むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

キレンゲショウマ:黄蓮華升麻(やはり現地で)

2017-08-30 17:14:51 | 植物観察記録

六甲高山植物園にキレンゲショウマ:黄蓮華升麻(アジサイ科キレンゲショウマ属)が咲いていました。

キレンゲショウマは、奥多摩御嶽神社付近に多いキンポウゲ科のレンゲショウマ(08年9月6日記事)に似て、花が黄色なのでこの名がありますが、レンゲショウマと異なり、アジサイ科でかつ独立の属であるキレンゲショウマ属の大形多年草で、西日本の石灰岩帯に特産し、やや湿った林下や傾斜地に生え、高さは60~120cm、茎は分岐せず、葉は対生し、掌状で径12~15cm、長い柄があります。夏、茎の頂部から花柄をだし5弁の鐘形の美しい黄色花を下向きにつけます。雄蕊15本、雌蕊の花柱は3~4本あります。

先年、宮尾登美子の小説”天涯の花“に出てくるレンゲショウマに惹かれて、2度目になる四国尾剣山(1955m)へ見に行ったことがあります。(‘12年8月12日記事)

剣山の厳しい岩場に咲くキレンゲショウマは、捨て子という幸薄く生まれた“天涯の花”の主人公珠子が、自らの手で幸せをつかんでゆく姿に重なって見えて、美しさと厳しさがあり印象深いものでした。剣山の群生地は平成12年世界的な希産植物として天然記念物に指定されています。 

こちら六甲高山植物園のそれは、だいじに育てられているためか、心持ちまろやかな穏やかな様子に見えて、剣山で見たキレンゲショウマほどの感激は湧いてはきませんでした。

 


ヤマナシ:山梨(六甲山頂に実る) 

2017-08-28 15:34:36 | 植物観察記録

神戸市から大阪市方面を一望にする六甲ビューパレス展望台の真下に2本のヤマナシ:山梨の木があり小ぶりの実をつけていました。朝鮮半島南部、中国に分布し、日本のものは古い時代に中国から渡来したという説があり、果実は小さくて固く、食用に適すとはいえませんが、果樹としての梨は本種を改良したものと考えられており、今でも梨農園の傍らに植えられて、自家不和合性である改良梨の受粉に一役買っています。

6月ごろ、樹冠を覆うように咲く純白の花は(’10年6月25日記事)、直径約3cmで散房花序に5~10個つきます。果実こそナシにかないませんが、いつぞや信州八島湿原で見たヤマナシの花は、直径約3cm、純白で、樹冠を覆うように咲いていて、清楚さにおいては、長恨歌で、楊貴妃が悲しむ姿に例えられたナシの花を凌駕するものがあるなどと感じたことを思い出していました。

展望台に立つ大勢の観光客は、眼下に広がるパノラマに見とれてはいても、すぐ下のヤマナシの木に目をとどめる人は一人とていませんでした。


鯉が窪湿原の植物④

2017-08-26 10:54:46 | 植物観察記録

旅行会社がの触れ込み”日本太古の自然の姿を保ち続ける秘境西の尾瀬”という文句は、少なからず誇大広告めいたものですが、それはそれなりに植物好きには結構楽しめるものでした。

報告代わりに、鯉が窪池の周辺で見掛けた植物たちを、コメントをつけずご紹介します。

オミナエシ

アギナシオトギリソウ

イソノキ

キセルアザミ

サギソウ

サワギキョウ

ママコナ

サワヒヨドリ

ジュンサイ

タチカモメヅル

シラヒゲソウ

ツルリンドウ

ヒツジグサ

ノササゲ

ヒルムシロ

ミズオトギリ

ミソハギ

ワレモコウ

ヒメシロネ

チダケサシ

 

 

 


ミコシギク:神輿菊(鯉が窪湿原の植物③)

2017-08-25 13:36:21 | 植物観察記録

ミコシギク:神輿菊(キク科キク属)は、一見栽培種のフランス菊に見えますが、実は日本には氷期に朝鮮半島経由で分布を広げてきた、いわゆる氷河期の遺存植物のひとつと考えられており、絶滅が危惧されている希少種です。ここ鯉が窪湿原は個体数が多いことで知られており、これも鯉が窪を代表する植物です。

ホソバノセイタカギクの別名があるように、葉は細く、上部の葉は線形となります。茎は細くて最初は立ち上がちますが、次第に倒れかかり、他の植物に寄りかかった状況になることが多いとされます。

9~10月、上部で分枝した茎の先端に直径3~6㎝の白色の舌状花を持つ頭花を一つずつ咲かせます。

ミコシギクの名は神輿+菊で、長い茎の先に大きな花が咲く本種の姿が、祭りの神輿行列や大名行列の際に振り歩く装飾された槍(御輿槍)の様子に似ているということで付けられたとされますが、かなり想像力が必要のようです。


オグラセンノウ:小倉仙翁(鯉が窪の植物②)

2017-08-24 07:54:26 | 植物観察記録

オグラセンノウ:小倉仙翁(ナデシコ科センノウ属)もまた、鯉が窪湿原を代表する植物の一つです。

もともと、1903年に熊本県の阿蘇で採集された標本に基づき、牧野富太郎氏が新種として記載した際、古書である本草図説に掲載されていた植物に当てはめ、オグラセンノウの名を付けたといいますが、その後、1921年に岡山県の哲西町(鯉が窪の所在地)で採取された標本に、サワナデシコという名が付けられたのが、オグラセンノウと同一種であることが判明しました。生育立地は湿原の中ではやや栄養分の多い立地であり、イメージとしては貧栄養と中栄養のはざまといった環境とされており、分布は、熊本県阿蘇地方と岡山県北西部から広島県の北東部にかけての狭い地域に限られています。

オグラセンノウは湿原に生育する多年生草本で、高さ80㎝程、対生する葉は細く先がとがります。花は6月から8月に咲き、茎の上部にふつう数個の紅色の花をつけます、5弁の花弁の先端は細かく切れ込みます。

鯉が窪湿原のオグラセンノウは、限られた場所で個体数もすくなく、頑張れよと声をかけたくなりました。


ビッチュウフウロ:備中風露(鯉が窪湿原の植物①)

2017-08-23 10:40:33 | 植物観察記録

 

岡山県新見市にある鯉が窪湿原へ行ってきました。

国指定の天然記念物に指定されているこの湿原は、吉備高原の北辺標高550mのところにあり、西部本州を代表する湿原として貴重な地域とされています。まず、この季節、この湿原を代表するいくつかの植物を紹介します。

ビッチュウフウロ:備中風露(フウロソウ科フウロソウ属)は、湿原に生える多年草で、茎の高さ30~40㎝ほど、葉は薄く5裂し、裂片の先はさらに3裂します。

7-9月、細長い柄の上に淡い紅紫色の濃い網目の脈が目立つ花を2個ずつつけます。

鯉が窪湿原湿原に咲く備中風露はまさに土地柄にぴったりですが、この名は備中で初めて発見されたのでつけられた名前で、必ずしもこの地方特有ではなく、本州(長野県南部、白馬村・東海地方・近畿地方北部・中国 地方など)に分布します。キビフウロの名もあります。