むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

優曇華の花(実は虫の卵) 

2016-10-29 07:51:05 | 植物観察記録

垣根(プリペット:西洋イボタノキ)の刈り込みしているとき、葉裏に優曇華(うどんげ)の花?が咲いているのを見つけました。
優曇華を広辞苑でひくと、優曇は梵語のudunnbara(優曇波羅)の略称で瑞祥の意とあり、
①クワ科イチジク属の落葉高木、仏教では3000年に一度花を開き、その華の開くとき金輪王が出現するといい、また如来が世に出現するとつたえる。
②(3000年に一度開花するということから)きわめてまれなことのたとえ
③芭蕉の花の異称
④クサカゲロウの卵、花のように見える。吉兆または凶兆とする。
とありました。
まれに町家などに「優曇華の花が咲きました、見てください」といった札がかかっているのを見ますが、これは④のクサカゲロウの卵のことで、雌が腹の先から葉面に一滴の液を落とし、腹を持ち上げるとそれが糸状に伸びて固まり、その先端に卵を生みます。 同じ場所に何本かまとめて産卵しますが、糸が細いので卵が空中に浮遊しているように見えます。そして、古く日本ではこれが植物と誤認され、めったにない珍しいものとして優曇華の名がついてと思われます。
落語の仇討の場面などで、「ここで逢うたは盲亀の浮木、憂曇華の、花待ち得たる今日の対面、いざ立ちあがって、親の仇敵だ尋常に、勝負、勝負」などというせりふがあることも、優曇華は極めて珍しいという意味でしょうが、クサカゲロウの卵は極端に珍しいわけではなく、この虫には明かりに集まる性質があり、人家の近くに産卵することがおおく、見つけた町の人が珍しいと吉凶に結び付けたのでしょう
我が家の垣根に咲いた優曇華の花、さて吉か凶か気になるところです。


ゴマナ:胡麻菜(葉がゴマに似る?)

2016-10-28 09:24:21 | 植物観察記録
斑尾高原の希望湖(むかごの高槻’016年10月27日記事参照)の土手にゴマナ:胡麻菜(キク科シオン属)が群れ咲いていました。
少し高い山地の草原に生える多年草で、葉がゴマの葉に似ているというのでこの名があるといわれていて、人気のある山菜の一つでもあります。
高さは1~1.5m、茎や葉に細かい毛があり、さわるとザラザラします。
花期は9月~10月、茎の上部に直径1.5㎝ほど、白色の舌状花の頭花をびっしりとつけ、秋の草原でよく目立ちます。

クサレダマ:草連玉(名前の由来はスペイン語) 

2016-10-27 15:57:43 | 植物観察記録

妙高高原いもり池の遊歩道にクサレダマ:草連玉(ヤブコウジ科オカトラノオ属)が茶色の実をつけていました。
山地の湿った草地に生える多年草で、7~8月、茎の上部に黄色い花を多数つけます。
名前を聞いたとき大概の人は“腐れ玉”と思いがちですが、マメ科のレダマという木に似た草ということからついた名前といいます。
そのレダマは日本語では連玉と書きますが、もともとはスペイン語でRETAMAと書き、地中海沿岸原産の観葉植物で、マメ科の落葉低木であり、夏から秋にかけエニシダに似た黄色の蝶形花を開き、細長い莢を生じます。
スペイン語のRETAMAが連玉となりそれが日本のクサレダマ(草連玉)となったという奇妙な変化も、この茶色い果実をたくさんつけている草を見ていると、結構よくできた名前だという気がしてきました。

ヤエガワカンバ:八重皮樺(樹木では珍しい絶滅危惧種) 

2016-10-26 12:19:47 | 植物観察記録


東山魁夷が大作「静映」を描いたという斑尾高原の希望湖(のぞみこ)湖畔に、大きい看板が立った一本の高木がありました。
ヤエガワカンバ :八重皮樺(カバノキ科カバノキ属)は、雌雄同種の落葉高木で高さは15~17mになります。
わが国での分布域は、山梨県・長野県・群馬県・埼玉県と北海道の十勝・オホーツク・日高管内で、多くは単木や小林分として分布しますが、比較的珍しく、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧(NT)に分類され、希望湖畔のも飯山市の天然記念物に指定されています。
ヤエガワカンバ(八重皮樺)の名は樹皮が幾重にも剥がれることからきており、斧が折れるくらい堅いのでコオノオレの別名もあって、材が柔らかいカバノキの仲間では珍しいといえます。

オニツルウメモドキ:鬼蔓梅擬(ウメモドキの高所型) 

2016-10-24 07:25:24 | 植物観察記録

戸隠高原鏡池のほとりにオニツルウメモドキ:鬼蔓梅擬(ニシキギ科ツルウメモドキ属)が実をつけていました。
北海道~中部地方以北の山野に生える落葉つる性木本で、雌雄異株。葉は互生し、長さ5~10cmの倒卵形~楕円形で先は急にとがり、鈍い鋸歯があり、葉裏脈上に畝状の隆起があります。
5~6月、葉腋から短い集散花序を出し、黄緑色の小さい花を10数個つけます。花弁は5個あり、卵状長楕円形となります。
果実の先端には花柱が残存し、10~11月、黄色く熟すと3つに裂け、中の黄赤色の実が現れます。
最初オオツルウメモドキかと思いましたが、寒地の亜高山地帯であること、葉の先端がとがり、葉裏脈上の畝状の突起があるということでオニツルウメモドキと見立てました。

キバナアキギリ:黄花秋桐 (葉も花もキリににる?)  

2016-10-23 10:58:20 | 植物観察記録

妙高高原にあって日本の滝百選に選ばれている苗名滝への道端にキバナアキギリ:黄花秋桐(シソ科アキギリ属)が咲いていました。
秋に黄色い花が咲き、葉形がきりに似ているから、あるいは花の形がキリに似ているからこの名がついているといいます。
山の木陰に生える多年草で、葉は3角状ほこ型、茎は四角、高さ20~40cm、全体に長い毛があります。
花冠は2.5~3.5cm、雌蕊の花柱は長く花冠から出ます。雄蕊4個のうち2個が完全で、2個は退化してごく小さく目立ちません。アキギリ属は、2個の葯隔が発達して花糸のようになり、1個が花粉を出さない不完全な葯になっているのが特徴だそうですが、写真ではこの複雑な構造はよく分かりません。
キバナアキギリで葉の鋸歯が鋭いのは、それを琴柱に見立ててコトジソウの別名があります。植物園などでは、葉が3裂した変種のミツデコトジソウというのも見られます。

メギ(コトリトマラズ):目木(小鳥止まらず)・(赤い実が目を引く) 

2016-10-20 19:25:53 | 植物観察記録

色彩が乏しくなった戸隠森林植物園の遊歩道で赤い実が目立つのはメギ:目木(メギ科メギ属)でした。
葉や木を煎じて目薬にしたことからこの名がありますが、その鋭いトゲからコトリトマラズ、ヨロイドオシなどの別名もよく知られています。
本州関東以西、四国、九州の山野などに生える落葉低木で、多数分枝し高さ1~2mくらい、平たい樹形を作ります。稜のある枝に葉を密生し、葉の鋸歯が変化したといわれるトゲがあります。(‘10年2月17日記事)
葉は新枝に互生し、とげの付け根の短枝に束生します。4月、短枝の先に黄緑色の花をつけ、果実は10~11月、長さ7~10mmの赤色長楕円形で、先端には太い花柱が残ります。

コバノフユイチゴ:小葉の冬苺(小葉より丸葉がわかりよい) 

2016-10-19 17:55:43 | 植物観察記録

4年前戸隠森林植物園の遊歩道沿いのいたるところに花を咲かせていたコバノフユイチゴ:小葉の冬苺(バラ科キイチゴ属)が、10月中ごろの同じ場所で赤い実をつけていました。
山地の林内などに生えるつる性の常緑小低木で沿海地では見かけず、観察ポイントとして芦ノ湖、白馬猿倉、四国では石鎚山や横倉山周辺並んで中部地方では戸隠山山麓と出ていて、戸隠でやたらと目についたことに納得しました。
茎や枝に白色の毛と上向きの刺があり、互生する円形の葉の縁には鈍鋸歯があります。
花は5~7月、枝先に直径2cmほどの白色の花を1個つけます。萼片は狭卵形で、外面に棘状の毛がありふちは櫛状に浅く切れ込みます。
果実は集合果で、8~9月に赤く熟し食べられます。株は一面にあるのに今回見た果実は少なく探せば見つかるといった程度でした。果実としては時季が遅かったのでしょう。
花も実も冬に関係ないのにフユイチゴの名がついているのは不思議です。別名のマルバフユイチゴの方がすんなりと入ってきます。
4年前の7月に見たコバノフユイチゴの花は'12年7月30日記事で取り上げています。



ズミ:酢実(秋景色の中目立つ赤い実)  

2016-10-18 15:38:17 | 植物観察記録



切れ込みのある葉が混じる

14、15、16日と紅葉を求めて戸隠、妙高を中心とする北信五岳方面へ旅をしました。10年以上も前に見事な紅葉を見た同じ日、同じ場所に行ったのですが、あいにく今年の夏から秋口にかけての高温と冷え込みの遅れで、紅葉も大きく遅れていて残念でした。そのかわり3日間ともものすごい好天で、すべての山々がくっきりと望めてこれは大満足でした。
植物観察については時季的にあまり収穫がありませんでしたが、そのいくつかを取り上げて見ます。
戸隠森林植物園や妙高高原いもり池周辺のあちこちで見られたのは、ズミ:酢実(バラ科リンゴ属)の赤い実でした。
コナシ、コリンゴ、ミツバカイドウなどの別名がある山地の日当たりのよいところに生える落葉小高木で、よく枝分かれして高さ5~8mになり、枝に棘があります。
葉は長さ3~10cmの長楕円形または卵形長楕円形ですが、3~5つに大きく切れ込むこともあります。
花期は5~6月で、花は直径2~3.5㎝、3~7個ずつ束になってつき、つぼみは濃いピンクで、開くと白くなります。
果実は直径5~10mの球形で、秋、9~10月に赤く熟します、実は葉が落ちたあとも木に残りよく目立ちます。
樹皮を煮出して染料や絵の具にされることから、ズミの名は「染み」から変化したともいわれ、またリンゴの台木としても用いられます
果実が黄色のものをキミズミといいます。('06年11月20日記事)


スミの花(蓼科高原にて)



カナクギノキ:金釘の木(多いのは雄花)

2016-10-14 06:58:23 | 植物観察記録

雌株・果実と花芽が同時に見える


雄株・花芽が多い

高槻川久保渓谷の最上流あたり、伐採後植樹されずに残った傾斜地に、どういう訳かカナクギノキ:金釘の木(クスノキ科クロモジ属)がびっしり生えて実をつけるくらいの大きさに育っています。
山地に生える落葉高木で、高さは10m~15mほどになり、低木が多いクロモジ属のなかで珍しく高木になります。
互生する葉は長さ6~15cm、幅2~4cmの長楕円形で表面は無毛、裏面は白っぽくなります。
雌雄別株で、花期は4月、葉が開くのとほぼ同時期に淡黄緑色の小さな花を固まってつけ、果実は直径5~7mmの球形で秋に赤く熟します。
この時期、真っ赤な果実のよこに、来春の花芽が育ってています。雄株と雌株の花芽を比べてみますと、当たり前のことでしょうが、圧倒的に雄株の花芽の方が多くついていました。
カナクギノキの材は小楊枝や細工物に使われますが、弱いので釘に使われることはありません。カナクギの名は金釘ではなくて樹皮の模様から鹿の子木が訛ったのではないかといわれています。