むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

マルバウツギ:丸葉空木(高尾山では目立つ)

2013-05-30 09:54:11 | 日記
卯月は卯の花(ウツギ)の季節です。高尾山の自然探究路で目立っていたのはマルバウツギ:丸葉空木(ユキノシタ科ウツギ属)でした。
関東以西~九州に分布し、山地のやや日当たりのよいところに多い落葉低木で高さは1~1.5mになります。若枝には星状毛が多く、葉は対生し長さ3~7㎝の卵円形または卵形で、両面とも星状毛がありざらつきます。花期は5月、枝先に長さ5㎝ほどの円錐花序をつけ、白い5弁の花を集まってつけます。花序の下の葉は柄がなく、ときには茎を抱きます。
わが町高槻の市民の花に指定されているウツギ(空木)は、花柄、花弁の外側、萼などに星状毛が多くて、やや褐色で濁った感じになりますが、マルバウツギの方が白色が勝って清純な感じがします。
高槻ではウツギが多く、大阪南部ではウツギよりマルバウツギの方が多く見られます。高雄山でもウツギは見当たらずマルバウツギばかりでした。マルバウツギかウツギかは地域によって偏りがあるようですが理由はわかりません。

コミヤマスミレ:小深山菫(遅咲きのスミレ)

2013-05-28 14:58:55 | 日記
5月末、高尾山の自然探究路を歩いていると、道沿いに様々なスミレ葉が続いていましたが花が終わってしまっていて、それでもなくても難しいスミレの同定は出来ません。その中で僅かに幾株かの小さい白い花をつけたスミレがありました。
いろいろ調べてみると全体の様子や遅咲きであることなどから、どうやらコミヤマスミレ:小深山菫(スミレ科スミレ属)ではないかと思えました。
本州関東以西の太平洋側、四国、九州の山地の樹林下で、湿り気のあるところに生える無茎性の多年草で、葉は根生で束生、長い柄があり長さ2~5㎝の薄い皮質。花約は白色で直径約1cm、距は短く、側弁は毛があります。
葉が暗紫色を帯びるものはアカコミヤマスミレというそうですから、こちらかもしれません。薄暗い樹下での撮影で手ブレとなったのが残念です。

イナモリソウとホシザキイナモリソウ(星咲稲盛草)

2013-05-26 19:12:28 | 日記
東海道自然歩道の一方の起点である高尾山は、東京都八王子市にある標高599mの山で、東京都心から近く、年間を通して多くの観光客や登山者が訪れます。ことに最近「ミシュランガイド東京」の旅行ガイド版「ミシュラン・ボワイヤジェ・プラティック・ジャポン」で、高尾山が観光地として三つ星をしたことから、折からの山ガール人気も手伝って、先週登ったその日も老若男女の登山客でにぎわっていました。
高尾山は標高僅か599mの低く小さい山にすぎないのに、植物の酒類は極めて多く、1966年の調査では1508種を数え、その数は日本全国に生育する植物約5300種の約20%に当たり、イギリス全土をしのぐ数の植物が見られ、都市近郊にのこる奇跡の山といわれています。
鮮やかな新緑のなかを、4号路から頂上、頂上から6号路を下りましたが、春の花が終わって端境期にあたるのか、花の数は期待ほどではありませんでした。
イナモリソウ

道端のあちこちに咲いていたのがイナモリソウ:稲盛草(アカネ科イナモリソウ属)です。
本州関東以西、四国、九州の山地の湿ったところに生える多年草で、地下茎は細く地中を這います。葉は4又は5枚、長さ3~6㎝、葉間に托葉があります。5~6月淡紫色な花が咲き、花は長さ約2.5㎝漏斗型で、先は5つに分かれます。
道筋に咲いているイナモリソウを何枚も写真に撮って、帰って見てみると少し様子の違う花があるのに気が付きました。
ホシザキイナモリソウ

あれっと思ってネットで調べてみると、ホシザキイナモリソウ(星咲稲盛草)というのがありました。
ホシザキイナモリソウは、イナモリソウの変種で、高尾山で最初に発見され発表された植物といいます。基本種の花被片はふつう5片ですが、本種は6~7裂片に裂けることもあり、裂片は狭くて、縁がまくれているのが特徴となっています。
歩いているうちに次々きれいな花が出て来るので、無駄だと思いながら、何枚も写真を撮ったおかげで、2種類のイナモリソウに出会えたことがわかりちょっぴり嬉しくなりました。

セッコク:石斛(高尾山に咲く)

2013-05-25 16:31:41 | 日記
5月23日、東京へ出たついでに、高尾山に登ってきました。
去年秋に登った時には雨で、深い霧の中、木々の紅葉織りなす幻想的な景も素晴らしいものでしたが、(’12年12月5日むかごの高槻記事) 天気の良い日にという気持ちと、もしかしたら時期的に有名な高尾山のセッコク:石斛(ラン科セッコク属)に会えるかもしれないと思ったからでした。
セッコクは樹木や岩などに着生する常緑の多年草で、空中湿度の高い谷間の樹上によく見られます。円柱上の茎は節が多く、長さは20㎝ほど、花期は5~6月、芽出し後2~3年目に葉が落ちた後の茎の上部に数個の花をつけます。ふつう白色で芳香があります。愛好家も多く多数の園芸変種が栽培されています。
高尾山では、昨秋下った4号路を登り、頂上からはセッコクが咲くという6号路の長い下り道をとりました。案内図では道沿いに10数本のセッコクが着生する木があるというので、頭上ばかり探しながら下山路を歩いてもなかなか見つかりません。セッコク目当てに毎年のように高尾山に登るという人の話でも、去年はあちこちで白く咲く花が見えたのに今年はほとんど見えない。時期が早いのかもしれないので6月にもう一度来るつもりだなどといいます。それでも行き交う人に教わって2本ばかりセッコクの咲く木を見つけましたが、なにせ遠すぎて、手持ちのデジカメではそれらしきものが写っているだけでした。それでも出会えたということだけで満足でした。
家へ帰ると、出る前には蕾だった数鉢のセッコクが満開となっていました。(下図)

ヘビイチゴ:蛇苺(ストロ-ベリー・フィールド)

2013-05-20 20:40:13 | 日記
ヘビイチゴ:蛇苺(バラ科ヘビイチゴ属)が赤い実をつけています。
蛇のいそうな場所に生えるから、あるいは(人は食べずに)蛇が食べるからこの名があるといわれます。なにやら毒草のような名前ですが毒はありません。食卓に上る果物の苺と同じように花床が巨大化して赤い果実になります(イチゴ状果)が、無毒とはいうものの、甘味とジューシィーさに乏しく決しておいしいものではありません。
日本各地のほか、東南アジアの温帯から熱帯にかけて分布し、山野や道端の日当たりのよい湿った草地に多い多年草で、葉には3個の小葉があり、長さ2~3cmの楕円形で縁に粗い鋸歯があります。春から初夏、径1.5~2cmの黄色い花をつけます。花後茎が長くなり地を這って節から根を出し繁殖します。
いかにも食べられそうなのに、実際は不味いという、残念な気持ちが、役たたずなのに知名度の高い理由なのかもしれません
そのヘビイチゴもこれだけかたまって実をつけていると、結構絵画的でした。

サギゴケ:鷺苔(どちらの名が先?) 5月15日

2013-05-15 21:40:04 | 日記
天王寺区茶臼山に接する川底池の周辺に珍しいサギゴケ:鷺苔(ゴマノハグサ科サギゴケ属)の群生がありました。
どこにでも見られるムラサキサギゴケの白花品をサギゴケといっているのですが、ふつうは母種と混生していて、両者を区別しない考えもあるそうです。
それにしても、もともと白いのが鷺なのですから、母種とされるムラサキサギゴケの名に紫の鷺という名がついていること自体が不思議です。
いずれにしても、一面に咲いた真っ白なサギゴケをみていると、名前のことも含めて、こちらの方が本家ではないかと思えてきました。

シシガシラ:獅子頭(獅子のたてがみ) 

2013-05-13 17:17:18 | 日記
羊歯の中でも比較的覚えやすいものの一つがシシガシラ:獅子頭(ウラボシ科シシガシラ属)です。形と名前がそうさせているようです。
各地の山地の樹林下などにふつうにみられる常緑の多年草で、根茎は塊状で斜.上し、葉を束生します。葉の長さは30~40cm、2型あり、胞子葉は栄養葉より高く立ち、羽片は狭くまばらで、裏面に胞子嚢群を付け両縁が巻き込んで包みます。
和名は四方に放射状に出る葉を獅子のたてがみに見立てたもので、右側のように若葉が赤色を帯びるのでムカデグサの名もあります。

ヤシャゼンマイ:(渓流に生きる)

2013-05-12 15:59:43 | 日記

ヤシャゼンマイ (ゼンマイ科ゼンマイ属) はゼンマイにごく近縁なシダで、外見は非常によく似ていますが、異なる点は葉が細いことで、特にゼンマイの小羽片は、基部が丸く広がり、耳状になるのに対して、本種は狭くなっており、植物体も一回り小さくなっています。
日本固有種の夏緑性多年草で北海道南部から九州東部にかけて分布します。栄養葉は長さ30~50cm、胞子葉は春早く栄養葉に先立って高く立ち多数の胞子嚢を密生します。
ヤシャゼンマイは、流水に耐える形をもったいわゆる渓流植物の特徴を備えています。生育環境ははっきりしていて、必ず渓流の脇の岩の上の、増水すれば冠水するようなところに生えます。ゼンマイも湿ったところが好きですが、渓流のすぐそばには出現せず、ヤシャゼンマイとは住み分けています。
和名はゼンマイよりも痩せているからヤセゼンマイとか、ヤシャゴからきているとかの説があります。

ゼンマイ:銭巻(綿毛も使った) 

2013-05-11 09:22:34 | 日記

芽だしの栄養葉

ゼンマイ:銭巻(ゼンマイ科ゼンマイ属)が萌えだしています。
山野の湿ったところに多い夏緑性の多年草で、ワラビと並んで古くから山菜として利用されています。
葉には栄養葉と胞子葉があり、どちらも芽出しの時は綿毛をかぶり、くるくるとまるまっているので、この形が時計や玩具に使うぜんまいに似ているといことからこの名があります。
若い時から栄養葉と胞子葉の区別がはっきりしており、食べるのは若い栄養葉で、根元を折り、表面の綿毛を取り去り、小葉をちぎって軸だけにし、ゆでてあく抜きし、通常は天日に干し、干しあがるまでに何度も手揉みをして柔らかくし、黒い縮緬状の状態で保存します。
子どものとき、隣家で何枚もの筵にぜんまいを干しては揉んでいたのを思い出します。取り除いた綿毛も干して、丸く固めて糸でくくり、手毬にしていました。軽くて結構よく弾みました。
今、図鑑を見ると、昔は綿毛を綿の代用としたり織物にしたとありました。

胞子葉と展開した栄養葉

クジャクシダ:孔雀羊歯(花を広げた孔雀)

2013-05-09 17:32:22 | 日記
クジャクシダ:孔雀羊歯(ウラボシ科くじゃくしだ属)が、きれいに若葉を広げています。北米から東アジア、ヒマラヤまで分布し、北海道、本州、四国の産地の半ば日当たりのよい斜面に好んで生える夏緑性の多年草です。根茎は短く横にはい、葉は込み合ってつき、羽片を支える羽軸が独特の鳥の足状に分岐するため、羽片が扇状に展開する姿がクジャクの羽根に似ているというのでこの名があります。
クジャクソウとも呼ばれ、漢名は鉄線蕨草です。