むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

チシマツガザクラ:千島栂桜(紅色の蕾が目立つ)

2013-08-10 17:17:56 | 日記

御岳ロープウエイの高山植物園でみかけたチシマツガザクラ:千島栂桜(ツツジ科チシマツガザクラ属)です。
北海道、八甲田山、早池峰山の高山帯の礫地や岸壁に生える常緑小低木といいますから、此処のものは移植されてきたものと思われます。
茎は地上をはい、よく分枝して立ち上がります。葉は皮質で密に互生し、長さ約4㎜、幅約1㎜の線形です。
7~8月、枝先に淡紅色、直径約7㎜で、基部まで4裂する花を2~10個つけます。
分布は日本、千島、カムチャッカとありますが、日本での分布は北の一部に限られているようです。

キンロバイ:金露梅(金と銀と) 

2013-08-09 13:49:09 | 日記

7月末、中央アルプス周辺へ出かけました。おおかたは何時か見た植物でしたが、まだ記事にしていなかったものや、ハイマツの下などにあって出会ったものもまだまだありました。
そんないくつかを取り上げます。
キンロバイ:金露梅(バラ科キジムシロ属)は、日本では本州中部以北も高山帯の岩礫地や岩隙に生える高さ30~100cmの落葉低木で、よく分枝し、樹皮は褐色で薄く剥がれます。
葉は奇数羽状複葉で小葉は2対あり、長さ0.8~2cm、縁に絹毛があります。
6~9月、上部の葉脇に鮮黄色の半を1~3個ずつつけ、花弁は5個で長さ約1㎝の円形~広倒卵形、雄蕊と雌しべは多数あります。
和名は花が梅の花に似て黄金色だから金露梅です。

変種に全体にキンロバイに似ていて、花が白いギンロバイ(ハクロバイ):銀露梅(白露梅)もあります。

カワミドリ(意味不明の名前) 

2013-08-07 16:48:59 | 日記
カワミドリ(シソ科カワミドリ属)が、花穂に紫色の唇形花をつけています。
日本各地の山地の草原に生える多年草で、茎は四角、上部で分枝し高さ40~100cm、全体に特有な香りがあります。花は夏から秋、花穂の長さは5~10㎝、4本の雄しべは長く花外に突き出ます。
地上部を乾かしたものを藿香(かっこう)とよび、風邪薬など漢方薬に用います。
川端に生えるわけでもないのにカワミドリの名がありますが、和名の意味は分からないとあり、図鑑でも漢字での表示はありません。

コガネバナ:黄金花(名は体を表すというが・・・)

2013-08-06 17:42:50 | 日記

薬大の薬用植物園で見たコガネバナ:黄金花(シソ科タツナミソウ属)です。
何の変哲もない一見シソ科とわかる紫色の花ですが、これがなんでコガネバナというのか不思議で、記憶に残りました。
名前の由来は根の断面が鮮やかな黄色(黄金色)をしているとこらきているそうで、漢名で黄芩といい、根をとって乾燥したものを生薬として用いると聞けば、根の色が名前になったことも肯けます。
ロシアの極東地方からモンゴル、中国北部、朝鮮半島にかけて分布し、徳川吉宗の頃、朝鮮から種子が導入されて、小石川養生所(現・東大小石川植物園)で栽培されたのが、日本での栽培の最初とされています。
黄金柳の別名もあります。
別にミヤコグサのことをコガネバナと呼ぶことがありますが、もちろんこちらは根ではなく花色から来た名前です。

レンゲショウマ:蓮華升麻(気品ある薄紫の花弁) 

2013-08-05 09:33:08 | 日記

10年以上も前、まだ植物に格別の関心も持たない頃、奥多摩(青梅市)の御岳山へ参詣した時、満開のレンゲショウマ:蓮華升麻(キンポウゲ科レンゲショウマ属)が群生しているのに出会いました。
気品ある花の姿が気に入って家で鉢植えにしていたのもいつの間にか消えてしまい、そののち山で自生するものにも出会うことがありませんでした。
福島県から奈良県の山中の樹下にはえる日本特産の多年草で、高さは40~60cm、根生葉や下部の葉は2~4回3出複葉、時に3浅裂し、荒い鋸歯があります。
7~8月、茎頂に径3.5cmほどの淡紅紫色の下向きの花をまばらな総状に開きます。
がく片は多数で花弁状になり、花弁も多数で長さ1.2cmくらいです。
和名は草がショウマに似て、花がハスのようであるからといいます。クサレンゲの別名があります。
この夏、信州のある食品会社の野草園で見かけたレンゲショウマ、自生ではありませんが、久しぶりに見る花が懐かしく、とりあげました。

ユウガオ:夕顔(儚い花と逞しい果実)

2013-08-03 09:17:04 | 日記
“ここに刈り取る真柴垣 夕顔棚のこなたより 現れ出たる 武智光秀・・・”子供のときに見た村芝居の定番はいつも絵本太閤記十段目尼崎の段(略して太十)でした。
いまでこそあまり見ませんが、昔は夏の風物詩として夕顔棚はあちこちで見られたらしく、絵画、文学、芸能などによく取り上げられています。中でも源氏物語の夕顔は有名で、五条辺りのしもた屋に咲く花の名を尋ねる源氏に、女から返ったのは、香を焚きこめた白扇にのった夕顔と和歌で“こころあてにそれかとぞ見る白露のひかりそへたる夕顔の花”とあります。源氏と夕顔との出会いです。“よりてこそそれかとも見め黄昏にほのぼの見へし花の夕顔”源氏が返したたそがれにほの白く浮かぶ儚げな夕顔の名を持つ女は、ほどなく六条御息所とおぼしき怨霊にとりつかれ、夕顔の花のように短い命を終えます。やがてこの話は、能に取り入れられ「夕顔」「半蔀」となります。黄昏侍従という粋な別名もあります。
ユウガオ:夕顔(ウリ科ユウガオ属)はアフリカまたは熱帯アジア原産の、畑や人家で栽培される一年生のつる植物です。茎は5~10mにもなり、柔らかで粘質の短毛があり2分岐して他物に絡みつきます。雌雄同株で、花は夏、葉腋に単生し、ウリ類の花は黄色が多いのに対し白色です。花冠は5裂し、夕方咲いて翌朝しぼみます。
夕顔の花は、小袖、唐織、漆器、刀の鍔、浴衣に至るまで繰り返し紋様化されています。
大形の果実は長円筒形と短洋梨形があり、最大の利用はかんぴょうで、ほかに炭取り、花入れ、置物などにもなり、この形を模した茶道具”夕顔棗”などもあります。
一般人にとっては花より実が大事なのですが、清少納言は“いとおかしかりぬべき花の姿に、実のありさまこそ、いとくちおしけれ…”夕顔の名前も花もよいのに何でこんなに不恰好な実をつけるのかと嘆いています。はかない美か実用か、夕顔を見る人の感覚の違いでしょうか。