むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

チャボウシノシッペイ:矮鶏牛の竹箆(日本的な名の外来種)

2014-10-28 16:26:33 | 植物観察記録
田圃の縁の道端にチャボウシノシッペイ:矮鶏牛の竹箆(イネ科ウシノシッペイ族)が一面に生えていました。
東南アジア~中国原産の多年生草本で、茎は斜上または地をはい、高さ5~30㎝になります。
直立した総状花序は長さ30~35㎜で紫色を帯びます。
芝生用植物として用いられ、戦後沖縄に帰化し、最近では水田畦の維持管理省力化の目的で植栽されはじめ関東地方以西の各地で見られるようになっています。
ところでこの変わった名前は、在来品種であるウシノシッペイの小型版ということで、平たい小穂が軸にぴったり張り付いている形を、禅宗で座禅の時、修行僧を後ろから打って指導する竹箆(しっぺい)という竹製の杖に見立てものです。
外来種にしてはあまりにも日本的なこの名は、一度聞いたら忘れない覚えやすさです。

ハマギク:浜菊(最大の野菊) 

2014-10-26 08:35:07 | 植物観察記録
野に山に野菊が咲く季節になりました。
野菊とひとからげに呼ばれることが多いのですが、野菊の図鑑を見ると百種以上もありって、品種を見定めることは至難のことです。
花の直径が8㎝にもなって、野菊というには少し逞しすぎる感がするハマギク:浜菊(キク科キク属)は、本州茨城県以北の太平洋岸の崖地に生え、庭園に栽培もされる多年草で、根茎はなく、茎は高さ0.5~1m、下部は太く低木状になり、翌年春その上端から新茎を出します。葉は枝頂に密生し、柄はなく肉厚、上面は無毛で光沢があります。
以前はキク属に入ってましたが、最近ではハマギク属として独立する見解が有力になっているといいます。属名はNipponanthemum、種小名がnipponicumで、日本固有種であることを示しています。
青森県の種差海岸や、茨城県の高萩海岸などの群落は野菊の景観としては最も見ごたえのあるものといわれています。写真はある薬草園でのものですが、この花が海岸の岩場に群生している姿をイメージするだけでその見事さが目に浮かびます。

セキチク・石竹(清少納言も好んだ)  

2014-10-24 07:44:14 | 植物観察記録
花壇にはやくも花をつけたセキチク:石竹(ネデシコ科ナデシコ属)の若苗が植えこまれていました。
野生のナデシコの代表がカワラナデシコ(‘10年7月17日記事)とすれば、栽培種の代表はこの石竹といえるでしょう。
中國の華北から揚子江流域の各省に分布、日本には平安時代に渡来した、高さ30㎝ほどの多年草で、ふつうは秋蒔きの1年草として育てられています。
細いが堅い茎を直立させ、線形で先端が尖った葉を対生します。茎の上部はまばらに分枝し、その茎頭に直径4~6㎝の白色や紅色の美しい花をつけます。筒状の萼葉先が5裂して尖り、萼の基部に4個の苞がつきます。花弁は5個、拡大部の先には浅い切れ込みがあります。
カラナデシコ: ・唐撫子とも呼ばれる石竹は、古くから栽培されて、多くの改良育成種があり、花壇を賑わせています。
これに対しカワラナデシコは、撫でたいくらい可愛い花ということで万葉の昔から歌にも詠われ、大きな改良をされることもなく、自然のままの姿で人々に愛されているようです。
清少納言は枕草子で、「草の花は 撫子。唐のはさらなり、大和のもいとめでたし」と日本の撫子よりも中国渡来の唐撫子をまず挙げています。
平成の園芸好きのご婦人たちも、次から次へと新しい改良種を求める傾向が強いそうですが、渡来まもない珍しい石竹を日本古来種よりも先に挙げた清少納言の心情とどこかで相通じるものがあるのでしょうか。

ナンバンカラスウリ:南蛮烏瓜(赤く熟す大きなカラスウリ?) 

2014-10-22 11:17:34 | 植物観察記録
薬草園の蔓にカボチャのように大きく丸いものが吊り下がっていました。
説明によるとナンバンカラスウリ:南蛮烏瓜(ウリ科)で、インド、東南アジア、中国南部、台湾などに野生または栽培される大形のつる性多年草で、互生する葉は3~5中裂の掌状で、基部に2~4個の腺体があります。雌雄異株で、7~9月に直径8㎝位の5弁花をつけます。
果実は秋に赤く熟し長楕円形~円形で長さ10~15cm、全面に小さな突起があります。果肉は完熟すると橙赤色~赤色で、やや甘みがあります。
東南アジアなどでは未熟果実は煮食野菜として、種子油は民間薬、根はサポニンを含み石鹸の代用となります。種子を乾燥したものが生薬「木鼈子」で、解毒、抗炎症作用があります。
一般に知られているニガウリ・ツルレイシ(ウリ科ツルレイシ属)と同属といますから、名前はカラスウリでもカラスウリ属ではないということになります。

ハバネロ(辛さ首位からすべる?)

2014-10-20 13:41:42 | 植物観察記録
ハバネロ
薬草園に辛さで知られるハバネロが赤い実をつけています。
辛さの単位で30万スコヴィルもあって世界で一番辛いとトウガラシとして、1994年にギネスブック登録されたといいます。
原産は中央アメリカから南アメリカで、アマゾン盆地あたりからカタン半島に伝わったとされ、ユカタンが世界の主要で山地となっています。
日本では東ハトが「暴君ハバネロ」を2004年に発売して以来、激辛スナックブームが起こり、名づけの面白さもあって急激に知名度が上がりました。
ところが、2006年12月にエスビー食品が開発した品種「SBカプマックス」が、2007年2月にはインド・バングラデシュ産のシネンセ種の一つブート・ジョロキアが世界一辛いトウガラシとしてギネスブックに認定されたり、ほかにもハバネロより辛いトウガラシの存在が明らかになっていますが、辛いトウガラシの代名詞として、ハバネラの名前は今も健在です。

タバスコ?
ハバネラの隣に熟していたトウガラシを係の人はタバスコといっていましたが、イタリー料理などの香辛料として有名なタバスコは、メキシコ・タバスコ州原産のキダチトウガラシの一品種チレ・タバスコを使った辛味調味料であって、トウガラシそのものの品種名ではなさそうです。

シュウメイギク:秋明菊・秋冥菊(素朴な原種に人気?) 

2014-10-18 18:06:48 | 植物観察記録
日本のシュウメイギク(八重咲き)
シュウメイギク:秋明菊・秋冥菊(素朴な原種に人気?) 10月18日
この時季、あちこちのお庭にキブネギク・貴船菊ともいわれるシュウメイギク:秋明菊・秋冥菊(キンポウゲ科イチリンソウ属)が咲いています。
キンポウゲ科ですが、秋に菊に似た花をつけることで秋明菊・秋冥菊の名があり、京都の貴船に多かったことで貴船菊とも呼ばれます。
本州から九州、中国に分布し、古い時代に中国から渡来し、多数の園芸品種があり、栽培品が野生化したものも見られます。
中国原産種は一重咲きで、実際に庭に植えられているのは、この基本種に近い一重咲きのものが多く植えられているのは興味深いところです。
日本で改良された品種は写真のような豪華な感じのする八重咲きで、その学名はAnemone hupehensis Lemine var. Japonica Bowles et Steamとなっています。
秋明菊や貴船菊という日本的な名前と、古都京都との連想もあってのことか、日本で改良されたデコラティブなものより、シンプルな中国の原種の方が好まれているように思えるのは、日本人が本来持っている素朴な心情と簡素を好む審美眼を示しているようで面白いところです。
中国原産種に近い一重咲き

ホオノキ:朴ノ木(直立する若い果実) 

2014-10-15 17:09:46 | 植物観察記録

少し前、澄み切った秋空高くホオノキ:朴ノ木(モクレン科モクレン属)が真っ赤な果実をつけていました。おなじみの木ですが、果実を見るのは、木になっているもの場合、多くは種子が長い糸状の珠柄でぶら下がっているものか。あるいは秋遅く地面に落ちた黒い残骸のようなものです。
もともとホオノキの果実は、袋果が集まった集合果で、長さ10~30㎝の長楕円形、袋果は赤褐色で中に長さ1㎝ほどの種子が2個入っていて、種皮の外層は赤色になります。
果実が熟すと、重みで枝先が垂れ下がるほどになり、そのためよく見る形は果実が下向きについているように見えます。
写真のホオノキの果実は、真っ赤でありながらまだよく熟していなかったらしく、天に向かって直立していて、珍しいものを見たような新鮮な印象でした。

ジェミニウイルス(近くにもあった) 

2014-10-12 10:36:18 | 植物観察記録
スイカズラの黄変葉

9月13日に、「ネイチャー誌にでた日本最古のウイルス情報」の副題で、サワヒヨドリ:澤鵯を取り上げました。
家の前のグリーベルトに勝手に植えておいたスイカズラ:吸葛(スイカズラ科スイカズラ属)の葉が、黄変していて、ウイルス病に罹ったヒヨドリバナ:鵯花(キク科フジバカマ属)の葉によく似ていることに気づきました。
調べてみると、やはりこのウイルスは、野外でスイカズラに感染することが報告されているとありました。
このウイルスの正体は、植物に感染するジェミニウイルスの一種で、ヒヨドリバナ葉脈黄化ウイルス(Eupatorium yellow vein virus EpYVV)と名付けられているそうです。
日当たりによいところでは、被害植物の力が強く、ウイルスに感染しても枯れてしまうことはないといいますが、庭にあるほかの草木に感染するかもしれないと思い、念のためこのスイカズラの病変部を慎重に切り取って焼却し、鋏や手も消毒しておきました。
ヒヨドリバナの黄変葉

クダモノトケイソウ:果物時計草(花もなかなか)

2014-10-11 16:43:41 | 植物観察記録
春先、園芸店でパッションフルーツ:和名:クダモノトケイソウ(果物時計草)(トケイソウ科トケイソウ属)の苗を見つけ、日よけにでもなるだろうとプランターに植えて育てていましたが、10月になっても花が見えないので、果実はあきらめて、カットしようとしたとき、高くなった蔓の先端に花が咲いているのに初めて気づきました。
トケイソウの花に似ているのは当然ですが、よく見ると、トケイソウでは青紫色の副萼が、直線で放射状になっているのに対し、クダモノトケイソウでは白い先端が繊維状に縮れていて、なかなか綺麗です。
クダモノトケイソウは、500種もあるというトケイソウの仲間の1種で、アメリカ大陸の亜熱帯地域を原産とし、果実が食べられるのでクダモノトケイソウの名があります。
トケイソウの別名パッションフラワーはあまり知られていませんが、クダモノトケイソウの方は、むしろ別名のパッションフルーツで知られています。そのpassionですが、原義は、苦しむ(pass)、こと(ion)で、そこから“キリストの受難”を意味する言葉となり、さらにはトケイソウの花の房柱を十字架、3つに分かれた雌蕊を釘、副花冠を荊冠、5枚の花弁と萼片を合わせて10人の使徒、巻きひげを鞭、葉を槍に見立てて、キリスト受難の花、信仰の象徴になったといいます。
まだ味わったことのないこの果実ですが、生のままスプーンですくって種ごと食べることが多く、ジュースやジャムにもなるそうです。最近は認知症や歯周病の予防に薬効があるとかで注目を集めているとの話もあります。
秋も深まり、果実を期待できそうもないので根元からカットしましたが、屋内で冬越しができるというのでトライしてみるつもりです。
トケイソウの花

クダモノトケイソウの果実は’11年1月23日に取り上げています。

クコ:枸杞(花と実を同時に見る) 

2014-10-09 17:19:19 | 植物観察記録
クコ:枸杞(ナス科クコ属)が枝いっぱいに赤い実をつけていました。よく見ると別の枝に花も咲いています。
北海道から琉球、台湾、朝鮮、中国の温帯から亜熱帯に分布し、高さ1~2mになる落葉小低木で、原野、川べり、道端などにふつうに生えていますが、果実はクコ酒、葉はクコ茶などいろいろに利用できるため、栽培されることもあります。
根元からよく分枝し、枝は弓状に曲がって垂れ下がります。
花期は7~11月と長く、今の時季、淡い紫色で直径1㎝ほどの花と、長さ2㎝ほどの赤く熟した楕円形の果実が同時に見られることは珍しくありません。