むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

ヤマブドウ:山葡萄(山ではあまり食べない?) 

2017-10-25 09:59:54 | 植物観察記録

前からノブドウは食べられないがヤマブドウは食べられると聞いてきたのに、関西ではよく目につくのは食べられないほうのノブドウばかりで、たまに信州などで実を見かけても高いところにあって味わうことができずにいました。

はじめて手の届くところにあった大山のヤマブドウを期待をもって口にしてみましたが、酸っぱさが勝ち、渋みもあってとても美味しいもとは言えません。

がっかりして、ヤマブドウの実は、生食したり果実酒にしたりすると聞いてるがと、ガイドさんに尋ねると、ここら辺では食用にする話はあまり聞かないといいます。

帰って少し調べてみると、生食、ジャム、ジュース、ワインなどに大いに利用されているほか、ヤマブドウには、ポリフェノールを多く含まれているので、最近、健康食品として注目されているという記事もあるかと思えば、年によって、場所によって、また木によって味の差が大きいという情報もああります。もしかしたら、大山のは不味い方のヤマブドウであったのかもしれません。


ルイヨウショウマ:類葉升麻(もともと升麻なのに)

2017-10-24 09:09:24 | 植物観察記録

山横手道にルイヨウショウマ:類葉升麻(キンポウゲ科ルイヨウショウマ属)が黒い実をつけていました。深山の樹林内に生える多年草で、高さは30~80㎝、葉は2~3回3出複葉、粗い鋸歯があります。

花茎の先に短い総状花序をだし、白色の花を集まってつけますが、花弁・萼片は早落性で雄蕊が目立ちます。秋、果実は球形で直径約6mm、黒く熟します。

ふつう類葉とは、ルイヨウボタンがボタンではないのに葉がボタンに似ているというのでその名がついているのですが、ルイヨウショウマはの葉はどう見ても升麻の仲間の葉に似ているので、不思議な名づけと思い、少し調べてみました。

升麻とは、もともと漢方薬でキンポウゲ科のサラシナショウマの根茎を乾燥したものですが、バラ科のヤマブキショウマや、ユキノシタ科のトリアシショウマなども根茎を生薬として用いられることや、アジサイ科のキレンゲショウマなど、形態が似ているだけで、古くより薬効の有無にかかわらず科や属を超えてショウマの名を持つ植物が数多くできています。そしてショウマの名を持つ仲間の葉の形は必ずしも同様ではありません。

升麻の代表格であるサラシナショウマと同じキンポウゲ科のルイヨウショウマの場合、類葉とはどういう意味を持つのか、名づけた人に聞いてみたいものです。


ダイセンキャラボク:大山伽羅木(本場で見る大山伽羅木)10月23日

2017-10-23 19:15:14 | 植物観察記録

 

大山横手道から大山寺の間のところどころにダイセンキャラボク:大山伽羅木(イチイ科イチイ属)が赤い実をつけていました。イチイの変種で、大山、道後山、氷ノ山など本州日本海側の亜高山~高山に野生していますが、観賞用として庭園に栽植されることも多い常緑低木です。

ふつう幹は直立せず地面に横に横たわり、高さ約1~2m、時に幹の径15㎝になります。

イチイに似ていますが、長さ1~2㎝の葉が、イチイのように2列に並ぶことはなく、らせん状に密生します。

雌雄異株で、種子は直径3~4㎜の球形で、花のあと肥大して杯状になった仮種皮に包まれます。秋に種子が熟すころには仮種皮は紅色になり甘くて食べられます。もっとも、イチイと同じように青い種子は有毒です。

大山の頂上付近に群落があり、“ダイセンキャラボクの純林”として国の天然記念物に指定されていますが、ふつうはキャラボクで呼ばれています。

和名の伽羅木は、木の材から香料をとる伽羅樹に見立てたものといわれています。


ヤマハハコ:山母子(そのままドライフラワー)

2017-10-22 14:09:14 | 植物観察記録

 

紅葉の千畳敷カールに霜枯れしたヤマハハコ:山母子(キク科ヤマハハコ属)の群生がありました・

山地~亜高山の日当たりのよい乾いた草地や礫地に生える多年草で高さは30~70cm、茎や葉の裏面は綿毛に覆われています。

 互生する葉は茎の下部の葉は長さ約10cm表面は光沢があり3本の脈が目立ちます。

8~9月、茎の先に頭花が集まってつき、白い花弁のように見えるのは総苞片で、カサカサした感じになります。(’12.9.12記事参照)

もともとカサカサした感じのヤマハハコですが、この時期の姿はそのままドライフラワーになっていました。

 


ツガザクラ:栂桜(ユーモラスな果実) 

2017-10-19 10:07:53 | 植物観察記録

千畳敷カールの岩場に生えたツガザクラ:栂桜(ツツジ科ツガザクラ属)が、直径約3.5mm偏球形の茶色の蒴果をユーモラスに立ち上げていました。

 本州、四国の高山帯~亜高山帯上部の岩の隙間や礫地にはえる常緑小低木で、茎は地に伏して、上部は斜上し高さ10~15㎝、葉は小形の線形で、密生します。日本特産でPhyllodoce nipponia MAKINOの学名があります。和名は葉がツガに似て、花が桜色でサクラのように5裂しているところからきています。

 初夏に咲く花は、枝の上端に1~5個つき、淡紅色の壺状鐘形で、萼も濃い紅色、いかにも高山に似つかわしい美しさです。

果実は地味ですが、行儀よく並んだ茶色の姿は愛嬌があるといえます。

 


シラタマノキ:白玉の木(秋の高山で目立つ)

2017-10-17 18:14:48 | 植物観察記録

夏には高山植物が乱れ咲く秋の千畳敷カールも、10月ともなれば実をつけた草木がわずかに見られるだけでした。岩陰に目立つ白い実をつけていたのはシラタマノキ:白玉の木(ツツジ科シラタマノキ属)でした。

本州の中部地方以北、大山、三瓶山、北海道の亜高山帯~高山帯の草地や林縁に生える常小低木で、地下茎から枝を斜上して高さ10~30cmになります。 葉は互生で厚く無毛、皮質で光沢があります。

 夏、上部の葉脇に白い花が1~6個つき、花冠は長さ約6mmの卵球形~卵状壺形で浅 く5裂します。

亜高山帯~高山帯に生育するツツジ科の小低木の多くは壺状鐘形のかわいい花をつけ人気の高山植物となっています。よく似た花をつける仲間でも、液果になって食べることができるクロマメノキ(‘12年9月4日記事)や、萼が成長し多肉になり、さく果を包んで液果状になり食べられるアカモノ(’12年9月26日記事)、花が散ると子房が熟し、そして萼に包まれて段々肥大し,白い球形のさく果になるこのシラタマノキなどで、果実の形がさまざまあって、高山のツツジの仲間は花も実も楽しめます。

アカモノに対し本種はシロモノの別名があり、果実は、つぶすとサロメチールの匂いがするといいます。

 


ミヤマナナカマド:深山七竈(ミヤマと見たが)   

2017-10-16 10:48:30 | 植物観察記録

10月4日、中央アルプス千畳敷カールの紅葉を見に行きました。

絶好の天気に恵まれて素晴らしい秋の千畳敷を楽しむことができました。(むかごの高槻10月6日記事参照)

葉がほとんど散ってしまったミヤマナナカマド:深山七竈(バラ科ナナカマド属)の赤い果実もすこししなびています。

ナナカマド属の代表的なナナカマドは九州から北海道までの山地帯~亜高山地帯に広く分布する落葉高木としておなじみですが、高山帯に近づくにつれて、ウラジロナナカマド、タカネナナカマド、ミヤマナナカマドなどの低木に移ってゆきます。このうちウラジロナナカマドは、葉の先から3分の2くらいまで鋭い鋸歯があり基部近くは全円であり、葉の裏面が粉白色などの特徴があり、果実の先端が星形にくぼみます。

タカネナナカマドとミヤマナナカマドはいずれも本州中部地方以北北海道の高山帯~高山帯に分布しますが、ミヤマナナカマドはタカネナナカマドより全体に少し小さく、果実も小さくほとんど垂れ下がらないのに対して、タカネナナカマドの果実は垂れ下がります。

ナナカマドの仲間は雑種できやすく、タカネナナカマドの別名がオオミヤマナナカマド、ミヤマナナカマドの別名がコミヤマナナカマドというなど、もともと中間型も多く両者の区別が難しい場合もあるとされています。