大好きな絵本があります。
大好きな絵本が、たくさんあります。
そのうちの、ひとつ。
シャーロット・ゾロトウ 作
ハワード・ノッツ 絵
松岡享子 訳
『かぜは どこへいくの』
挿し絵は、白と黒の、やさしいスケッチ画。
たいへん静かで、穏やかな絵本です。
とても満ち足りた、素敵な一日を過ごした、小さな男の子は、暮れていく空を眺めながら、昼間が終わるのは残念だな、と思いました。
そこへ、お母さんがやってきました。
男の子は、聞いてみます。
“どうして、ひるは おしまいになって
しまうの?”
こんな時、どう答えてあげたら、いいでしょう。
男の子のお母さんは、とても素敵です。
こんな風に、答えるのです。
“よるが、はじめられるようによ。”
“ほら、みてごらん、
あれが、よるの はじまりよ。
お月さまや、おほしさまがでて、
くらく しずかになって、
おまえが たのしいゆめをみて
ねむれるようにね。”
ああ、こんな風に答えられるお母さんて、素晴らしいですね。
小さな男の子の胸には、安らかな希望が、広がっていったことでしょう。
けれど、知りたいこと、不思議なことでいっぱいの男の子は、さらにお母さんに聞いてみます。
“だけど、ひるがおしまいになったら、
お日さまは、どこへいっちゃうの?”
お母さんは、答えます。
“ひるは おしまいにはならないわ。
べつのところで またはじまるの。
そしてお日さまは、そこをてらすのよ。”
嬉しくなった男の子は、ベッドにもぐりながら、質問を続けます。
質問に対する、お母さんの答えの、素敵なこと。
素敵なこと。
小さな男の子の心配を、穏やかな希望が包み込みます。
最後に、男の子は、言うのです。
“おしまいになっちゃうものは、
なんにも ないんだね。”
空には、新しく生まれた細い月が、かかっています。
最後にまた、お母さんは、素敵な言葉を男の子にかけます。
“あした あさがきたら、お月さまは
どこか とおいところへ いって、
そこでは よるがはじまるし、
お日さまは ここへきて、
あたらしい一日を はじめるのよ。”
男の子は、どんなに嬉しい、輝かしい気持ちで、眠りに入っていったことでしょう。
小さなお子さんのために。
素敵なお父さんお母さんでありたい人のために。
眠れない人のために。
優しい希望で包んでくれる、この本を。