むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

ワタ:綿 (綿と和綿) 

2014-11-29 17:17:58 | 植物観察記録

綿

綿花を使った自然工作で来年の干支の羊をつくるといって、妻が庭に種を蒔いたワタ:綿(アオイ科ワタ属)が、手入れが悪かったのか11月末になってやっと種子を包む綿毛が顔を出しました。
アジア原産で、最も古い繊維植物のひとつで、紀元前2000年ごろすでに実用にされ、日本へは延暦18年(799)に渡来したとあります。
綿をとるために畑に栽培される1年草で、茎は直立し高さは60cmくらいになります。花は秋、径4cmくらいで淡黄色、フヨウ独特の柔らかい花びらでなかなかきれいです。(’07年0月8日記事)花の下には紫色を帯びた3個の苞葉があります。さく果は裂開すると、中に種子を包む白く長い綿毛があって、これで綿糸をつむぎ、種子からは油をとります。

すこし前、ある薬草園でワワタ:和綿といわれる種類の綿が実っているのを見かけました。
日本で昔から栽培されていた綿で、外国産に比べて繊維が太く短い。弾力があり、ふとんに向くといいますが、近代的な大量生産の綿業にはむかず、ほとんど商業的に栽培されることはありません。
ただ、最近は比較的虫がつきにくいなどの利点もあり、地球環境や人体に優しい無農薬、有機栽培をうたった和綿が「オーガニック・コットン」などといわれて、一定のファンがついているようです。
普通の綿と和綿ちょっと目にはその区別はつきませんでした。

和綿


イヌカラマツ:犬唐松 (黄金色の紅葉) 

2014-11-26 06:07:29 | 植物観察記録

京大芦生演習林長治谷小屋の傍らに植林されたイヌカラマツ:犬唐松(マツ科イヌカラマツ属)が黄金色に紅葉?していました。散り敷いた落ち葉も金色の絨毯を敷き詰めたように見えます。

万博公園の世界の森にも植えられていますが、国内の植物園でもこの木を植えているところは少ないそうで、学術的にも貴重な植物として扱われているそうです。
中国の中国東南部にだけ分布する落葉針葉樹で、樹高は30~40m、以前はカラマツ属に含まれていたものが、モミ属の球果と同じように球果の果鱗が脱落するのでカラマツ属から独立してイヌカラマツ属とされ、1属1種となっています。
分布域は狭く、メタセコイヤと同じように“生きている化石”とか“古代植物”と呼ばれているといいます。
金色に紅葉することから中国名では『金銭松』と書き、矮性種などを縁起植物として愛好する人も多いそうです。

イヌハギ:犬萩(変わり者の萩) 

2014-11-25 11:13:47 | 植物観察記録

ハギに見える葉をつけた低木に、変わった形の茶色の果実をつけたのに出会いました。
イヌハギ:犬萩(マメ科ハギ属)です。
河川敷や日当たりよい草地や砂地に生育する半低木で、高さ150cm。全体に黄褐色の軟毛があり、葉は互生し、短い柄のある羽状の3小葉をつけます。
花は白色でやや黄色を帯び、長さ8~10mm、長い総状花序に多数つきます。('09年9月19日記事)
花序の基部に閉鎖花が多数葉腋にあつまってつくのが特徴です。
節果は卵形で長さ4~5mm、閉鎖花からできたものはやや小型となります。
果実には、節に丸くかたまってついているのと、穂状に長いのと2型ありましたが、前者が閉鎖花からのものではないかと思われます。
ハギに比べると品がなく、鑑賞に値しないとところからイヌの名がついたというイヌハギですが、自生種が少なくなり、環境省のRDBでも絶滅危惧種(NT)となっています。


アカバナ:赤花(テイクオフ間近) 

2014-11-24 16:09:07 | 植物観察記録

冬枯れの湿地に今にも飛んでゆきそうな白い毛のようなものが目立っていました。
アカバナ:赤花(アカバナ科アカバナ属)の種子です。
アカバナは花も赤いですが、夏から秋にかけてしばしば茎や葉も赤くなるのでこの名があります。
山野の水湿地に生える高さ30~70cmの多年草で、夏から初秋、葉脇に直径約1cmの紅紫色の花をつけます。花弁は4個で先が浅く2裂します。アカバナ属は柱頭の形でいくつかのグループに分けられますが、アカバナの柱頭は白くて太い棍棒状になっています。
種子の後ろに見える細長い棒状のものは果で、熟すと4裂し、中の種子には種髪といわれる毛があり、風に乗って飛ぶ仕掛けになっています。
開いた鞘の中で白い毛をつけた種子が今にも飛び立ちそうです。

デワノタツナミソウ:出羽の立波草 11月20日

2014-11-20 05:58:23 | 植物観察記録

冬も近い芦生の森の谷沿いに珍しく夏の花が頼りなげに咲いていました。
ガイドの先生の話ではデワノタツナミソウ:出羽の立波草(シソ科タツナミソウ属)とのことでした。
図鑑などによれば、本州近畿地方以北の主に日本海側に分布し、やや薄暗い渓流沿いの岩上に生育する小形の多年草で、主として渓流の岩上、増水時には水没するような水際部にパッチ状に群生するとあります。
葉は小さい卵形または三角状卵形で、長さ約3cm、幅約2cm、表面の全体と裏面の脈上に細毛があります。花穂は4cm程度で、2cm弱の紫色の花をつけます。花冠の下唇の紫斑はやや不明瞭です。
花期は5~6月とありますが、花数は少ないものの、冬も近い芦生の森のここかしこに咲いていました。傍らに花殻だけの株が多数みられてので、咲いているのは単なる遅れ咲きと思われます。

イタヤカエデ:板屋楓(日本版メープルシロップ)

2014-11-19 06:03:42 | 植物観察記録

芦生の森でイタヤカエデ:板屋楓(カエデ科カエデ属)が黄色に色づいていました。
山地に生える落葉高木で、葉がよく茂り、板で葺いた屋根のようになるというのでこの名があります。
葉は直径7~15㎝で、5~7に切れ込み、ふちにはほとんど鋸歯がないのが特徴です。
オニイタヤなど多数の変種に分けられています。
材は強靭で、かつてはスキー、ラケットなどに使われたほか、春先に幹に穴をあけ樹液を取り出して煮詰めたものがメープルシロップやたばこの香料などになります。
10年近く前にこの芦生の森でイタヤカエデの花と芽生えを見たことを思い出し、調べてみると2005年5月17日に取り上げていました。

アシウスギ:芦生杉(豪雪地に適応) 

2014-11-18 07:11:12 | 植物観察記録

垂れ下がった枝のアシウスギの若木

京大芦生の森演習林を代表するといえるのが、アシウスギ:芦生杉(スギ科スギ属)です。
アシウスギは、ウラスギ(裏杉)と呼ばれ、日本海側の豪雪地帯の気象条件に合った特徴を持つ天然スギの変種で、京都大学芦生研究林内で採取された標本が基準とされ、芦生(アシウ)の名が付いています。
アシウスギの特徴として、毎年雪に押さえつけられている内に枝を横に長く延ばしてれ下がり、さらに地面近くで押し付けられた枝が根を出して、やがて幹となり新しい株として成長して行き、いわゆる伏条更新をする事があることです。
また、普通の杉より葉の角度が狭く、内側に鎌状に丸く曲がって、葉先を触っても柔らかい感じがします。
芦生杉の葉

芦生原生林一帯にはアシウスギの巨木が幾本も聳え立っています。(むかごの高槻11月17日記事参照)
案内していただいたW先生のお話では、巨木の推定樹齢は各地で誇大宣伝されているが、芦生の森の杉巨木でも実際は古いもの数百年程度が正しいとのことでしたが、風雪の耐えて生き続けてきた老杉の姿の偉容には人を感動させるものがありました。

オオバアサガラ:大葉麻殻(エゴノキ科アサガラ属)(鹿は食わない) 

2014-11-17 09:29:47 | 植物観察記録
何年かぶりで歩いた芦生の森、あらかた落葉した明るい林床は、シカの食害でほとんど幼樹が見えず、原っぱ状になった中で、川筋だけにまだ緑色の葉をつけた幼木が群落をなしていました。
谷沿いの幼木

オオバアサガラ:大葉麻殻(エゴノキ科アサガラ属)です。案内していただいた元京大演習林所長のW先生によると、鹿はオオバアサガラ食べないのでこの木ばかりが増えているとのことでした。

初夏に咲くオオバアサガラの花は(‘11年槻19日記事)、新しい枝先に長さ10~20㎝の花序を垂れ下げ、細くて白い糸を束ねて垂らしたような形の花穂が風に揺れて、遠目にもそれとわかる風情が好まれ、この花を見たさにわざわざ金剛山などの谷間へ見に行く人が多いのに、芦生の谷筋ではほかの木を圧倒する勢いで群生しています。

鹿の食害を免れている結果芦生の森の植生に異変を生じているオオバアサガラですが、これだけ見事に群生していると、初冬の芦生にある種の景観をつくりあげています。
山麓を覆う群落

この群生が一斉に花をつけた時はさぞ見事だろうと想像され、生態的にはともかく、鹿の食害も景観としては思わぬ効果をもたらすのではないかと、複雑な気持ちになっていました。


ナメコ(思いがけないナメコ狩り)

2014-11-13 22:35:27 | 植物観察記録

あるグループの京大W先生と行く芦生の森ツアーに参加しました。2~3度訪れた森ですが、初冬のこの時期は初めてです。
第1日目佐々里峠から京大演習林への道です。
しばらく行くと道筋のあちこちにあるブナの枯木にナメコ(モエギタケ科)が付着していると教えてもらいました。
自生のナメタケを見るのは初めてでしたが、丸く盛り上がって光っている姿は、確かにナメコです。
市場や山の土産店で売られている小ぶりで形も大きさもよく揃ったものばかり見ていた目には、地元の開いたシイタケよりも大きいほどの傘を持ったナメコがあるのを見てこれもナメコかと驚きました。

簡単な道具を持った地元のキノコ狩りの人も届かない高いところで成長したもののようです。
ナメコは、秋落葉広葉樹、おもにブナの倒木や枯れ株に群生~束生する中型の木材腐朽菌で、傘の中央部は明褐色、周辺部は黄褐色、饅頭型から平に開き、表面はゼラチン質の薄い膜に覆われます。
独特の風味で好まれるナメコの粘りは、ムチンという粘性物質が分泌されてゼラチン質になっているもので、ヌメリタケと呼ぶ地域もあります。
写真を撮るだけにするつもりが、ほかのメンバーが熱心に採っては大量に袋に詰めているのを見て、手が届くところのものを少し採って家への土産にしました。ところが家人はなかなか信用しないので、京大名誉教授、地元のキノコ狩り、山の家の主人の三者の権威が保証しているのだと説き伏せて、少しだけ使ってナメコ汁をつくってもらいました。
翌日になっても何の異常もないので、残りのナメコも無事お腹に収まりました。

アオヤギバナ:青柳花(どっこい残った)

2014-11-01 15:23:16 | 植物観察記録

西宮名塩から武田尾への廃線コースから見下ろす武庫川畔の岩の隙間に、黄色い花をつけている草がアオヤギソウ:青柳草(キク科アキノキリンソウ属)だと教えてもらいました。
川岸などに生える多年草で、高さは20~50㎝、茎は束生し、直立または斜上します。葉は茎に密生し、線状披針形でほとんど全縁です。青柳草の名の通り、柳のような細長い葉があり、しっかした根を持って、河川の増水にも耐えうる構造となっています。
そのおかげか、今年の夏から秋にかけてたびたび直撃した台風による武庫川の増水で、ほかの植物があらかた流された川畔にあって、このアオヤギソウだけがしたたかに残っていました。
残念ながら遊歩道からは岩場に近づくことができず、遠くに咲くアキノキリンソウに似るという花の様子までは写し取ることは出来ませんでしたが、洪水に負けず咲いている健気なアオヤギソウにエールを送ったことでした。