魔法だ。強くなるのも魔法だ。
魔法はぼくのなかにある、ぼくのなかに。みんなのなかにある。」
バーネットは言います。
“人の考えというものは、電気のように強力なものである。”
“悲しい考えや悪い考えが心のなかに生まれると、体に病原菌が入り込んだと同じように危険なのです。”
“いやな考えだの、がっかりするようなことが心のなかに入り込んできたとき、そのかわりに何か気持ちのいい、勇気のわいてくるようなことを思い出したり考えたりしてみさえすれば、もっと驚くようなことがだれにでもできるのです。”
“ひとつの場所にふたつのものはおさまらないのですから”
このことは、近年ようやく物理的にも証明できるようになってきた、想いの力そのものです。
大自然と信頼できる人たちのサポートにより、想いの力を発動させ、心身の健康と生きる喜びを取り戻した少女たち。
本当に、魔法であり、奇跡です。
しかもその力は、自分のなかにもあるというのですから。
これほどに力強い物語だったとは。
魔法を使いこなすには、ちょっとコツが要るようです。
でも、いつか必ず上手に使えるようになっていくでしょう。
そして、使ううちに、野生の植物たちがわたしたちの先生であることに、気づくかもしれません。
彼らがどんなに上手に生き、しかも幸福であるかということに。
わたしも、あなたも、魔法を持っています。
どんなことがあったとしても、その力はなくならない。
いつでも、使い始めることができるから。
さあ、何を描いていこう・・・