むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

ヒノキゴケ:桧苔(別名の方がよくわかる) 

2014-09-24 08:28:58 | 植物観察過去ログについて
四国八十八ケ所、第45番岩屋寺は、切り立った水成岩を背にする山寺です。
老年には少々厳しい山道を登っていると、ふわふわした緑色の苔が目につきました。ヒノキゴケ:桧苔(ヒノキゴケ科)です。
本州から琉球にかけての比較的暖かい地方の林床にしばしば大きい群落をつくる美しい大形の苔です。
針状の細い葉を持ち、茎の上部は動物の尾のように曲がります。この形からイタチノシッポという別名があります。
京都の苔寺にも植えられていますが、街なかで育てようとしても茶色くなって枯れることが多いといいます。

カモノハシ:鴨の嘴(“鴨の嘴の”2段活用) 

2014-09-23 11:04:07 | 植物観察過去ログについて
center>大津市瀬田公園の池畔にカモノハシ:鴨の嘴(イネ科カモノハシ属)が花穂を立てていました。
この変わった名前は、花序が単純な穂状に見えるのに、実際には小穂が密集した穂が2対ありこれがぴったりくっついています。この変わった名前は、花序の形が鴨の嘴のようだというところからきていますが、同じ名前の卵生の哺乳類のカモノハシの嘴は本当に鴨の嘴に似ているのに比べ、こちらはそれほど似ているとも思えず、少し無理をした名づけのようです。魚と樹木で同じ名前にゴンズイなどもありますが、植物が動物と同じという珍しい例です。
カモノハシは、主として各地の海岸の砂地や湿地に生える多年草で、高さ60㎝ぐらいで束生し、下部は節で曲がります。
花は夏から秋、長さ5㎝ほどの紫赤色を帯びた2個の穂状花序をつけ、小穂は6mmくらい、芒はありません。
雌性期の小穂は、紫色のブラシのような柱頭がのび出ます。
同じ場所に白い柱頭を持つ小穂もありました。初めは白く、熟すと紫色になるという話もあり、両者はオナジカモノハシのものと見立てました。

イトイヌノヒゲ:糸犬の髭(長い花茎を犬の髯に見立てた) 

2014-09-21 20:15:56 | 植物観察過去ログについて
三重県立上野森林公園の湿地にイトイヌノヒゲ:糸犬の髭(ホシクサ科ホシクサ属)細長い花茎の天辺に小さな花をつけていました。日本各地の水田や湿地に生える1年草で、葉は束生して、長さ10~15㎝、
7~10の脈があります。
花期は8~9月、高さ5~30㎝の花茎の先に白いちいさな頭花を1個つけます。頭花は直径3~7㎜で、白っぽい緑色の総苞片で囲まれ、頭花には雄花と雌花がまじってつきます。
和名はイヌノヒゲ(にくらべて花茎が糸状に長いことからきています。
頭花より総苞片が長いニッポンイヌノヒゲは、‘11年9月13日に取り上げています。
イトイヌノヒゲは非常に変異が多く、やせた土地に生えたものは小型で数も少ないといいます。

数日後滋賀県の瀬田公園で見たのは、上野森林公園のより大きい花でした。両者は栄養に違いによる単なる変異なのか、あるいは別種なのかわからずじまいです。

ミズギボウシ:水擬宝珠(仲間で最も細い葉) 

2014-09-17 08:39:30 | 植物観察過去ログについて

三重県立上野森林公園の湿地帯に咲いていたミズギボウシ:水擬宝珠(ユリ科ギボウシ属)です。
本州中部以西の湿地や水際などに生える多年草で、葉身は線状倒披針形、長さ17~30㎝、幅1.7㎝。別名をサジギボウシ、コバノギボウシといわれるくらいで、日本のギボウシ属の中では最も狭い葉を持ちます。
花茎は高さ40~60㎝となり、長さ3.5~4.5㎝の淡紫色で筒状鐘形の花を3~5個横向きにつけます。
花の内側に濃紫色のすじがあり、花の基部の苞は舟形にくぼみます。
湿地の草に隠れて咲いてるミズギボウシの葉は撮れなかったので、水辺の陸地に咲いているのを撮りましたが、発育状態が悪いのか、葉の細さはわかりましたが、長さは短くて、基部が翼状になって葉柄に流れるという、本来の形ではありませんでした。


ミズトンボ:水蜻蛉(湿地に咲く蜻蛉と千鳥)

2014-09-16 07:00:32 | 植物観察過去ログについて
三重県立上野森林公園の湿地帯にミズトンボ:水蜻蛉(ラン科ミズトンボ属)が咲いていました。
日当たりのよい湿地に生える多年草で、茎は三角形で高さ40~70㎝、葉は茎の下に数個ついて長さ5~20㎝の線形、茎の上部では鱗片状になります。
7~9月、茎の上部に淡緑白色の花を多数つけます。
図鑑では花の構造は、背萼片は円心形、背萼片はねじれた倒卵形、側花弁は長さ2~3㎝で3裂して十字形になり、側裂片はふつう斜上するとあり、写真で見るとそうかなと思えるくらいの複雑な形です。
唇弁とともに名前の由来である距は約1.5㎝、先端は球状にふくらむのは、明らかに見てとれます。
別名にアオサギソウがあります。

タチカモメヅル:立鴎蔓(湿地に咲く)

2014-09-15 10:23:06 | 植物観察過去ログについて

三重県立上野森林公園の湿地帯にタチカモメヅル:立鴎蔓(ガガイモ科カモメヅル属)が咲いていました。
湿った草地や湿地などに生える多年草で、 茎は下部が直立して、先はややつる状になって長さ40~100cm、わずかに曲がった毛があります。
葉は対生し、長さ3~11cmの長楕円状披針形でやや厚くて、下面に短毛が生えます。
花期は7~9月、上部の葉腋に集まってつけ、暗紫色で径1㎝たらず、花冠は無毛、 副花冠は卵状三角形で蕊柱よりやや短くなります。
雄蕊と雌蕊が合生してずい柱となるなどは類種と変わりません。花色には変化が多く、淡黄緑色のアオタチカモメヅルなどその他の品種に分けられています。
カモメヅル属には、このほかオオカモメヅル、コカモメヅル、コバノカモメヅル、アオカモメヅルなど多くの種類がありますが、“カモメヅル”そのものという品種がないのは不思議です。

ソライロタケ:空色茸(鮮やかな青空の色) 

2014-09-14 18:32:01 | 植物観察過去ログについて
三重県立上野森林公園で珍しいきのこがあるというので、事務所の方に案内してもらいました。
枯れ葉の下にひっそり姿を出していたのは小さいソライロタケ:空色茸(イッポンシメジ科)でした。
その名のとおり、きのこには珍しい鮮やかな空色です。
夏から秋にかけて林地に発生するやや小型のきのこで、あまり多くは見られません。
形態はキイボカサタケなどとほぼ同様で、傘は円錐形~円錐状鐘形、頂端に小さい乳首状の突起があります。
図鑑では食毒は不明もしくは食用にされないきのこに分類されていました。この小さくて美しい空色のきのこを食べようとする人はまずいないでしょう。
この美しい空色ですが、傷ついた部分は黄変するといわれて、おっかなびっくりで触らないように気をつけながら、なんとか撮影できたのがこの一枚です。

サワヒヨドリ:澤鵯(ネイチャー誌にでた日本最古のウイルス情報) 

2014-09-13 10:01:26 | 植物観察過去ログについて


三重県上野森林公園の湿地にサワヒヨドリ:澤鵯(キク科フジバカマ属)が咲いていました。
各地の日当たりのよい湿地や湿った草地に生える多年草で、ヒヨドリバナに似て、ふつう湿地に咲くのでこの名があります。
高さは40~90cm、茎や上半部の葉には縮れた毛が多く、対生する葉は長さ6~12㎝、幅1~2㎝の披針形で、明瞭な三行脈があり、ほかの仲間に比べて葉が細く、葉柄がないのが特徴です。
8~9月、茎の先に淡紅色の頭花をびっしりと集まってつきます。
ところで、万葉集にでる孝謙天皇の歌に、ウイルスによるサワヒヨドリの葉の病変が出ているという研究が、科学雑誌ネイチャーの2003年4月版に掲載されたことでこの草が一躍話題になりました。
「天皇太后共 幸於大納言藤原家之日 黄葉澤蘭一株拔取 令持内侍佐々貴山君 遣賜大納言藤原卿并陪従大夫等御歌一首 命婦誦曰」という副詞に続くその歌は、
“この里は 継ぎて霜や置く 夏の野に わが見し草は もみちたりけり”  巻19―4268で
意味は、この里は、いつも霜が降りるのでしょうか。夏の野で私が見た草は、もう もみじ色でした。ということで、澤蘭(サワアララギ)は今のサワヒヨドリ、黄色くなった葉はウィルス病にかかった葉だというのです。このウイルスの正体は、植物に感染するジェミニウイルスの一種で、ヒヨドリバナ葉脈黄化ウイルス(Eupatorium yellow vein virus EpYVV)と名付けられているそうです。

鋭い観察眼でウイルス病を詠いこんだ1首が、1200年以上も後に、世界的権威の科学雑誌を飾ることになろうとは、とかくの批評もあった孝謙天皇(重祚して称徳天皇)としてもその成り行きに驚いているに違いありません。

参考:

ウイルス病になった類種ヒヨドリバナの葉

ヤハズアジサイ:矢筈紫陽花(葉でわかるアジサイ) 

2014-09-09 10:20:37 | 植物観察過去ログについて
四国遍路の中でも、老人にはすこしきつい岩屋寺への坂道にヤハズアジサイ:矢筈紫陽花(ユキノシタ科アジサイ属)がたくさん生えていました。
本州紀伊半島、四国、九州の山地に生える落葉小低木で、樹皮ははげやすく、まばらに分枝します。
対生する葉は長さ10~20cm、葉の上部に浅い切れ込みがあるのが特徴で、これを矢筈に見立ててこの名があります。
7~8月、枝先に小さな両性花多数と白い装飾花をつけます。
アジサイには自生、園芸種を問わず多数あって、花を見ても区別が難しいものですが、このヤハズアジサイは、葉の形を見るだけでそれとわかるアジサイです。

ヤマトシジミ(愛の花園) 

2014-09-07 09:01:57 | 植物観察過去ログについて

交尾したままのヤマトシジミが、庭のルドベキア・タカオ(’08年8月5日記事)に恍惚状態?でとまっていました。
昆虫に詳しい人の話ではヤマトシジミは大阪ではごくありふれたシジミ蝶ですが、食草はカタバミ類だそうです。この花にとまっていたのは採餌のためではなくもっぱら愛の花園としていたということになります。
ちなみに、大阪で見られるのは、ヤマト、ツバメ、ルリそしてまれにはシルビアだそうです。