むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

ヤマグルマ:山車(被子植物では珍しい無導管) 

2017-11-15 15:59:07 | 植物観察記録

紅葉のみたらい渓谷を歩いていて、道筋でも絶景ポイントといわれる“みたらいの滝”の真上にヤマグルマ:山車(ヤマグルマ科ヤマグルマ属)が実をつけていました。植物園では見かけたことがあっても自生を見るのは初めてです。

谷間の岩場などに生える常緑高木で高さ15~20mになります。葉が枝先に集まって互生し、車輪状に見えるのでこの名があります。樹皮から鳥もちが取れるのでモチノキの別名もあります。

5月ごろ枝先に黄緑色の小さな花を多数集まってつけます。花序は総状で、1つの花序に10~30個の花をつけます。花には花弁も萼もなく、車輪状に並んだ5~10個の雌蕊に廻りに、多数の雄蕊が多数つき、雌蕊は側面で合着するというすこし変わった形です。('09.5.4記事)

 花だけではなく、ヤマグルマそのものが、被子植物でありながら、導管を持たず仮導管だけで水分を運ぶ無導管植物として知られています。

 通常被子植物は、機械的に体を支える繊維と、細胞の上下の両端が大きく口を開いていて、縦にいくつも連なり、水や水に溶けた成分が通る導管を持っていますが、イチョウ、ソテツ、針葉樹など球果植物など裸子植物では、両者を突き混ぜたような構造の仮導管で2つの仕事を行っています。裸子植物はこの分業が行われない状態のまま進化が足踏みしていると見られています。

 被子植物でありながら木部が仮導管だけでできている植物にはヤマグルマのほかにセンリョウなどもあります。いずれも木の内部だけではなく、花も進化の途中で止まったような変わった形をしています。ただセンリョウは、花の構造が原始的で、茎の形も草と木の中間的存在で、いかにも未進化植物的なところがありヤマグルマとはすこし異なります。


ハイイヌガヤ:這犬榧(雪に耐える)

2017-11-08 09:52:53 | 植物観察記録

大山横手道にひざ丈ほどの低い木が実をつけていました。

多雪地帯に特有のハイイヌガヤ:這犬榧(イチイ科イヌガヤ属)です。

 北海道、本州の日本海側の多雪地帯に適応したイヌガヤの変種で、高さは2~3m、環境に適応して匍匐形の樹形になっています。幹の下部は地面を這い先端は斜上します。

雌雄別株で、 種子は開花した翌年の秋に熟し、外種皮は柔らかくて、ヤニノ臭さがあるものの、甘みがあり食べられるそうです。

ユキツバキ、ヒメアオキ、エゾユズリハなどの日本海要素の常緑匍匐性植物の仲間です。


クロタキカズラ:黒滝蔓(赤い実で目立つ) 

2017-11-06 17:29:03 | 植物観察記録

 

蒜山高原の近く、津黒高原の山乗渓谷の道にクロタキカズラ:黒滝蔓(クロタキカズラ科クロタキカズラ属)が赤い実をつけていました

本州中国地方、四国、九州に分布し、山地のやや湿ったところにまれに生育する落葉性のつる植物で、つるは淡褐色の皮目があり、葉は互生し長さ5~15㎝で薄く、両面に伏毛があります。

 雌雄異株で、晩春、葉脇に総状花序をつけ、細長い柄に径㎝ほどの黄緑色の小さな花を垂れ下げます。萼、花弁ともに5裂、雄蕊5本、雌蕊はとっくり形で柱頭は5裂します。(‘5年6月9日記事参照)

 果実は核果で、長さ1.5㎝ほどの扁平な楕円形で、9~10月には赤く熟します。

 和名は高知県黒滝山で初めて見つけたことによります。

 

 

 


オオカニコウモリ:大蟹蝙蝠(面白い分布の形) 

2017-11-05 13:07:12 | 植物観察記録

花色が少なくなった大山横手道に咲いていたのがオカニコウモリ:大蟹蝙蝠(キク科コウモリソウ属)です。

本州北部から中国地方の山地の落葉樹林内生えますが、東北地方では太平洋側、中部及び関西では日本海側に偏って分布する多年草です。

高さは約50㎝、枝があって、節ごとにくの字形に屈曲します。葉巾は10~15㎝、裏面の脈上、葉柄には淡褐色の縮じれた長毛を密生します。

花は晩夏から秋、日光に多いのでニッコウコウモリの別名があります。