むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

コゴメイ:小米藺(やはり畳は藺草)

2016-04-30 05:54:05 | 植物観察記録

淀川右岸高槻鵜殿の下流側に、ヨシ再生のために、淀川の水面に近づくように切り下げられた広い土地があります。切り下げられただけに、湿地状になった部分があり、長年地中にうずまっていた種子が、切り下げにより地表に出て芽生え、絶滅したと思われていた希少種が復活したといううれしい話も聞きます。
一方、様々な外来種も抜け目なく進出してきています。その一つで、目立っているのがコゴメイ:小米藺(イグサ科)です。
図鑑では1990年ごろに、関東、中部、近畿の沿海地の河川敷で発見され、その後各地に急速に分布を拡大した、原産地と学名が不明な、外来多年草となっています。
茎の高さ80~150㎝、円筒形で多数の縦筋があり、葉は葉鞘のみで葉身はなく、葉鞘の上部で直径2~5㎜になります。
畳に使われるイ(藺草)は、灯心草といわれるほどで、茎の内部に白い髄が詰まっており、また全体にさわやかな香りがあります。藺草で作った畳の柔らかいクッション性と香りが、「なんとかと畳は新しいのがいい」といわれるゆえんです。
ところが、コゴメイの髄は階段状で空隙が多く弾力性はありません。いい香りもしません。
もちろんコゴメイは畳にはなりませんが、改めて「畳は藺草に限る」です。

カサスゲ:笠菅(今ではカサスゲでない菅笠も) 

2016-04-29 05:53:11 | 植物観察記録

淀川右岸河川敷の鵜殿の水路脇にカサスゲ:笠菅(カヤツリグサ科スゲ属)が穂を出していました。
北海道から九州までの平地に分布し、湿地や池の浅いところに生育して高さは1m程にもなります。根は水中の泥に伸び、太い地下茎を横にはわせて大群落を作ります。葉はかたくて細長く幅4~8㎜の線形です。
晩春から初夏にかけて、花茎を真っ直ぐに伸ばし、その先端には茶褐色で細長い棒状雄小穂、その下に円柱形の雌花の小穂を数個つけます。
かつては様々な民具などに用いられ、菅笠や蓑、特に笠は本種で作られることが多く、和名カサスゲ(笠菅)もそのことに由来します。
ただ、カサスゲの生育地が減っていることなどからか、今では頭にかぶる三角形の笠を一般的に菅笠と呼びますが、必ずしも材料としてカサスゲが使われているわけでもないようです。

コウヤワラビ:高野蕨(柔らかいシダ) 

2016-04-28 08:35:26 | 植物観察記録

4月の淀川右岸河川敷の鵜殿にコウヤワラビ:高野蕨(オシダ科コウヤワラビ属)が、柔らかい葉を伸ばしていました。
湿地に生える夏緑性のシダ植物のひとつで、独特の羽片の幅が広い栄養葉と、球形の胞子嚢群を含む小羽片が数珠のように並ぶ胞子葉をつけます。
栄養葉の葉柄は長さ8~30cm、 葉身は広卵形~3角状楕円形、長さ8~30cm、幅8~25cm、切れ込み方は変化に富み、全縁から全裂までさまざまな状態があります。
シダ類としては珍しく葉面が広くて柔らかな感じがします。
高野の名がついていますが、高野山には生育していないそうで、名前の由来については不確かです。
一面に生えている若緑の柔らかそうなコウヤワラビですが、食用にするという情報は見つかりませんでした。


ノウルシ:野漆(複雑な花の構造)

2016-04-27 10:05:24 | 植物観察記録
開花前開花時
いぼ状突起のある子房

早春の淀川右岸鵜殿の葭原のあちこちにやわらかい黄緑色の群生がみられます。
ノウルシ:野漆(トウダイグサ科トウダイグサ属)です。トウダイグサ科とは、独特の盃状花序が昔の灯明台に似ているところから、また和名野漆は、茎を切るとウルシのように白い乳液が出ることからきています。ウルシのように葉に触れるだけでかぶれることはありませんが、乳液には毒が含まれていて、
かぶれ、皮膚炎、嘔吐、下痢などを引き起こすといいます。
花時の高さは30~40㎝、直立する茎に葉を互生し、茎頂に倒披針形の5枚の葉を輪生し、それぞれの葉腋から放射状に枝先に盃状花序をつけます。花序の基部の卵円形の総苞葉は鮮やかな黄色で花びらに見えます。
その葉脇からでた5本の散形枝の先に杯状に3つの総包片をつけ、各総苞片の腋から細枝を出し、その先に更に2つ苞葉を出し、またその腋から各々細枝を出し、花には幅約2㎜の広楕円形の腺体があり、1本の雄蕊からなる多数の雄花が頂生し、淡黄色の1本の雌蕊からなる雌花には、いぼ状の突起をつけた子房があり、3つに膨らんでいます。全体でみると1つの総苞の中に6つの“花“が咲いているように見えるという複雑な構造です。
環境省RDB(2007年)では準絶滅危惧種NTになっていますが、河川敷などの生育適地が減少しているためで、近畿地方でいうと鵜殿や琵琶湖畔などで見る限りノウルシそのものの繁殖力は結構強いように思えます。


トネハナヤスリ:利根花鑢(個体数増加ででRDB格下げ?) 

2016-04-26 20:53:31 | 植物観察記録

久しぶりで川右岸鵜殿の葭原を歩きました。
この季節鵜殿で見るべき植物の筆頭がトネハナヤスリ:利根花鑢(ハナヤスリ科ハナヤスリ属)です。
シダ植物で、名前の由来である棒やすりのような胞子嚢を包むようにして、光背のような葉を一枚だけつけます。
夏緑シダのなかまですが、葦が茂る6月ごろには姿を消すそうで、つかの間の春の日光を満喫しているかのようです。
トネハナヤスリは、いまでは淀川の鵜殿以外には、利根川支流の渡良瀬川の遊水地など利根川筋くらいのみに生育するという希少種だとして、環境省のレッドデータブックのカテゴリーで絶滅危惧品種ⅠA類に指定されていました。
鵜殿では群落地も個体数も以前に比べてずいぶん多くなっている気がしました。そういえば生育地は限定されているものの、渡良瀬川遊水池でも個体数が激増していて、絶滅の危険性が薄れたということでRDBでも絶滅危惧1AからⅡvuに格下げ?されたという情報もあります。
柔らかい葉はドレッシングをかけてそのままサラダにして食べる話もあります。どんどん増えればそんな時代も来るのでしょうか。

トウダイグサ:燈台草(見事な群生) 

2016-04-11 10:18:39 | 植物観察記録

高槻芥川沿いの田んぼ一面にトウダイグサ:燈台草(トウダイグサ科トウダイグサ属)が見事なまでに生い茂っていました。
全体の姿が明かりをともすのに使った燈台に似ていることからこの名がある2年草で、日当たりのよい道端や畑、土手などに生えますが、広い田んぼ全面にこれほど密生しているのを見るのは初めてです。
高さは10~30㎝、花期は3~5月、茎の先に放射状に枝をだし、黄緑色の総苞葉の中心に小さなつぼ型の花序をつけます。
スマホの写真では群生の見事さが表現できなかったのが残念です。

カキドオシ:垣通し(群で可愛い) 

2016-04-08 05:33:35 | 植物観察記録


田んぼの土手に薄紫色の花の絨毯ができていました。カキドオシ:垣通し(シソ科カキドオシ属)です。野原や畑、みちばた、庭の隅など、どこにでも普通に見られる多年草ですが、これだけまとまって咲いていると、また別の趣があります。
高さ5~25㎝の茎は花のころは直立し、花が終わるころには倒れ、節から根をだし垣通しの名のとおり長いつる状になって伸びてゆきます。
葉は対生し、幅2~3㎝の腎臓状の円形で鈍い鋸歯があります。
4~5月、葉の付け根に淡紫色の唇形花を1~3個つけ、花の下唇には濃紫色の斑点があります。
夜泣き、引付など幼児の癇の虫をとる民間薬に使われたことからカントリソウ(癇取草)の別名があります。

タムシバ(農作業の開始を告げた) 

2016-04-07 11:42:52 | 植物観察記録

南北に長い高槻市は少し北へのぼると標高も300mを超え、市街地とずいぶん気候が変わり、冬などは町では雨でも雪ということも普通です。このためかこの地区ではいわゆる日本海要素的な植物もよくみられます。
ドライブしていると、冬枯れした林の中にひときわ目立つ白い花をつけた木がありました。
タムシバ(モクレン科モクレン属)です。葉をもむと強い香りがあり、噛むと甘いところからニオイコブシ、またカムシバなどの名があり、タムシバの名もこれが転訛したといわれています。
日本海側の多雪地帯に多く、高さ10mほどになる落葉高木で、雪解けとともに開花するので、昔は農作業の時期を知らせる暦代わりに利用され、農諺木といわれています。このように使われたのがほかにもコブシやヤマザクラなどがあります。
コブシとはよく似ていますが、コブシは花の下に葉があるのに対しタムシバはなく、タムシバの葉は薄くて裏面が白っぽいなどで区別されます。

バイモ:貝母(下から覗いて別名を納得)

2016-04-06 16:54:20 | 植物観察記録

バイモ:貝母(ユリ科バイモ属)が咲いています。
中国原産の多年草で、日本には薬用植物として入り、鱗茎を鎮咳、止血、解熱などの薬用に利用します。和名貝母はこの仲間の鱗茎の中国名からきています。
高さ30~80㎝、葉は2~3個ずつ輪生し、長さ7~15㎝の広い線形、上部の葉の先が巻ひげのようになっています、ふつうは巻ひげに頼らず自立しますが、ときに先端が他物に巻き付いていることがあります。
花期は4~5月、花は長さ2~3㎝の鐘形で、花の内面に紫色の網目の紋があることからアミガサユリ:編笠百合の名があります。


アーモンド(花もまた良し) 

2016-04-04 09:32:48 | 植物観察記録

植物園にアーモンド(バラ科サクラ属)の花が咲いていました。
食べ物としてのアーモンドが知られている割には、桜そっくりで桜よりより大型の花を知る人は多くないはずです。
高さ5~6mぐらいになる落葉高木で、桃、杏、梅などに近い植物で、開花はサクラより少し早いようです。
桃や梅は果肉を食べますが、アーモンドは果肉が薄く、ナッツやチョコレートの中に入り食用とされるのは、種子の中に一つずつ入っている「仁」の部分で、日本語で言えば扁桃といわれる部分です。
アメリカ、カリフォルニア州が世界でも最大の生産地となっています。