むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

白山高山植物園を訪ねる  

2016-06-29 10:43:36 | 植物観察記録

白山主峰御前峰を背景に




白山連峰別山を背景に


梅雨らしい梅雨となった今年、貴重な晴れ間に急に思い立って白山市白峰にある「白山高山植物園」へ行ってきました。
1998年(平成10)、ここは白山に自生する高山植物の全種類(545種類)の栽培・育成を試み、あわせて絶滅危惧種を含む種の保全、植生復元、緑化等への活用のためのノウハウを探ろうという目的で、(現)NPO白山高山植物研究会がこの地で開始した「白山高山植物馴化試験」に始まりました。
作業は白山から移植することなく、すべて種から栽培することで行われ、石川県のRDB全222種の葯80%にあたる184種類の植物を育成し、種の保全のためのノウハウを蓄積したといいます。
2010年から「白山高山植物園」と名を改め、6月中旬から7月上旬まで期間限定で一般公開するようになり、白山を正面に望む立地の良さと、交通の便利さもあって、白山へは登れない中高年や子供たち中心に喜ばれています。
この植物園では、種子から育てるという制約がや、時期的な関係もあって、希少的な高山植物は必ずしも多いとはいえない気がしましたが、標高800mという高地に、平地でも見られる植物たちも異なる季節感で咲いていて、晴れ上がった白山を背景に咲く花々を大いに楽しんだことでした。

今咲いていた高山植物の主なものを、コメントなしでご紹介します。

アカモノ:赤物(ツツジ科)


アサギリソウ:朝霧草(キク科)


イブキジャコウソウ:伊吹麝香草(シソ科)


イワギク:岩菊(キク科)


イワキンバイ:岩金梅(バラ科)


オオバギボウシ:大葉擬宝珠(ユリ科)


オカトラノオ:丘虎の尾(ヤブコウジ科)


オニシモツケ:鬼下野(バラ科)


カラフトダイコンソウ:樺太大根草(バラ科)


キリンソウ:麒麟草(ベンケイソウ科)


クガイソウ:九蓋草(オオバコ科)


クサボタン:草牡丹(キンポウゲ科)


シナノナデシコ:信濃撫子(ナデシコ科)


シモツケソウ:下野草(バラ科)


センジュガンピ:千手岩菲(ナデシコ科


タカネナデシコ:高嶺撫子(ナデシコ科)


タカネマツムシソウ:高嶺松虫草(マツムシソウ科)


タテヤマウツボグサ;立山靭草(シソ科)


ニッコウキスゲ(ゼンテイカ):日光黄菅(ユリ科)


ハクサンタイゲキ:白山大戟(トウダイグサ科)


ハクサンフウロ:白山風露(フウロソウ科)


ハナチダケサシ:花乳茸刺(ユキノシタ科)


ホンドミヤマネズ:本土深山杜松(ヒノキ科)


ミヤマオダマキ:深山苧環(キンポウゲ科)


ミヤマキンバイ:深山金梅(バラ科)


ミヤマクワガタ:深山鍬形(オオバコ科)


ミヤマダイモンジソウ:深山大文字草(ユキノシタ科)


ヤマハハコ:山母子(キク科)


ヤマブキショウマ:山吹升麻(バラ科)


ヤマホタルブクロ:山蛍袋」(キキョウ科)


ヨツバヒヨドリ:四葉鵯(キク科)


ヤマツツジ:山躑躅(ツツジ科)

ホソバコオニユリ:細葉小鬼百合(ユリ科)

トウカイコモウセンゴケ:東海小毛氈苔(東海だけではなかった)

2016-06-24 12:39:27 | 植物観察記録

加西市の網引湿原でトウカイコモウセンゴケ:東海小毛氈苔(モウセンンゴケ科モウセンゴケ属)が紅桃色の花をつけていました。
2010年の秋、シラタマホシクサの群落を見に豊橋市の葦毛(いもう)湿原を訪れたとき、愛知県や岐阜県の低地に東海丘陵要素植物と呼ばれる植物群があって、ミカワバイケイソウ、ミカワシオガマなどこの地方の名を冠したこの地方固有の植物群のなかに、このトウカイコモウセンゴケも含まれていることを知りました。
東海丘陵要素植物とは、本来、氷河期に分布を南に移動してきたものが、温暖化に従い、再び北方に再移動するか、中部山岳地帯の高山に逃れたりしたなかで、東海地方の山裾にある小さな湧き水とその周辺の湿地帯に生き残った植物群とされています。
当時の情報では、“トウカイコモウセンゴケは日本固有種で、モウセンゴケとコモウセンゴケの雑種を起源として誕生したと考えられている。ただし東海地方と関西地方では形態的差異があるため、同種の変異なのか、異なる起源なのか、検討の必要性が指摘されている”などとあって東海地方だけのものと思っていましたが、一昨年滋賀県の希望ヶ丘文化園で、そして今回兵庫県の網引湿原でいずれもトウカイコモウセンゴケという名で出現していることをしり、今では東海地方に限った植物ではなくなっているようでした。
実際にネット情報で、兵庫県あたりでは、“モウセンゴケとコモウセンゴケの雑種を起源とし、かつてはコモウセンゴケ関西型とされていたが、比較的最近になってトウカイコモウセンゴケが種として独立した”などとあって、本種に関しては東海地方の専売ではなくなっています。
トウカイコモウセンゴケはモウセンゴケとコモウセンゴケとの中間的形質を持つもので、コモウセンゴケの葉が基部からしだいに細くなって柄に続くへら形であるのに対し、トウカイコモウセンゴケの葉柄は細くてさじ形になっている点が異なります。
食虫植物で、葉の表面には腺毛が密生していて、粘液を分泌し、これで虫を捕らえます。
初夏から初秋にかけて高さ10~15cmの花茎を直立し、径8mm前後の淡紅色の花を総状につけます。
食虫植物ならではの不気味な葉に似合わない可憐な花です。

ミズユキノシタ:水雪の下(ユキノシタとは無縁) 

2016-06-23 08:30:00 | 植物観察記録

湖北平池の池畔にミズユキノシタ:水雪の下(アカバナ科ミズユキノシタ属)が生えていました。
日本では本州、四国、九州に分布し、池や沼の岸など湿ったところに生える多年草で、全体は柔らかく、茎は下部が泥の上をはい、ひげ根をだし、上部は直立または斜上します。高さ30㎝くらい、葉は長さ1~3㎝、幅1~2㎝の広楕円形です。花は夏から秋、花弁はなく宿存性の萼片が飾ります。
アクアリウムの観賞用として使われた外来種のセイヨウミズユキノシタやアメリカミズユキノシタが逸失して各地で野生化しているのが問題となっています。
平池でのものは、今津自然観察会の報告で、日本在来のミズユキノシタとなっており、ここまでは外来種が進出していないことを知り少し安心です。
それにしても、ユキノシタとは姿も花も植物学上の分類も全く異なるのに、湿地に生えるユキノシタの名がついているのは不思議です。

ミズタガラシ:水田芥子(タガラシとは違う仲間)

2016-06-22 09:58:25 | 植物観察記録

湖北平池の畔にミズタガラシ:水田芥子(アブラナ科タネツケバナ属)が白い四弁花を総状花序につけていました。
本州では関東以西、四国、九州に分布、水田や湿地に生える多年草で、全体に無毛、高さ30~60㎝、稜があり、はじめ直立、花後に倒伏します。
葉は奇数羽状複葉で、小葉は2~6対、頂小葉は円形~楕円形長さは1~3㎝、小さい側小葉がつきます。
花時にすでに基部から長い匍匐枝をだします。
和名の水田辛子は水中に生えるタガラシということでしょうが、田に生えて田を枯らすから、あるいは田に生えて辛いから名がついたというキンポウゲ科のタガラシがあり、水と田の違いがあるにしても全く違う仲間なのに同じような名前になっているのには少し違和感があります。
平池では柵の外側に咲いていて、写真をうまく撮ることができませんでした

ムシトリナデシコ:虫取り撫子(粘液は何の役目) 

2016-06-19 13:46:51 | 植物観察記録

あちこちに ムシトリナデシコ:虫取り撫子(ナデシコ科マンテマ属)の紅紫色の花が咲いています。
南ヨーロッパ原産の越年草で、各国で観賞用に栽培されているもので、 日本でも江戸時代末期に鑑賞用として移入されたものが各地で野生化しており、道端や空き地でも群生しているのをよく見かけます。
茎の高さは30-60cm、葉は卵形あるいは広披針形で対生し、基部は茎を抱きます。
葉の根元から茎が分岐し、枝の先に紅紫色で直径約1㎝の5弁の花を多数つけます。上部の茎の節の下に粘液を分泌する部分が帯状にあり、ここに虫が付着して捕らえられることでこの名がありますが、食虫植物ではなく、受粉の役に立たないアリなどが花まで登ってくるのを妨げているのではないかと考えられています。
ハエトリナデシコ、コマチソウ、ムシトリバナの別名があり、白花もあります。
写真のムシトリナデシコ、くっついているのは虫ではなくタンポポかなにかの瘦果でした。どうやら双方にとって想定外の出来事だったようです。

プルメリア(甘い南国のイメージ)

2016-06-16 10:22:39 | 植物観察記録

尼崎市の上坂部西公園の温室にプルメリア(キョウチクトウ科プルメリア属)の花が咲いていました。
プルメリアと聞いて、「松田聖子の“天国のキッ”だな」といったら周囲の観察仲間が怪訝な顔をしました。
帰って念のためにネットで調べてみると、「プルメリアの伝説 天国のキッス」は、1983年7月2日に公開された日本映画。ハワイの日系二世の­女子大生と、ウインドサーフィンに青春を賭ける青年との出逢いと別離を描くラブ・ロマ­ンスで、主題歌の「天国のキッス」は、細野晴臣作曲による初のシングル。とあり、松田聖子の歌声がながれてきました。OVER EIGHTYにして、30年前の松田聖子がすぐ浮かぶという自分の気持ちの若さがうれしくなりました。
プルメリアは、メキシコ、キューバ、グアテマラなど中南米原産で、名前のプルメリアは、フランスの植物学者でアメリカ大陸の植物を採取・研究したシャルル・プリュミエ(1646~1704)の名前にちなんでつけられたものといい、花びらは5cmほどで分厚く、花色がピンク、黄、白、赤など様々で、多くの園芸種がつくられています。
ハワイやタヒチで頭・首・肩につける装飾品「レイ」としてよく利用されており、ジャスミン系の芳香もあって、南国をイメージさせる花として、とくに女性中心に人気があるようです。

クレマチス(からむのは葉柄)

2016-06-13 10:05:06 | 植物観察記録



庭に鉢植えのクレマチス(キンポウゲ科センニンソウ属またはクレマチス属)が咲いています。よく見ると支柱などに絡んでいるのはつるやひげではなく葉柄の部分で絡んでいるのがわかります。
つる植物の絡みは、茎自体、巻ひげ、棘、吸盤、気根、引っかけ、寄りかかりなど多様ですが、葉柄で絡むのは珍しい例です。
ところで、クレマチス(Clematis)はキンポウゲ科センニンソウ属の学名ですが、園芸界ではカザグルマやテッセン、その他の原種を交雑して育成された園芸品種の総称として使われています。このクレマチスのことをテッセン(鉄線)と呼ぶ人がいますが、本物のテッセンは中国原産で江戸時代に渡来したもので直径6㎝ほどのクリーム色の花弁状の萼片が6個あるものであり、カザグルマ(風車)は日本原産、直径10㎝と大きく淡紫色または白色の花弁状の8個の萼片がつきます。カザグルマは自生が少なくなり各地で絶滅危惧種となっています。
いわゆるクレマチスで流通しているものは2千種以上もあり、花が大型の品種はほとんどが8個の萼片をもち、この点ではカザグルマの形質を強く受け継いでいるといえます。

フェイジョア(面白い花も食べられる) 

2016-06-09 11:23:49 | 植物観察記録

公園でフェイジョア(フトモモ科フェイジョア属)が花をつけていました。 南米地方原産で、熱帯性の果樹として入ってきましたが、果物としてだけではなく、赤い変わった花をつけるので、公園樹や庭木などにも使われています。刈り込みに強いので生垣にされる例もあります。
初夏に咲く花は、径4㎝ほどで、花弁は内側が淡紫色、外側が白色で分厚く、多数ある赤い雄蕊が非常に目立ちます。
この花弁を口に含み葉先でかじるとほのかに甘い味がするので、いわゆるエディブルフラワーとしての用途もあります。少し厚っぽい花弁の内側の淡紫色の部分は2重構造のなっているのか、薄い膜となって剥がれます。(下図)

原産地付近ではハチドリのような小鳥がこの花弁を食べるときに花粉を運ぶそうですが、日本ではほとんどがハチによる送粉がされているようです。
パイナップルとバナナの中間のような芳香があるという果実は、生食やジャムなどの加工品、果実酒などにされます。果実については‘12年12月16日に取り上げています。

ヒメヘビイチゴ:姫蛇苺(蛇に姫とは)

2016-06-05 09:27:41 | 植物観察記録

洛北の山道にヒメヘビイチゴ:姫蛇苺(バラ科キジムシロ属)が咲いていました。
兵庫県あたりでは、レッドデータブックAランクに分類されているというヒメヘビイチゴですが、ここでは道端にずっと咲き続くというふうに生えていました。
山地の草原や水田の畦などに生える多年草で茎は地を這います。葉は3小葉からなり、小葉の長さは1-3㎝で薄く鋸歯があり裏面は粉白色になります。
夏咲く花は黄色の5弁で直径約7㎜と小さく、葉脇に1個、葉と対になってつきます。
和名姫蛇苺はヘビイチゴより小形の意ですが、ヘビイチゴはヘビイチゴ属であるのに対し本種はキジムシロ属で違う仲間であり、ヘビイチゴのように花床が膨らまずいわゆるイチゴ型の果実を作りません。また蛇にも姫があるのかという気もしてすこし無理のある名づけといえます。
ごく小さい花を撮って帰り見てみると、5弁のはずが4弁しかありませんでした。念のために終わりかけの花も載せます。

ジエビネ:地海老根(どっこい残った自生) 

2016-06-03 19:11:04 | 植物観察記録



一昔前、高槻市北部の林間にエビネ(海老根)を中心とした市立の野草蘭園があり、初夏のころに園内一面にいろいろなエビネが咲きそろって見事でした。ある年そのエビネ園がシカの食害で一夜にして荒らされてしまいあえなく閉園となってしまいました。
そのエビネ(ラン科エビネ属)が、いまも洛北雲ケ畑の山のあちこちで、野生動物の食害や人の盗掘に耐え残って咲いていました。
横に連なる偽球茎が海老に似ていることからこの名があり、わが国の各地に分布自生しますが、花色など変種の数も多くいろいろな名がついているものがあります。
それらの固有種と区別するために、日本に自生するものを総称してジエビネ、またはヤブエビネなどと呼びわけているようです。雲ケ畑のエビネはごく標準的なものとみているのか、地元ではジエビネと呼んでいました。
春、新芽の展葉とともに高さ30~40㎝の花茎を伸長させ、花序の半ばより上に多数の花をつけます。花はほぼ横向きに平開し、がく片は狭卵形、側花弁は倒卵状披針形、共に先はとがります。唇弁は三つに裂け、左右の裂片が広く、中央の裂片には縦に3本の隆起線があり、先は板状に立ち上がります。唇弁の基部は深くくぼんで後ろに突出し、長さ0.8~1.0㎝の距となります。
健気に残った雲ケ畑のジエビネですが、それらの中でも微妙に花色の変化があるように見えました。
自生に加えて、愛好家、園芸家の手によって実に多様な改良種が作られており、花時になると各地でエビネ展が開かれるなど、比較的栽培容易なこともあって、広く人気のある蘭となっています。