むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

サルナシ:猿梨(美味しい薬)

2013-06-27 15:24:52 | 日記
サルナシ:猿梨(マタタビ科マタタビ属)の果実がふくらんでいます。
日本各地の山地の林内に生える落葉つる植物で、茎は長く伸びて枝分かれし、太いものは径15cmにもなり、長さ2~8cmの葉柄は淡紅色を帯びます。
雌雄異株で、5~7月上部の葉腋に白い花を下向きにつけます。(‘09年月20日記事)
この果実は甘酸っぱく、仲間のキーウイフルーツよりもはるかに美味といわれています。ただ高所に実ることが多くなかなか自然のものを味わう機会がありません。
マタタビの仲間で、新陳代謝、滋養強壮、健胃整腸、疲労と病後の回復、不眠症、補血、鎮静、便秘、高血圧などなど多様な薬効があり、古来より不老長寿の果実として珍重されていた事も頷けます。
つるは丈夫で、徳島祖谷にかかるかずら橋でも、シラクチヅル(カズラ)といって、このサルナシのつるが使われています。
和名は果実がナシに似て猿が食用にするという意味で、コクワの別名もあります。

(しばらくお休みします)

マクワウリ:真桑瓜(万葉人も食べた)

2013-06-24 17:39:44 | 日記
「瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ・・・」と山上憶良が子らを思って詠った瓜は、
今日のマクワウリの原種に近いものではなかったかといわれています。
今では少し珍しくなった感があるそのマクワウリ(ウリ科キュウリ属)が、畑の片隅でおおきくなっていました。
インド原産の野生種から発達したものといわれ、古くから畑に栽培されてきた一年草です。花は夏、液果は長さ12㎝ぐらいで、果皮は熟すと黄緑になり、香気があり甘味があるので生食されます。
和名は、昔、美濃国(今の岐阜県)真桑村が上品の生産地であったことからついています。

イワナシ:岩梨(食べてわかる名前の由来)

2013-06-22 16:32:11 | 日記
春さき、道端の少し荒れたような斜面に淡紅色の鐘形の花をつけていたイワナシ:岩梨(ツツジ科イワナシ属)(’07年4月7日記事)が、緑色で平たい球形の果実をつけています。
北海道、本州の日本海側に多い常緑の小低木で、よく枝分かれして横に這い、高さは10~25cmになります。枝には長い褐色の毛があり、まばらに互生する長さ4~10cmの卵状長楕円形の葉にも毛があります。
初夏に熟す果実は液果で、胎座が肥厚して肉質となり、甘くて食べられます。
失礼して一つ口にしてみましたところ、緑色で毛の多いさえない形に反して、思いがけないジューシーな甘さがありました。和名の岩梨はナシの果実に似ているのでいうそうですが、食べてみての感じでは、形ではなく食感がナシに似ているということのようです。

ベニバナ:紅花(昔も今も女人の好み) 

2013-06-20 18:10:53 | 日記
紅の 八しほの衣 朝な朝な 馴れはすれども いやめづらしも 万葉集11-2623
ベニバナ:紅花(キク科ベニバナ属)は、万葉集にでる紅(くれなゐ)として、29首詠われています。
“紅(くれなゐ)に何度も浸して染めた濃い赤色の衣は、毎朝きて慣れ親しんではいるが、何時までも身に着けていたい気持ちにさせてくれます。”と情熱的な乙女の恋心を紅の衣に託したものとされています。
万葉の昔から美しい紅色の天然染料としてつかわれ、今もなお重く用いられているベニバナが今満開です。
もともとは西アジアから地中海原産の越年草で、クレノアイ(呉の藍)、スエツムハ(末摘花)とも呼ばれ、古から染料をとるために栽培されてきました。6~7月、アザミに似た頭花をつけ、はじめ黄色から後に赤く変わります。
江戸時代には最上地方が主生産地になり、最上(もがみ)紅花(こうか)として北前船で大量に京都へ送られて、京美人の口紅になったり、京染の染料になったといわれます。
ベニバナの色素は、水溶性の黄色(サフラワーイエロー)と、アルカリ性で溶解する赤色(カルタミン)の2種類があり、花を摘んで丸めて寝かせた紅花(はな)餅(もち)を水につけると最初に水溶性の黄色色素が溶出され、ついで炭酸カルシウムを加えると赤色色素が溶出されます。これが赤い紅染めに用いられ、濃く染めるには何回も液を取り換えてつけるところから、冒頭の歌の“紅のやしほ(八入)の表現になっています。ちなみにツツジのアカヤシオ(‘11年5月11日記事)などのヤシオも同じ語源からきています。
また、ベニバナの種子から採れるサフラワーオイは健康イメージがつよく、割高な値段で流通しています。

キキョウ:桔梗(よく分かる雄性先熟)

2013-06-18 17:28:56 | 日記
秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花(万葉集・巻八 1537)
萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 姫部志(をみなへし) また藤袴 朝貌の花(万葉集・巻八 1538)
と山上憶良が詠った秋の七草のうちの“朝貌の花”は、異説もありますが、キキョウ:桔梗(キキョウ科キキョウ属)であるといわれています。
そのキキョウが、夏もこれからというのにもう青紫色の花をつけています。
キキョウは自家受粉裂けるために、雄性先熟という方法をとっており、花を覗くと誰にでもよく分かる形になっています。
咲き始めの花では、雄蕊が雌蕊の花柱にぴったりと張り付いて黄色の花粉を出しています(写真①)。

花粉を花柱に生えた毛に渡してしまうと、雄蕊は花柱から離れ、
しおれて花の底に横たわります(写真②)。

ハナバチなどが筒の底に下りて雄蕊のドームの下にある蜜を吸いますが、このとき花粉をべったりとつけた花柱に触れ、花粉をほかの花に運んでゆきます。花粉がなくなったころ、花柱の先端が5つに裂けて柱頭が現れ(写真③)今度は運ばれてきた花粉を受け取るという寸法です。

おなじキキョウ科のホタルブクロも同じ雄性先熟ですが、こちらの雄性期はまだ蕾の内部で花粉を雌蕊の毛に渡してしまうので、キキョウのように雄性期の様子を外から見ることができません。

ナツメ:棗(字は体を表す?) 

2013-06-17 10:52:34 | 日記

ナツメ:棗(クロウメモドキ科ナツメ属)の花が咲いています。
中国北部原産の落葉小高木で、中国では重要な果樹の一つとなっているそうですが、日本では果樹としての人気はいま一つで、秋に実る楕円形の果実(’11年9月7日記事)は林檎のような食感で、生食や乾燥果にされるのですが、しばしば木の上で干からびているのをよく見かけます。

今の時季に葉の付け根に咲く花は黄緑色の小さいものであまり目立ちません。よく見ると枝に托葉が変化した鋭い刺が2個あり、1個は短く下に曲がって鉤形になっています。ナツメを漢字で書けば棗で、朿(トゲ)という字が上下に重なっています。まさに“字”は体を表すといったところです。(ちなみにイバラは朿が横に二つ並びます)
ナツメの名は夏芽で、芽が出るのが遅く初夏になるからきているといいます。また茶道で茶を入れるのに使う棗は形がナツメの果実に似ていることからきています。ナツメの語感、果実の色形、それから来た茶道の棗のまろやかな形から受けるイメージと、漢字の棗の持つ朿(トゲ)のイメージが大きく異なる不思議なナツメです。

ツルアジサイ:蔓紫陽花とイワガラミ:岩絡み(一つか四つか)

2013-06-15 15:08:18 | 日記
ツルアジサイ花ツルアジサイ
アジサイの季節です。手に取って見るアジサイは様々な改良品種もあって、名前を覚えきれるものではありませんが、高い木によじ登って咲くツルアジサイ:蔓紫陽花(ユキノシタ科アジサイ属)とイワガラミ:岩絡み(ユキノシタ科いわがらみ属)の二つは、花が高いところにつくことが多いこともあって、観察初心者の頃には区別がし難いものでした。
ツルアジサイは山地のやや湿ったところに生える落葉つる性木本で、イワガラミと同じように、気根を出して岩や木にはいのぼります。
対生する葉は、長さ4~12cmの卵形で先は尖りふちに細かく鋭い鋸歯があります。
6~7月、枝先に小さな両性花のかたまりをつけ、その周りに白い装飾花をつけます。装飾花は直径2~4cmで、花弁状に変化した萼片がふつう4個あります。

イワガラミ花

イワガラミ

いっぽうイワガラミは、ツルアジサイと同じように気根を出して岩や木にはいのぼります。葉は対生し、長さ3~10cmの広卵形で、ふちにはツルアジサイより粗いが鋭い鋸歯があります。
同じころ、枝先に白い装飾花が目立つ花序をつけます。装飾花は1個の萼片が大きく花弁状になったもので、長さ2~3cmの卵形です。両性花は小さく、多数集まってつきます。
ツルアジサイとイワガラミの区別は、このように花びら状の萼片の数と形、葉の鋸歯が細かいか粗いかに注目すれば容易に区別できます。

ムシトリナデシコ:虫取り撫子(粘膜は何のため?) 

2013-06-11 19:16:40 | 日記
あちこちに ムシトリナデシコ:虫取り撫子(ナデシコ科マンテマ属)の紅紫色の花が咲いています。
南ヨーロッパ原産の越年草で、各国で観賞用に栽培されています。
日本でも江戸時代末期に鑑賞用として移入されたものが各地で野生化しており、道端や空き地でも群生しているのを良く見かけます。
茎の高さは30-60cm、葉は卵形あるいは広披針形で対生し、基部は茎を抱きます。
葉の根元から茎が分岐し、枝の先に紅紫色で直径約1㎝の5弁の花を多数つけます。茎上部の葉の下に粘液を分泌する部分が帯状にあり、ここに虫が付着して捕らえられることでこの名がありますが、食虫植物ではなく、受粉の役に立たないアリなどが花まで登ってくるのを妨げているのではないかと考えられています。
ハエトリナデシコ、コマチソウ、ムシトリバナの別名があり、白花もあります。

ヤエザキドクダミ:八重咲蕺草(八重咲きなら観賞できる)

2013-06-10 13:15:38 | 日記
東京向島百花園に咲いていたヤエザキドクダミ:八重咲蕺草(ドクダミ科ドクダミ属)が咲いていました。
民間薬として昔からよく知られ、10種の薬効があるというので十薬とも呼ばれるこの草は、日陰や湿り気のあるところに好んで生えて全体に特有の臭気があることから、花が観賞用や生け花に使われることはまずありません。
白いはなびらに見えるのはふつう4個の総苞片で、その上に花弁も萼もない小さな花が黄色い穂になってつきます。
自生のものでも総苞片の数には結構変化があるものですが、このヤエザキドクダミはこれを改良して、きれいな八重咲きにしたものと思われます。
ここまで来ると、十薬の持つ陰気なイメージが薄れて、清純な雰囲気が勝つてくるから不思議なものです。


ヤエザキドクダミ:八重咲蕺草(八重咲きなら観賞できる)

2013-06-10 13:15:38 | 日記
東京向島百花園に咲いていたヤエザキドクダミ:八重咲蕺草(ドクダミ科ドクダミ属)が咲いていました。
民間薬として昔からよく知られ、10種の薬効があるというので十薬とも呼ばれるこの草は、日陰や湿り気のあるところに好んで生えて全体に特有の臭気があることから、花が観賞用や生け花に使われることはまずありません。
白いはなびらに見えるのはふつう4個の総苞片で、その上に花弁も萼もない小さな花が黄色い穂になってつきます。
自生のものでも総苞片の数には結構変化があるものですが、このヤエザキドクダミはこれを改良して、きれいな八重咲きにしたものと思われます。
ここまで来ると、十薬の持つ陰気なイメージが薄れて、清純な雰囲気が勝つてくるから不思議なものです。