むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

クログワイ:黒慈姑(外来に名前盗られて) 

2015-12-30 10:13:59 | 植物観察記録

クログワイの球茎
お正月が近づき、出来合いおせち全盛のいまもわが家では手作りにこだわって大わらわです。
大きい芽がでるので“めでたい”“芽が出る(出世する)”などの語呂合わせで使われるクワイ:慈桑
も欠かせないおせち材ですが、最近見たクワイならぬクログワイ:黒慈姑を思い浮かべていました。
クワイとは縁もゆかりもないカヤツリグサ科ハリイ属のクログワイの名前の由来になったのは、地下茎の先に生える径7~18mmの黒い球茎で、これがオモダカ科のクワイに似ていて食べられるからといます。
おせち料理に使うクワイはオモダカ科の変種の球茎で中国から渡来したもので、それより前に日本でクワイといっていたのがこのクログワイで、渡来種のほうが知られるにつれて、球茎が黒いのでクログワイと呼ばれるようになったそうです。つまり本家のクワイが名前の母屋を取られてしまったというわけです。牧野図鑑でクワイの名は食べられるイ(灯心草)となっていることもこれで納得ができ、クログワイ、イ、クワイの関係も分るというわけです。

クログワイの草姿

モミジツメゴケ:紅葉爪苔(赤い爪は生殖器官) 

2015-12-11 09:14:39 | 植物観察記録

雲ケ畑の湿った道端の苔の中に赤い爪のようなものを立てていたのが地衣類のモミジツメゴ:紅葉爪苔(ツメゴケ科)です。
赤い爪の部分は「子器」といわれ生殖器官でこの中に胞子が作られます。地衣体の部分を裏返すと意外な白さでした。
地衣類の和名の約70%以上がウメノキゴケ、アカミゴケ、ハナゴケなど○○コケの名がついており、地衣類とコケ類は混同されることが多いのですが、地衣類は菌と藻の共生体であるのに対し、コケ類は単独の生物であり、所属分類群としては前者の菌類に対し後者は緑色植物で、地衣類とコケ類はまったくの別物です。
地衣類は人間の生活に直接関係が少ないように思われがちですが、大気への酸素供給や空中窒素固定に関与し、森林土壌の養生にも重要な役割を果たすほか、大気汚染の指標になったりしています。
日本で約1,500種、世界で約20,000種もあるといわれる地衣類、もう少し関心がもたれてもよい生物といえそうです。

ヒメサジラン:姫匙蘭(苔の中のシダ)

2015-12-08 08:53:50 | 植物観察記録
雲ケ畑の湿った道端の苔の中に小さいさじ状の葉が点在していました。
ヒメサジラン:姫匙蘭(ウラボシ科)というシダ植物です。
京都府カテゴリーで準絶滅危惧種に指定されているこのシダは、原生林の樹幹や岩膚に着生する種類で、
常緑性の多年草。根茎は細長く、コケ中などを這います。葉は単葉で全長3~8cm、倒卵形から狭倒卵形、中肋は顕著に表面に隆起します。根茎上や葉柄基部の鱗片は暗褐色膜質、ソーラスは線形で、通常急角度で中肋に接して付きます。
蘭の名がついているシダの仲間にはほかにシシラン、クリハラン、マツバランなどがあります。
そもそも蘭とは何かと辞書を引くと“ラン科植物の総称”とありました。ラン科ではないのに“蘭”の名がつく植物はほかにもユリ科のスズラン、タケシマラン、ハラン、ヤブラン、ノギランなど、ヒガンバナ科のクンシラン、アカバナ科のヤナギランなど数多くあります。おそらくこれらの“蘭”は植物分類が確立される以前に感覚的につけられたものと思いますが、必ずしも違和感がないのは面白いところです。

トラノオゴケ:虎の尾苔(広がる虎のしっぽ)

2015-12-06 15:33:33 | 植物観察記録

年中湿った感じのある洛北雲ケ畑の道端に生える苔のなかに枝状に広がっていたのがトラノオゴケ:虎の尾苔(トラノオゴケ科)です。深山の木の上や岩の上に生える大型の苔で、茎は樹状に枝分かれし、やや光沢のあるさじ状にくぼんだ葉を密につけまる。があれば楕円形で直立します。
名前の通り虎の尾に似ているかどうか少し疑問ですが、特徴ある形から覚えやすい名前といえます。

ヒノキゴケ:檜苔 (イタチノシッポとも) 

2015-12-05 17:13:03 | 植物観察記録

洛北雲ケ畑の苔の続きです。
茎に細くて柔らかい針状の葉をたくさんつけて、光沢があり、ふわふわとした手触りの美しい苔が、あちこちにこんもりとした群落を作っていました。
ヒノキゴケ:檜苔 (ヒノキゴケ科)で、本州から琉球にかけての比較的暖かい地方の林内に生えます。 
いつぞや嵯峨野祇王寺で見たときは、イタチノシッポゴケと名札がありました。茎の上部が動物の尾のように曲がり、イタチのしっぽのように柔らかいということから名でしょうが、別名としてはイタチノシッポというのが正しいようです。
京都のお寺などにはよく植えられていますが、街中ではすぐ茶色になるとかで栽培は難しいようです。


コウヤノマンネングサ:高野の万年草(草か苔か) 

2015-12-03 10:35:56 | 植物観察記録
コウヤノマンネングサ:高野の万年草(コウヤノマンネングサ科)は、名前からしていかにも意味ありげです。
林の下のやや湿ったところに群生し、茎の上部が細かく枝分かれして樹状になる大型の美しい種で、地下を匍匐する茎があります。
コケでありながら名前に草とついているのは、約200年前に和歌山県・高野山で このコケが発見されたころは、コケの概念がまだ明瞭ではなく、 地元では高野山の霊草として「高野の万年草」と呼ばれていたからという説があります。草なのか苔なのか分からないほど大型であるということでしょう。
また昔は高野山参詣の旅から戻ったときこの苔を持ち帰って、確かに高野山に詣でて帰って来たとの証にしたという話もあります。
大きくて美しいところから水中花の材料になったり、乾燥したものがしおりとして売られたりするそうです。

オオカサゴケ:大傘苔 (大きくて美しい)

2015-12-03 09:27:58 | 植物観察記録

花の姿も消えた晩秋の洛北雲ケ畑の道筋では、目につくものは苔やシダの仲間でした。そのいくつかを取り上げます。
傘を広げたような大型の苔はオオカサゴケ:大傘苔(ハリガネゴケ科カサゴケ属)です。
オオカラカサコケともいい、日本を代表する最も美しい苔とされています。
茎は長いものでは6~8㎝にもなり、林の下での腐食土の上に大な群落を作ります。
葉は茎の先端に集まって付き、それぞれの葉の長さが15~20㎜もあって、大きな傘状になります
雌雄異株で、まれに茎の先からでる柄の上に、円筒形の大型のが垂れ下がるといいます。
盆景、テラリウム、水中花などにリ利用されますが、栽培は難しいということです。