むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

ハマナタマメ:浜鉈豆(なるほどなたまめ) 

2015-09-27 14:27:15 | 植物観察記録
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紀州由良町白崎海岸の浜辺にハマナタマメ:浜鉈豆(マメ科ナタマメ属)が、太い鞘の果実をつけていました。
いつぞや淡路の成ケ島で、3小葉で、少し大振りな紫色の蝶形弁の花をつけたハマナタマメを見かけたことがありました。('10年7月24日記事)
福神漬に使われる鉈豆に似た大きい豆果をつけるのでこの名があるハマナタマメですが、豆果を見るのは初めてです。昔田舎に「なるほどなたまめ とるほどとまめ(空豆)」という言葉遊びがありましたが、姿を見れば”なるほどなたまめ”そのものでした。
関東以西の砂浜にはえる多年草で、茎は砂地や岩の上を横にはい、多くの葉を出して繁茂します。つるは強くて折れにくく、互生する葉は長柄をもつ3出複葉で、厚くて少し光沢があります。
6~9月、長さ2~3cmの淡紅紫色の蝶形花を咲かせますが、面白いのは、ほかのマメ科の花と逆向きで、おおくは旗弁が下向きになることです。葉腋から出た花序の枝が下向きに湾曲して伸びるためとされています。
名の通り豆果は大きく長さ5-10cm、幅3-3.5cmで、2-5個の種子が入ります。種子は褐色、楕円体で長さ1.5cm、へそがあるとありますが、食べられるとは書いていません。

ミツバアケビ:三葉木通・三葉通草(遠いの郷愁) 

2015-09-25 10:51:55 | 植物観察記録

山道を歩いているとき、ミツバアケビ:三葉木通・三葉通草(アケビ科アケビ属)の鮮やかな赤紫色に色づいた実がいくつもぶら下がっているのに出会いました。
あまりきれいだったので、つる毎切り取って帰り、水に挿して生け花にして置いたら、三日目に自然に開き、白い膜につつまれた種子が顔を出しました。
太平洋戦争の戦況悪化につれてお菓子の類がすっかり姿を消した小学校生のころ、山で食べたとろりと甘いアケビの味は、幼い日の思い出として大人になっても忘れられないものでした。何十年か後、そのアケビを食べてみましたが、すこし青臭く、やたら種が多いのが気になって、すっかり幻滅した記憶があります。見たところおいしそうに熟れているアケビでしたが、再び幻滅を感じるのをおそれて、結局今回は観賞用にとどめることにしました。
普通アケビといえばアケビとミツバアケビを総称しますが、一般にはあまり呼ばれないミツバアケビのほうが、アケビに比べて、実も大きく、果皮が厚く色も美しい鮮紫色で、味も勝り、アケビ細工の蔓はアケビではなくミツバアケビの株元から長く伸びる蔓が使われるなどいろいろな点でアケビより優れています。ということは普通アケビというときはアケビではなくミツバアケビを指していることが多いということになります。
晩秋、長さ10cm内外、長楕円形淡紫色の果実が花梗に1~4個つき、熟すと縦にわれます。
“アケビとは”、その熟した実が口をあけた姿を形容し、開け実、あくび、開けつび(女陰)から来たという説や、仲間のムベが開かないのに開くからアケウベなどの諸説があります。
乳白色の果肉は甘く昔は子供たちの大事なおやつになっていました。実を食べるだけではなく、果皮を油で炒めてもよく、若芽の先端も東北地方などではキノメと称して代表的な山菜になっているそうです
アケビカズラ、山姫、テンテンコボシ、野木瓜などの別名があります。
他にアケビとミツバアケビとの自然交雑種のゴヨウアケビがありますが、葉の数は5枚でアケビに、葉の形と花の色はミツバアケビに似ていて、見るからに両者の混血という感じです。

テキジュクラン:適塾蘭(福沢諭吉も眺めた?)   

2015-09-17 09:39:28 | 植物観察記録
 
大阪医科大学の中庭に斑入りのヤブランらしき草が紫色の花をつけていました。
傍らに名札があり適塾蘭・ヤブラン・リリオベ(ユリ科ヤブラン属)とありました。
説明によると、“緒方洪庵の適塾の庭に咲いていた美しい蘭。福沢諭吉や大村益次郎らがこの蘭を眺めながら蘭学の勉強にいそしんだ。昭和56年大阪医大が適塾からこの蘭の分苗を受け、校庭の一隅に植え、適塾蘭と名付けていつくしんでいる。”とありました。
これによると大阪医大が勝手に名前をつけたようにもとれるので、念のためにネットで調べると、一つだけ適塾蘭の記事が見つかりました。それによると医大図書館協会というのがあって、ある年その総会で緒方洪庵の子孫である緒方富雄先生が講演されたとき、適塾に植わっているこの欄の話が出て、そこから分苗を受けた複数の医大関係者が、リュウキュウヤブラン:琉球藪蘭といわれるこの蘭に適塾蘭と名付けて栽培するようになったという話でした。
どの植物図鑑にも載っていないこの蘭が、適塾蘭の名で各地の医大の庭に栽培されているとすれば、いつかこの名が標準的になることもありうると思うと、植物の名前が決まって行く一つの例となるかも、などと考えたりしました。

コガンピ:小雁皮(紙にはならない) 

2015-09-14 18:19:43 | 植物観察記録

三重県上野森林公園の道端にコガンピ:小雁皮(ジンチョウゲ科ガンピ属)が花をつけていました。
日当たりのよい山野に生える落葉小低木で、根元から枝分かれして高さ40~60㎝になり、茎の上部は毎年枯れます。枝や花には細かい毛があり、葉は長さ2~4cmの卵状楕円形で、らせん状に蜜に互生します。
7~9月、枝先に白色またはピンクの小さな花をつけます。花弁のように見えるのは萼で長さは1cmほど、細い筒状で4つに切れ込みます。果実は萼に包まれたまま熟します。
仲間のガンピから作る雁皮紙は、緻密で光沢があり、上品な和紙として知られていますが、コガンヒ゜は皮の繊維が弱く製紙原料にならないところからイヌガンピの別名もあります。もっとも雁皮と同じように製紙原料になるが品質は良くないとする図鑑もりますが、雁皮紙そのものが稀少となっている現在、コガンピで質の良くない和紙を作る業者があるとは思えません。

タチカモメヅル:立鴎蔓(本家が見当たらないカモメヅル) 

2015-09-12 11:11:24 | 植物観察記録

三重県上野森林公園の湿地へ続く道端にタチカモメヅル:立鴎蔓(ガガイモ科カモメヅル属)が花をつけていました。
近畿以西に分布し、湿った草地や湿地などの日当たりのよいところ生える多年草で、 茎は下部が直立して、先はややつる状になって長さ40~100cm、わずかに曲がった毛があります。
対生する葉は葉柄が短く2~5mm、基部は円形または多少心形、葉身は長楕円状披針形でとがり、長さ3~11cm、幅1~4cm、やや厚く、裏面に短毛があります。
花は上部の葉腋に集まってつき、暗紫色で径9mm内外。萼裂片は長さ約2mmで少し毛があり、
副花冠は卵状三角形で蕊柱よりやや短くなります。
茎の下部では自力で立ち上がることからこの名がありますが、カモメヅルの仲間はコバノ、オオ、コ、アズマ、アオなどがカモメヅルの語の頭につくのがあっても、“カモメヅル”そのものの名は図鑑を見ても見当たりません。元になる名がないのに、変種的な名がたくさんあるのは、名づけの順序としては不思議な気がします。

ミヤマウズラ:深山鶉(珍しい群生)      

2015-09-09 09:27:12 | 植物観察記録

赤目四十八滝の遊歩道の古い四阿の屋根に、ミヤマウズラ:深山鶉(ラン科シュスラン属)が珍しく群生して、一方にかたよった穂状の淡紅色の花を、いっせいに同じ方向に向けて咲いていました。
本州、四国、九州の低山帯のやや乾いた林間に生えるというこの草が、渓谷沿いにこのように群生しているのは、よほどこの屋根がこの草の生育環境にぴったりだったのか、たまたま人の手が届かないところだからなのか、よくわかりません。
ミヤマウズラの名は、葉脈に沿って白い模様がある葉をウズラの羽にたとえたものとされますが、(‘14年7月4日記事)、毛の多いつぼみを鶉の姿に見立てたものとの説もあります。深山の名がついていますが低い丘陵地帯でも見られます。

スズムシ:スズムシ(癒しの鳴き声) 

2015-09-07 15:03:38 | 植物観察記録

翅をすり合わせて鳴く雄
知人に幼虫を頂いたスズムシ:鈴虫(バッタ目スズムシ科)が、成長して夜となく昼となく競うようにりいんりいんと美しい声で鳴いています。
初めて飼ったこのスズムシ、鳴きはじめるまではうるさくはないかなどと思ったのですが、いざ鳴きだすと、結構大きい声ですが、うるさいどころか、精神的にイライラしている時など癒される思いです。
平安時代にはスズムシを松虫、松虫を鈴虫といったそうで、源氏物語に、「声々聞こえたる中に、松虫(鈴虫)の振り出たる程はなやかにをかし」とあるそうです。
鳴き声を聞いて、妻も喜ぶので、すっかりいい気持になり、餌やりが毎日の楽しみになってしまいました。

最終の脱皮(白くて小さく丸い翅が見る間に大きく開いてゆく

充分開いた翅もまだ白い