むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

コウモリカズラ:蝙蝠蔓(葉柄が楯状につく) 

2017-05-29 17:06:31 | 植物観察記録



楯状葉柄と雄花序
池田市東山の造園業者の集落を歩いていて、水路の土手を覆うようにしているつる植物を見かけました。
葉の形をコウモリに見立ててこの名があるというコウモリカズラ:蝙蝠蔓(ツズラフジ科コウモリカズラ属)です。
日本各地、中国、朝鮮、東シベリアに分布する落葉性のつる性木本で、他物に巻き付き長く伸び、無毛で平滑、葉は互生し、長さ幅とも7~13㎝の腎円形、切れ込みのないものから5~9裂するものまで変化が多くあります。基部はハート形、裏面はやや白色を帯び、長い葉柄は葉身に楯状につくのが特徴です。
雌雄異株で、5~6月葉より短い円錐花序をだし、淡黄色の花を多数つけます。
果実は核果で直径6~9mm、黒く熟します。


クロバイ:黒灰(クロバイはハイノキ?)

2017-05-13 18:01:53 | 植物観察記録
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窓から見える田圃を隔てた小さい里山に、白い花いっぱいつけた木があるのに気付いたのが、10年ほど前のことでした。
少し遠いので、はじめはカナメモチかなにかと気にもかけなかったのですが、友人があれはクロバイ:黒灰(ハイノキ科ハイノキ属)だと教えてくれてからは、毎年気になるようになりました。
それから10年、改めて山を見ると、ずいぶん大きくなったり新たに増えたりして、今年は小さい山のあちこちに大小10本を超すクロバイの花が認められました。
日本に自生する常緑性のハイノキ属は10種、そのなかでクロバイはもっとも広く分布しているといいます。クロバイは4~7cmの総状の花序につき、芳香があります。蜜が多いのか、たくさんの蜂が群れ飛んでいるのが遠くからでも見えました。
ふるい牧野図鑑では、ハイノキ(Symplocos prunifolia )、別名クロバイ、トチシバ、ソメシバとなっており、ハイノキの名は、この枝葉を焼いて灰汁を取り媒染料に用いることによるとし、別名クロバイは樹皮が黒みをおびることからいうとし、ソメシバは葉が乾けば黄色になり、菓子などを染めるのに用いられたとあります。
多くの図鑑では、ハイノキ(Symplocos myrtacea)が、クロバイと別種として載っています。こちらは九州ではイノコシバ(猪の子柴)と呼ばれ、狩りで獲た猪を縛るのに、この木の丈夫な枝を用いたためというはなしもあります。
クロバイとハイノキは同一種とするのがよいのか、別種とすべきなのか、ややこしいですが、目の前の山に咲いているのは間違いなくハイノキとも呼ばれるクロバイ(Symplocos prunifolia )で、クロバイではない方のハイノキ(Symplocos myrtacea)ではないようです。

ハナズオウ:花蘇芳(マメ科で珍しい丸葉) 

2017-05-10 09:45:46 | 植物観察記録
<center>ある色の染料をとる木が先にあって、花の色がその色に似ているからと木の名が後からついたのがこのハナズオウ(マメ科ハナズオウ属)です。
スオウ:蘇芳は本来マメ科ジャケツイバラ属の小低木、インド、マレー原産の染料植物で、材および莢を煎じたものは古くから重要な染料とされてきました。この染料で染めた黒味を帯びた紅色も蘇芳と呼ばれます。
ハナズオウは、スオウからとる黒紅色染料の色の花をつけるのでハナズオウ:花蘇芳というわけです。
ハナズオウの方は、中国北部原産の落葉樹で日本には江戸初期に渡来しました。現地では15mにもなるということですが、日本では2~5mの低木として公園や庭に広く栽培されます。
殆どが複葉のマメ科では珍しく単葉で、心形・全縁の丸葉、花は4月、葉より早く開きます。1つの花芽に数個紅紫色の蝶形花を束生し、2週間ほど咲き続けます。
我が家には普通の赤花と白い花のハナズオウが植わっています。意味上は白色の黒紫花という妙なことになりますが、白い花もある紫蘭の類でしょうか。
豆果は長さ5~8cmの広線形で黒褐色、冬も枝に残ります。

白花のハナズオウ

ハクサンハタザオ:白山旗竿(カドミウムを吸収する)

2017-05-05 14:25:46 | 植物観察記録



新緑の箕面を歩きました。
道端のあちこちに小さく白い花をつけた草が群れ咲いていますが、道行く人々はほとんど目を止めようとはしていません。
ハクサンハタザオ:白山旗竿(アブラナ科シロイヌナズナ属)です。
低山から高山まで広い範囲で分布する多年草で、高さ10~30cm、根元の葉はへら形で羽状に浅く切れ込みます。
3~7月花弁の長さ5~6mmの白い十字花をつけます。
和名は石川県白山に産するからといいますが、分布は広く本州、北海道から朝鮮におよびます。
近年この草が有害なカドミウムを集積除去する能力があることが分かったことから、にわかに注目されるようになりました。
食の安全という観点からカドミウムを含有する農用地土壌を浄化する技術として、ハクサンハタザオオを利用しようとする研究が進んでいます。
実際にハクサンハタザオが土壌からカドミウムを吸収し、土壌中のカドミウム濃度を低減させ得ることが実証されたとの報告があり、この可憐な花が有害物質の除去に役立つと思うと、何やら親しみがわいてきます。

アズキナシ:小豆梨(皮目が秤の目盛) 

2017-05-04 09:24:35 | 植物観察記録
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早春の湖北平池に若芽が出始めた高木がありました。
近づいてみると、紫色を帯びた小枝に秤の目のような皮目が見えます。その芽はそれとわかる短枝から出ています。
それやこれやでこの木はアズキナシ:小豆梨(バラ科 アズキナシ属)と判断しました。
日本各地に分布する落葉高木で、高さは10mになります。
葉の縁に浅い重鋸歯があり、葉脈は裏が隆起し表がへこみます。
花期は5~6月、直径1~1.5㎝、花弁は5個、果実は長さ1㎝ほどの楕円形で赤く熟し、表面に点々があります。
和名のアズキは小さいもののたとえで、果実はナシより小さいことを意味します。別名のハカリノメは枝に点在する白い皮目を秤の目盛に見立てたものです。

ムシカリ(別名オオカメノキ:大亀の木) (名前の由来は葉から?)

2017-05-03 10:42:58 | 植物観察記録
4月下旬の湖北平池、残雪が残る林のなかでタムシバ(4月30日記事)とともに目立っていたのがやはり白い花のムシカリ(レンプクソウ科ガマズミ属)です。
山地に生える落葉低木で高さは2~5m、対生する葉は長さ7~15㎝の卵円形~広卵形で、にぶい鋸歯があり、表面は脈がへこみ、皺が目立ちます。
葉がよく虫に食われるところから虫噛まれが転訛してムシカリの名がついたとも、葉が亀の甲に似ているから別名のオオカメノキとなったなどといわれています。
4~6月、花穂の中心に小さい両性花が多数集まり、その周りを白い装飾花がとり巻きます。装飾花は直径約3㎝で平開します。
近縁のヤブデマリは、5弁の装飾花のうち1個だけ極端に小さいことで区別されます。


エンレイソウ:延齢草(命を延ぶ毒草)

2017-05-02 09:16:31 | 植物観察記録

湖北平池の池畔に咲いていたのがエンレイソウ:延齢草(ユリ科エンレイソウ属)です。
深山や山奥の湿度の高い林地に生える多年草で、高さは20~40㎝、葉は3個輪生し、菱形状卵形、網状の脈があり先は急に尖ります。4~5月茎の先に直径3~4㎝の花を1個つけ、3個ある花弁は緑色から紫褐色まで変化が多くあります。フタバアオイの葉に似て、立っているところからタチアオイ(立葵)の名もあります。
延齢草というめでたい名前の由来は、中国では薬草として用いられていて、漢名を延齢草根といい、主に胃腸薬として用いられていたことから、そのままエンレイソウの名がついたといわれます。
日本の古文書にも古くから、延齢草、延命草、養老草、三葉人参などとして、薬効の記述があり、古くから薬として用いられていたことがわかります。
一般には有毒植物とされていて食べてはいけない植物とされている一方、果実は甘みがあり食べられるとあったりして、毒にも薬にも食べ物にもの使い分けの難しいところです。