むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

イヨカズラ:伊予蔓とアカバナイヨカズラ(つる植物とは見えないことも) 

2015-06-29 13:05:33 | 植物観察記録
植物園にアカバナイヨカズラ:赤花伊予蔓(ガガイモ科カモメヅル属)が花をつけていました。
アカバナイヨカズラ

実は2年前にイヨカズラ:伊予蔓(ガガイモ科カモメヅル属)を見かけたのですが、淡黄白色のという花が殆どつぼみだったので、記事として取り上げるのを見送っていました。
イヨカズラ

ふつうに見られるのはイヨカズラの方のようで、アカバナイヨカズラは普通の図鑑には載っていません。
いずれも、海岸に近いやや乾いた草地や藪にはえる多年草で、茎は直立して高さ30~40cmになり、ときに先端がつる状にのびることがあり、これが蔓の名がついている所以のようです。
アカバナイヨカズラは淡黄白色のイヨカズラの変種ですが、赤紫色の花が多いカモメヅル属のなかでは、イヨカズラの方が例外的存在といえるかもしれません。

オオバウマノスズクサ:大葉馬の鈴草(狙いは確実な受粉というが)   6月26日

2015-06-26 10:19:03 | 植物観察記録

植物園にオオバウマノスズクサ:大葉馬の鈴草(ウマノスズクサ科ウマノスズクサ属)が咲いていました。本州関東以西、四国、九州に分布する多年草で、普通のウマノスズクサ(’08年9月7日記事)にくらべて葉が大きいのでこの名がります。
ウマノスズクサの名は果実が馬の首につける鈴の形に似ているからきているといいますが、花の形自体が鈴に似ているからという説もあるようです。花はよく見かけますが、果実はめったに見られないので後者の説も故ありといえそうです。
ユニークなのがサキソフォンに似た花の形です。花弁がなく、筒状の花はがく片が合着したものです。
花の先端部には、内側に向いた毛が密生し、虫が入りやすく出にくい構造になっています。
筒状の花はウツボカズラの食虫器官に似ていて、中に入り込んだ虫が脱出しにくい構造になっていますが、虫を消化するのではなく、虫を雌性期の花の奥にある球形の部分にいったん閉じ込め、花が雄性期になると花筒の逆毛が萎縮しハエは脱出できるようになるので、花から脱出するときに花粉が付いて、次の花に入ったときに受粉する仕組みになっているそうです。変わった形の花は、受粉を確実に行うための工夫です。その割には果実がめったに見られないというのは不思議です。

オニシバリ:鬼縛り(葉が落ちて残る果実)      

2015-06-25 14:55:44 | 植物観察記録
植物園にオニシバリ:鬼縛り(ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属)が赤い実をつけていました。
福島県以南の本州、四国、九州の山林に生えるジンチョウゲ近縁の低木で、高さは1m前後、直立してあまり分枝しません。樹皮が強く鬼をも縛るというのでこの名があります。
また枝先に集まって互生する長さ5~10cmの倒披針形の葉が秋に出て夏に落ちるのでナツボウズ:夏坊主の別名があります。
雌雄異株で4月ごろ枝の上部の葉脇に黄緑色の花が群がって咲きます(06年3月30日記事)。花弁がなく萼が筒状で大きく4裂し、雌花は雄花より小さくなっています。
果実は楕円形の液果で赤く熟し、辛くて有毒、夏の終わりに葉のない枝に新芽、つぼみ、赤い実が共存して独特の景色を作ります。
先年礼文島でよく似た同属のナニワズ:難波津(別名エゾナツボウズ)の花を見たことがあります。(写真下)

ナニワズ(礼文島にて)
こちらは本州新潟県以北、北海道、千島、サハリンに分布する落葉低木で、まばらに太い枝を分枝します。雌雄異株で、花は春、黄色花が枝先に集まってつきます。葉がオニシバリより大きいといいますが、見ただけでの区別は困難で、生育地で判断せざるを得ないようです。
礼文島でこの花をナニワズと教えてもらったとき、“難波津”と聞き、こんなところにある木がなぜ大阪に関係するような名前がついているのかと怪訝に思いましたが、調べてみると、この名はオニシバリに対する長野県の方言で、北海道で長野県人が本植物をこのように呼んだことに始まるという話があるほか、オニシバリの別名であるナツボウズ(夏坊主)が転訛してナニワズとなった説(深津正)などがあります。

スズランノキ:鈴蘭の木(花よりも紅葉とか) 

2015-06-24 14:03:20 | 植物観察記録

京都植物園にスズランノキ:鈴蘭の木(ツツジ科ゼノビア属)が、スズランに似た白い釣鐘型の花をつけていました。
北米原産の落葉高木といいますが、図鑑にも載っていないこの木の情報は多くありません。
植物園の話では、この木はニッサボク(ヌマミズキ科)、ニシキギ(ニシキギ科)とともに世界の三大紅葉樹に数えられているとかで、いずれもまだ幼木ですがこの3種が1ケ所に植えられていました。
花も可愛いですが、植物園としては紅葉を見てもらいたいということのようです。
秋になればその紅葉を見にゆくことにしましょう。

シュンジュギク:春寿菊(早咲きの白菊)

2015-06-23 17:10:34 | 植物観察記録
center>夏には珍しい白い野菊の花はシュンジュギク:春寿菊(キク科シオン属)です。
本州の近畿地方以西、四国の蛇紋岩地に生える多年草で、半日陰に生え、全体が小型で高さは10㎝内外、下部の葉は長い柄があり、葉身はやや5角状卵円形で、2~3対の粗鋸歯があります。上部の葉は小さく2~3個が互生します。
花は5~7月、頭花は径2㎝内外、舌状花は7個内外と少数で、花冠はふつう白色ときに淡紫色または紅紫色、中心部は筒状花で黄色です。
和名春壽菊は、おそらく早く開花してしかも花期が長いところからきているからであろうとされていますが、たんにシンジュギクとも呼ばれています。

ハナシノブ:花忍(優しげな名) 

2015-06-22 14:15:56 | 植物観察記録

植物園にハナシノブ:花忍(ハナシノブ科ハナシノブ属)が咲いていました。
九州の山地にまれに生えるという多年草で、茎は高さ60~90㎝、茎には稜線があります。
葉は互生し、柄はなく、奇数羽状複葉で10~12対の長さ1.5~4㎝小葉からなります。
6~8月、茎頭の円錐花序に、青紫色で直径1~1.5㎝の花を開きます。花冠の背面とふちに短毛があり、萼は5裂します。
和名は葉を羊歯植物のシノブにたとえてものといいますが、それほど似ているようには思えません。
もしかしたらシダに似ているからではなく、つつましくはかなげな姿をあらわしているのかもしれません。
背が高くよく目立つので自生地では絶滅が危惧されているというのもハナシノブの名に似合っています。

ネコノチチ:猫の乳(花は目立たないが) 

2015-06-21 19:19:47 | 植物観察記録

久しぶりにネコノチチ:猫の乳(クロウメモドキ科ネコノチチ属)の花を見ました。
変わった名前のネコノチチ:猫の乳(クロウメモドキ科ネコノチチ属)は、果実が猫の乳首に似ているところから来ていますが、花はごく地味なものです。
山野に生える落葉高木で高さは普通5~10m、大きいもので15mくらいになります。互生する葉は長さ5~12cmの長楕円形で、側脈が目立ち、先は尾状に鋭く尖り鋭い縁には鋸歯があります。クロウメモドキ科の常として、2枚ずつ交互につくいわゆるコクサギ形葉序となります。
5~6月、葉のつけ根に直径3mmほどの黄白色の小さな花を数個ずつつけます。
和名の由来となった果実は長さ8~10mmの核果で、黄色から赤くなり、熟すと黒くなって、中に核が1個あります(’08年10月25日記事)。実際には猫の乳房をしげしげと見たことがなくても、この形を見て、納得できるような気分になるのが不思議なところですが、地味な花より、面白い形の果実の方が知られて、和名の.由来となっているのは当然と思えます。


フジキ:藤木(葉がフジに似る)

2015-06-20 14:52:46 | 植物観察記録
京都植物園に遠くからでもめだつ白い花をつけた高木がありました。
フジキ:藤木(マメ科フジキ属)です。いつぞや丹波の古い神社で見かけたことがありますが、花は高いところにあって、取り上げるのは初めてです
本州福島県以南、四国、中国中部に分布する落葉高木で高さは20mほどにもなります。
名前の由来になっている藤に似た葉は、互生する長さ10~20cmの奇数羽状複葉で4~6対の小葉が互生します。
6~7月、枝先に長さ12~25㎝の円錐状の花序をだし、白い蝶形弁の花を多数つけます。
ヤマエンジュという別名があります。
類似種にユクノキ別名ミヤマフジノキがあります。(‘12年6月23日記事)花はよく似ていますがフジキの方がやや小さく、ユクノキの葉には小托葉がなく、小葉の葉脈がフジキより多く、葉裏が粉白色になるなどの相違があります。






マツモトセンノウ:松本仙翁(怪しい和名の由来) 

2015-06-18 11:15:37 | 植物観察記録

京都植物園の木陰の草中にひときわ目立つ赤色の花が咲いていました。
観賞用として庭園に植栽される多年草のマツモトセンノウ:松本仙翁(ナデシコ科センオウ属)です。
原種は九州阿蘇山の草原に生えるツクシマツモトと考えられ、江戸時代に、多くの園芸品種がつくられた中の一つとされています。国最初の園芸書「花壇綱目」1681年(延宝9年)や、伊藤伊兵衛の「地錦抄付録」(享保18年)に記載さているといいます。
茎は緑色で数本束生し、高さ70㎝ほど、5~6月に茎頂に花径4㎝の深赤色の花をつけ、萼は縦条のある筒状で、先は5浅裂します。
原色牧野植物大図鑑(北隆館)には、和名の由来として、花形が松本幸四郎の紋所に似ているからとありますが、幸四郎の紋は「四つ花菱」で、あまり似ていないうえ、時代的にもマツモトセンノウの名は
幸四郎の生まれる前からあるので、この説は当たらないといえます。
単純に、昔京都嵯峨あった仙翁寺に伝わったとされるセンノウ(仙翁)の仲間で、ツクシマツモトの園芸種だからというのがよろしいようです。

フウロケマン:風露華鬘(キが抜けててもキケマン) 

2015-06-17 08:30:48 | 植物観察記録

道後山(1268m)の登山道で見かけたのがフウロケマン:風露華鬘(ケシ科キケマン属)です。
山地などの日当たりのよいところに生える越年草で、高さは15~40㎝、葉は1~2回羽状複葉、小葉は広卵形で深裂し、欠刻があり、乳白色で薄質です。
4~7月、長さ2~5㎝の総状の花序に長さ約2㎝の黄白色の花を開きます。花は距が長くよく湾曲します。
さく果は線形で長さは約2cm、ややくびれます。
よく似たミヤマキケマンはフウロケマンの変種とされ、母種より大きく丈夫で、さく果は数珠状になります。