むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

ハマボッス:浜払子(払子とは見えないが) 

2015-05-16 07:44:05 | 植物観察記録

麦崎灯台の周辺に白い花をたくさんつけた草がありました。
ハマボッス(サクラソウ科オカトラノオ属)です。海岸の岩場や崖などによく見られる草ですが、こんなに見事に花をつけたのを見るのは初めてでした。
2年草で、茎は赤みを帯びることが多く、根元でよく分枝して、高さ10~40cmになります。
5~6月茎の先に白い花を多数つけます。花は直径1cmほどで、葉のように見える苞の脇に1個ずつつきます。
果実は直径5mmほどの赤い朔果で、先端に花柱の跡が残り、基部の苞は指輪の立て爪のように見えます。果皮は硬く、熟すと尖った先端の小さな穴から稜のある楕円形の種子を放出しますが、そのあとも枝にそのまま残ります。
和名は浜払子で、全体の様子を仏具の払子に見立てたというのですが、これだけ密生していると払子と見るにはかなりの想像力が必要なようです。

ミヤコグサ:都草(都の花が岬の突端に) 

2015-05-15 05:56:07 | 植物観察記録

麦崎灯台の足元にミヤコグサ:都草(マメ科ミヤコグサ属)が黄色いじゅうたんを作っていました。
海岸、川原、草地など日当たりのよい場所に生える多年草で、茎は地面を這って広がります。
葉は5個の小葉を持つ複葉で、卵状楕円形の小葉は、軸の先に3個、基部に2個つきます。
4~6月、葉のつけ根に長さ1~1.5cmの鮮黄色の蝶形花を1~3個つけます。
ミヤコグサの名は、昔、京都の大仏の前、耳塚付近に多かったことに由来し、京に上った人々から土産話とともに地方にこの名が広がっていったといわれています。花の形からエボシグサ(烏帽子草)という別名もあり、これも京から帰った人の土産話になったことでしよう。ほかにコガネバナや、淀君が愛したので淀君草の名もあり、小さな花ですが人々に愛されたことが窺えます。
豆果は長さ2~3cmの線形で熟すと黒くなり、果皮が2つにねじり割れて種子を飛ばします。
最近、ミヤコグサの母種といわれるセイヨウミヤコグサが日本に帰化してひろがっているようです。
ミヤコグサとよく似ていますが、花柄の先に花が3~7個ずつつき、茎や萼などに白い毛が多いことで区別されます。

コバノタツナミ:小葉の立浪(海辺に咲く) 

2015-05-14 07:06:22 | 植物観察記録

志摩半島の麦崎灯台の周辺に海浜植物が結構たくさん見られました。
その一つがコバノタツナミ:小葉の立浪(シソ科タツナミソウ属)と思われるもので、きれいな紺色の花びらに白い斑点が鮮やかです。
別名にビロードタツナミがあるように葉に短毛が生え、ふわふわした感じがあります。
タツナミソウの変種で全体に小さく、海岸に近い土手や岩上などに多く生えます。
高さは5~20㎝、葉は小さくて長さ、幅とも約1㎝、毛の量は変化が多いとあります。

ハマウド:浜独活(アシタバに似るが) 

2015-05-13 06:01:44 | 植物観察記録

出身地の志摩半島阿児近くにログハウスを建て、週何日か高槻から通って、農と漁を楽しむという友人に案内してもらい岬や展望台をめぐりました。
南国の浜辺にはいくつかの気になる植物に出会いました。
一番目についたのが茎頭に大きな蕾をつけたハマウド:浜独活(セリ科シシウド属)です。
暖かい海岸に生える多年草で、高さ1~1.4mにもなるのでオニウドとも呼ばれます。茎は太く縦の筋が目立ちます。葉は1~2回羽状複葉で、葉柄の基部は袋状に膨らみ、小葉は卵状楕円形で、厚くて光沢があり、縁は切れ込みます。
4~6月、枝先の複数の散形花序に白くて小さい花を多数つけます。
若芽を食用にするアシタバに似てなくはありませんが、アシタバよりはるかに大型でいかつい感じであり、花期もアシタバの秋に対し、ハマウドは初夏、アシタバのように茎を切っても黄色い汁が出ないなど大きく違っています。

ハルリンドウ:春竜胆(青紫の宝石)           

2015-05-12 09:34:16 | 植物観察記録

滋賀県希望が丘文化公園のハイキングロードを歩いていると、ところどころ足元に小さい青紫色の花が点在していました。
ハルリンドウ:春竜胆(リンドウ科リンドウ属)です。
日当たりのよいやや湿ったところに生える小型の2年草で、高さは10㎝ほどになり、集まって生えることが多くなります。
根生葉は長さ2㎝ほどの卵形でロゼット状につき、茎の葉は長さ5~10mmと目立ちません。
4~5月茎の先に青紫色の花をつけ、花の長さは2~3㎝の漏斗形で、上部は5つに切れ込み、花弁の間には半円形の副片があります。
おなじ時期に咲くよく似たフデリンドウはハルリンドウに比べて根生葉が小さくてロゼット状にならず、逆に茎につく葉は長さ1㎝ほどの広卵形でやや厚くてしっかりしています。(写真下)

フデリンドウ

オクモミジハグマ:奥紅葉白熊(奥山にモミジの葉形)  

2015-05-11 05:51:53 | 植物観察記録
4月末の高尾山は草の花も木の花も葉境期なのか少しさみしい感じでした。やむなく面白そうな葉の形のものを探して歩いているうちに、カエデのような葉をつけた草に出会いました。
掌状に切れ込んだ葉をモミジにたとえてこの名があるオクモミジハグマ:奥紅葉白熊(キク科モミジハグマ属)です。
山地に木陰に生える多年草で、高さは30~80㎝になり、茎の中部に4~7個の長い柄がある葉がやや輪生状に集まってつきます。葉は長さも幅も10㎝ほどで、両面にまばらに軟毛があります。
西日本にある母種のモミジハグマはこれより葉が少し薄く切れ込みが深くなります。
8~9月、茎の上部に白い頭花を横向きにつけます。

キジョラン:鬼女蘭(高尾山に巣食う?鬼女) 

2015-05-10 11:00:27 | 植物観察記録



高尾山の樹林下あちこちにキジョラン:鬼女蘭(ガガイモ科キジョラン属)の丸くて厚い葉をつけたつるを見かけました。
近くの奥多摩にはほとんど見られないというのに、高尾山でははたくさん見かけます。
常緑樹林内の木陰に生える常緑のつる性多年草で、つるはかたくて丈夫、葉は対生し、長さも幅も6~12cmの卵円形で、先端は短く突き出ます。
この恐ろしげな名前は、楕円形の袋果が熟すと縦に割れて、中から白色の冠毛がついた種子が出るのを、髪を振り乱した鬼女に見立てたものです。
8~9月、葉腋に淡黄色の小さな鐘形の花を散形状につけます。(’09.年8月10日記事)アサギマダラの食草でもあります。
高尾山と鬼女の群れ、何やら意味ありげな取り合わせです。


イヌブナ:犬橅(ひこばえが目立つ)  

2015-05-08 05:24:29 | 植物観察記録

高尾山自然研究4号路が頂上近くになるころ、路の両側にイヌブナ:犬橅(ブナ科ブナ属)の成木が目立ち始めます。
一帯は高尾山北斜面の森を代表する自然林で、イヌブナを中心とするので、イヌブナ林とも呼ばれています。
ブナより少し標高の低いところに生え、太平洋側のやや乾燥したところに多く、中部地方以北の多雪地帯にはほとんど分布しません。
高さ25m、太さ直径70㎝にもなる落葉高木で、萌芽力が旺盛なところから、主幹が枯れてもひこばえが成長することによって個体としての生命を維持するといわれています。
道理で高尾山のイヌブナも、多くは根元からひこばえを伸ばしていて、手の届くところで若く大きい葉を広げていました。

ハリギリ:針桐(針がない大木の樹皮)

2015-05-07 10:05:28 | 植物観察記録

高尾山の頂上付近に縦割りの樹皮を持ったまっすぐな大木がありました。珍しく名札がついてセンノキ(ハリギリ)とありました
一般にはカッコ内の名のハリギリ:針桐(ウコギ科ハリギリ属)でとおっていますが、ここでは逆になっています。調べてみると、この材を木工などに使うときはセンノキと呼ばれているそうですが、その語源は定かではないといいます。
高さ25mにもなる落葉高木で、若木の樹皮は灰白色、枝や幹に鋭いトゲがあります。ハリギリのトゲは表皮が変化したものといわれます。(’10年1月30日記事)トゲは古くなると目立たなくなります。
互生する葉は枝先に集まり、長さ幅とも10~30㎝と大きく、浅くまたは中ほどまで掌状に5~9裂します。小枝には鋭いとげが多く名前の由来となっています。幹の肌は黒っぽい褐色で、粗く縦に裂ける割れ目があり、コルク質の感じで厚くなります。キリの名があるだけに材は柾が通って美しく、かつては下駄材に、またアイヌの人はこれで丸木舟をつくったり、大きな木鉢や臼をつくったりするそうです。

ジュウニヒトエ:十二単(平安美女の揃い立ち?) 

2015-05-05 08:04:02 | 植物観察記録

高尾山3号自然研究路のあちこちにジュウニヒトエ:十二単(シソ科キランソウ属)が咲いていました。
花がいく重に重なって咲く姿が、平安朝時代、宮中の女官が着た衣装に似ているというのでこの名があります。やや明るい林の中や道端に生える高さ10~25㎝の多年草で、全体に長くて白い毛があります。4~5月長さ4~6㎝ほどの花穂をだし、淡い紫色または白色の唇形花をつけます。
ジュウニヒトエは日本特産で、学名もAjuga nipponensis MAKINOとなっています。名前は優雅ですが、地味な花と毛深い葉や茎で、観賞価値は低く、名前だけが先走っている感じです。
本種に似た花で紫色の園芸種がジュウニヒトエまたはアジュガの名で流通していますが、よく栽培されるのはヨーロッパ原産のアジュガ・レプタンスで、 正しくは和名でセイヨウキランソウです。