むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

ヒメキンミズヒキ:姫金水引(姫は小ぶり)  

2017-09-30 16:09:17 | 植物観察記録

 

                ヒメキンミズヒキ

日陰の山道にキンミズヒキに混じってヒメキンミズヒキ:姫金水引(バラ科キンミズヒキ属)が咲いていました。

同じところに咲いていると両者の違いがよくわかります。

ヒメキンミズヒキは名の通りキンミズヒキに比べて全体に小ぶりで、主な区別点は以下のとおりです。

種 別

      葉 

花 弁

雄しべ

小葉

形・鋸歯

ヒメキンミズヒキ

3~5

楕円・鈍鋸歯

小・細幅

約5~6本

キンミズヒキ

5~11

大・鋭鋸歯

大・広幅

約12本

 

               キンミズヒキ

タデ科のミズヒキは紅白の花穂をミズヒキに見立てたのはよくわかりますが、科が異なるキンミズヒキ、ヒメキンミズヒキの名は、形からしても少し無理があるようにも思えるのですが。


ヤナギイノコヅチ:柳猪子槌(細い葉で区別) 

2017-09-25 10:54:29 | 植物観察記録

山道を歩いていると、葉巾の狭いイノコヅチに出会いました。

細い葉がそのまま名前になったヤナギイノコヅチ:柳猪子槌(ヒユ科イノコヅチ属)です。山地の林内に生える高さ90㎝ほどの多年草で、葉は対生し、長さ7~20㎝、幅1~5cmの披針形で、先は次第に細くなって鋭く尖ります。表面はなめらかで光沢があります。

よく見かけるが区別のしにくいヒカゲイノコヅチとヒナタイノコヅチがありますが、こちらは葉幅を見れば容易に区別できます。

猪子槌の名は太い茎の節を猪の子の膝頭に見立てたものといわれています。漢名も牛膝でよく似た連想です。

          葉巾が広い(ヒカゲ)イノコヅチ


イヌガンソク:犬雁足(漢字で見ても??) 

2017-09-22 13:28:54 | 植物観察記録

山道を歩いていて、案内の方から足元のシダをイヌガンソク(イワデンダ科コウヤワラビ属)と教えてもらいましたが、言葉を聞いただけではガンソクの意味が分かりません。

胞子葉の形が雁の足の形に似ているからとのことでした。一見どこが雁の足かなと思いましたが、イヌガンソクの胞子葉は秋になって出てくるので、今はまだ十分成長していないようで、大きくなって乾燥したものは生け花の花材になるそうですから、そうなれば感じがでるのかもしれません。


ハイチゴザサ:這稚児笹(這い這いする稚児)

2017-09-17 08:47:25 | 植物観察記録

日影になった山の道端に覆うように生えた草が、小さい穂をつけていました。

ハイチゴザサ:這稚児笹(イネ科チゴザサ属)です。本州〜九州の低地の湿地に生育し、群生します。茎の基部は長く伏臥し、節々から1〜3個の根をおろし、上部の節から高さ約5㎝の直立した細い茎を伸ばし、葉の長さ8〜25mm、幅2.5〜7mmの広披針形で、両面に粗いネタ毛が散生します。花期は9~10月、花序はまばらな円錐状で長さ15〜35mm、疎らに小穂をつけます。

似た花にチゴザサ(‘08年8月16日記事)がありますが、こちらは水田や溝などより湿った土地におおく、長く這った地下茎より立ち上がる茎は30~50㎝とより高くなります。


シュウカイドウ:秋海棠(悲しむ女性の姿)

2017-09-10 11:41:31 | 植物観察記録

裏庭にシュウカイドウ:秋海棠(シュウカイドウ科シュウカイドウ属)咲いています。

シュウカイドウ:秋海棠は、江戸時代の初期に中国から渡来したといわれていますが、紅色の花を点在させて秋の訪れを告げる姿は、どこか日本人の心情にも訴えるものがあります。

シュウカイドウは雌雄異花で、雄花をつける枝は上に伸びて数も多く2個の大きい萼片と2個の小さい花弁を持ちます。雌花をつける枝は、垂れ下がっていていますが、雌花は上手に栽培しないと普通は開きません。その代わりか、葉腋にむかごが付き、それがこぼれて翌年発芽します。手入れ要らずで毎年花開く秋海棠はお徳用な花でもあります。

 花が垂れ下がって咲くことが、春に咲く海棠に似るということで秋海棠の名があり、同じことから瓔珞草ともいいます。

 中国の古い話に、ある女性が恋人に会えずに会えず毎日北窓で泣いていた所、その涙のこぼれたところに草が生え、その姿はいかにも女性が泣く痛ましい姿に似てなまめかしいので断腸草(断腸花)と名づけられました。これが今の秋海棠といいます。ほかにも、遠くへ商売に出かけた夫が病死したという噂を信じられず、帰りを待ち続けた妻の名がした涙がこの花になったとか、ある女性が恋焦がれるあまり、階段の下に血を吐いたその血から生えたのが思想草でこれが秋海棠だとか、秋海棠には多くの中国の説話が伝わりますが、いずれも女性が悲しむ風情がからんでいるのは、日陰を好んで咲く艶なこの花の姿に思いを重ねているのかもしれません。


コキンレイカ:小金鈴花(やはり野に置けか) 

2017-09-04 17:24:14 | 植物観察記録

一昔前、妻が茶花として買い求めた金鈴花なる草が消えもしないかわりに、花を付けたり付けなかったりするので、試みに十分に施肥してみたら、大きく育って見事な花をつけました。

実はこの花、園芸店の名札でよくあることですが、金鈴花ではなく、コキンレイ:小金鈴花、別名ハクサンオミナエシ(オミナエシ科キンレイカ属)またはこれに近い品種だということがわかってきました。

コキンレイカの花は、キンレイカに比べてやや小さく、キンレイカの花は基部に3㎜ほどの距があるのに対し、コキンレイカはその部分が少し膨らんでいる程度の違いがあるからです。

コキンレイカは、蓼科山7合目で見たほか(’11年8月29日記事)、近縁種のマルバキンレイカを月山弥陀ヶ原で見たことがあります(‘15年8月12日記事)。それに比べて、いま我が家に咲くコキンレイカ(と思われる)は、肥料の利きすぎか、高地に咲く清楚な花に比べてすっかり肥満気味です。山野草はやはり野に置けのようです。

 


ヒゴタイ:平江帯(熊本に生えても名は肥後ではない)

2017-09-02 14:49:03 | 植物観察記録

六甲高山植物園のよく目立つ銀紫色をした球形の花をつけたヒゴタイ:平江帯(キク科ヒゴタイ属)が咲いています。来園者の話題になったのか。大新聞の夕刊にも紹介されていました。

昔大陸と陸続きであった名残りで本州愛知県、岐阜県、岡山県、四国、九州および朝鮮に隔離分布していたというヒゴタイも、今では九州のごく限られた地域にしか残ってないといいます。

日当たりのよい山野にごくまれに生える多年草で高さ1m内外、茎と葉裏に白い綿毛が密生します。 花は夏から秋、頭花は1個の筒状花からなり、頭花が集まって直系約5cmの球状の花序となります。筒状花の花冠は深く5裂します。

先日九住山を歩いた友人が、草原に自生の?ヒゴタイが咲いていたと写真を送ってくれました。久住山に生え、熊本県阿蘇郡にヒゴタイ公園というのがあるという話を聞くと、ヒゴタイのヒゴはてっきり肥後と思うのですが、図鑑での和名は肥後ではなく平江帯となっており、語源はふつう不詳とされています。

一説によると平江帯は益軒の大和本草にあるからとか、肥後躰が細川家写生帖にとあるなどの話があります。分布から肥後がもとで和名の平江帯は肥後からの転訛とみる方が自然な気がします。