むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

タムシバ(白い花で春を告げる) 

2017-04-30 14:56:20 | 植物観察記録
<center>4月下旬の湖北平池、残雪が残る林のなかで目立っていたのがタムシバ(モクレン科モクレン属)の白い花です。
葉をもむと強い香りがあり、噛むと甘いところからニオイコブシ、またカムシバなどの名があり、タムシバの名はカムシバが転訛したともいわれています。
日本海側の多雪地帯に多く、高さ10mほどになる落葉高木で、雪解けとともに開花するので、昔は農作業の時期を知らせる暦代わりに利用され、農諺木といわれています。このように使われたのがほかにもコブシやヤマザクラなどがあります。
コブシとはよく似ていますが、コブシは花の下に葉があるのに対しタムシバはなく、タムシバの葉は薄くて裏面が白っぽいなどで区別されます。
タムシバの花はまばらにつくことが多いのですが、平池では、びっしり花をつけた1本の高木がありました。

ヒメヤシャブシ:姫夜叉五倍子(姫でも夜叉)

2017-04-29 09:46:53 | 植物観察記録

まだ雪が残る平池に、オオバヤシャブシ(昨日記事)と並んでヒメヤシャブシ:姫夜叉五倍子(カバノキ科ハンノキ属)も花をつけていました。
北海道、本州、四国、九州に分布する日本固有種で、太平洋側型のヤシャブシに対して、ヒメヤシャブシは日本海側分布型になります。丘陵~山地で、多雪地のやせた土地や崩壊地に多く生える落葉小高木で、高さは2~7mになります。
ヤシャブシより葉がやや細く、側脈が20~26対と多いのが特徴です。
雌雄同株で、3~5月、葉の展開と同時に開花し、雄花序は無柄で長さ4~6㎝、枝先に1~3個垂れ下がります。雌花序には柄があり、雄花序より下方に3~5個つきます。
昨日のオオバヤシャブシと異なり、上から雄・雌‣葉(または雄・葉)の順序となります。覚え方は、オ・メ・ハです。

オオバヤシャブシ:大葉夜叉五倍子(ハ・メ・オ)

2017-04-28 18:01:52 | 植物観察記録

湖北平池にオオバヤシャブシ:大葉夜叉五倍子(カバノキ科ハンノキ属)が花をつけていました。
球果にタンニンが多く、五倍子(ふし)と同じとし、夜叉は球果の凸凹を見立てたものとされています。
海岸近くに多く生える落葉低木~小高木で、高さは5~10m 、葉は互生し長さ6~12㎝の卵形~三角状卵形で厚くて表面に光沢があります。
雌雄同株で、花期は2~4月、雄花の穂は長さ4~5㎝と大きくて黄色く、垂れ下がります。
ほかのヤシャブシの仲間と異なり、雄花序が枝先につかず、上から葉芽、雌花序、雄花序の順につきます。
昔、ハ・メ・オト覚えたらよいと教えられました。なるほど覚えやすく見分けやすい便利な符牒です。

イワウチワ;岩団扇(トクワカソウ)(無粋な名前) 

2017-04-27 08:35:38 | 植物観察記録
イワカガミ(昨日記事)は蕾ばかりでしたが、イワウチワ:岩団扇(イワウメ科イワウチワ属)はちょうど満開で、こちらは大満足でした。
東北地方から近畿地方以東に分布し、深山の岩場や落葉樹林下のやや湿った場所に生える常緑の多年草で、葉は長い柄があり、径2.5~8㎝のほぼ円形、厚くて光沢があり、縁には波状の鋸歯があります。
花期は4~6月、高さ3~10㎝の花茎の先に、淡紅色の花を横向きに1個つけます。花弁は5個、直径3㎝ほどの広い鐘形で、ふちには細かい切れ込みがあります。雄しべは5個、花底に仮雄ずい5個があります。
葉の形や大きさに変化が多く、北陸から近畿地方のものは、葉が広楕円形で、基部が円形またはくさび形となり、基部が心形となって葉の幅が広いイワウチワと区別してトクワカソウと呼ばれることがあります。平池のものはこの方と思われます。
葉の形が団扇に似ている事からイワウチワの名がありますが、このきれいな花をみていると、もう少しぴったりした名があってもよさそうな気がします。


イワカガミ(オオイワカガミ):岩鏡(大岩鏡)(残念!早すぎた)

2017-04-26 13:38:02 | 植物観察記録
暖かい南面の岩上にわずかに咲いたイワカガミ
6月になれば、例年のように池塘に咲くカキツバタを見に湖北今津の平池を訪れますが、いつも花が終わったイワカガミ(イワウメ科イワカガミ属)の大群落を見て、ぜひ花時に見たいものだと思っていました。
4月23日、咲いているはずと訪れましたが、お目当てのイワカガミはつぼみばかりで、探索路の最後の最後に、南向きの岩の上に数花咲いているのを遠くから見かけただけに終わり、不満感が残ったままとなりまました。
イワカガミは、北海道から九州に分布し、高山の草地や深山の岩場などに生える常緑の多年草で、茎は短く地に接して分布し、先に長い柄のある根出葉を数個束生、葉は径3~6㎝の円形で鋸歯があり、革質で表面は光沢があります。4~6月、高さ10~15㎝の花茎をのばし、3~8個の花を総状花序につけます。花は径1~1.5㎝で、淡紅色、花冠は漏斗形で5裂し、縁はさらに細裂します。
岩場に生え、葉が鏡のように光沢があるのでこの名があります。日本海側におおい大葉で尖った鋸歯の有るのをオオイワカガミというそうですので、平池のも大きい葉と鋭くとがった鋸歯があるので、オオイワカガミかもしれません。

花茎を伸ばしたイワカガミ


大きい葉と鋭い鋸歯、殆どが固いツボミだった。

日本の高山にあるコイワカガミ(’12年7月13日記事)と同じものをヨーロッパアルプスでも見たことを思い出しました。


ソメイヨシノ:染井吉野(太い幹は枝?) 

2017-04-17 18:13:03 | 植物観察記録
ソメイヨシノ

櫻が咲き始めた4月3日、嵯峨野にある植藤造園で、当主の櫻名人、佐野藤右衛門さんのお話を聴く機会がありました。(拙ブログ「むかごの高槻」記事参照)
日本一の桜守といわれる佐野藤右衛門さんは、人工の塊のようなソメイヨシノはずいぶんお気に召さないご様子で、本当の桜は実生で育ったものだけだとおっしゃいます。
古いソメイヨシノの太い幹から直に花が咲いているのをよく見かけるが、あれは健気でも何でもない。ソメイヨシノはすべて接ぎ木で増やすのだから、太い幹も実際は枝が太くなったもの。だからあのように幹に花がつくのだとおっしゃいます。なるほどそんなことがあるのかと感心して聞いていました。
この話が気になって、つい櫻の幹に咲く花を見てしまうようになっているとき、ヤマザクラの幹からも枝が出て花が咲いているのに出会いました。
はてなと思いましたが、山桜のほうはソメイヨシノのように幹に直接つくのではなくて、ちゃんと伸びた枝に普通のように花がついています。
ヤマザクラ
このことが桜名人のおっしゃるソメイヨシと実生の違いなのかどうか、少しわからなくなっています。


リキュウバイ:利休梅(感じ方違えば変わる名前) 

2017-04-15 08:49:30 | 植物観察記録

庭でリキュウバイ:利休梅(バラ科ヤナギザクラ属)が白い花を咲かせています。鉢植えを外して地植えにしたら、急に樹勢がつよくなり、何年かで生垣の上に顔を出すように成長しました。
中国中部原産で、日本には明治末期に入り、庭木、切花として栽培される、高さ2~4mになる落葉低木です。
4~5月新梢に長い総状花序を頂生し、径3~4cmの白花が6~10個上向きに咲きます。
花弁は5個で先は丸く、花の姿は梅に似るとなっています。
昔から利休梅と覚えこんでいましたが、植物園などではリキュウバイの名はなくて、バイカシモツケ(梅花下野)、ウメザキウツギ(梅咲空木)、マルバヤナギザクラ(丸葉柳桜)などで表示されていることがあります。調べてみると牧野図鑑に“関西では利休梅という”とありました。
ウメか、シモツケか、ウツギか、サクラか、いろいろな名前は人によって見方が違うことの表れかも知れません。
純白の花を枝いっぱいにつける姿は、全体として夏の近づきを感じさせる清らかさと、爽やかさをもっていますが、個々の花に近づいてみると、大きくて基部が急に細くなる花弁や、その基部に3~5個束になってつく雄しべなど、あまり優雅とはいい辛い感じです。



ヒトリシズカ:一人静(清楚な花は古い植物の証) 

2017-04-14 11:19:41 | 植物観察記録

庭に植わっているヒトリシズカ:一人静(センリョウ科チャラン属)が白い花をつけています。山野草の類はいつの間にか消えてしまうのが多いのですが、ヒトリシズカは強いらしくこぼれ種であちこちに広がっています。
光沢のある葉の間に白い花穂が立つ姿を、悲劇のヒロイン静御前にたとえてこの名がついたといわれ、静が義経に縁のある吉野の勝手神社で舞を舞ったという話から吉野静とも呼ばれます。眉刷草(まゆはきぐさ)の名もあり、いずれも清楚な花の姿から女性にちなむ名がついています。
正月の縁起物のセンリョウ:千両と同じ科であるのはちょっと不思議ですが、両者を花で比べると、なるほど頷けます。
(センリョウの花は‘07年7月8日記事参照)
センリョウと同じように、ヒトリシズカの花も花弁と萼を欠き、緑の球に見える子房に突き刺さったようにつく3本の白色の花糸が花のように見え、その根元に黄色い葯がつきます。
どちらも進化の道程での古い形のまま生き残っている植物なのです。


ヤブレガサ:破れ傘(唐笠を知らないと分からない名づけ) 

2017-04-12 05:53:16 | 植物観察記録
\
ヤブレガサ:破れ傘(キク科ヤブレガサ属)の葉が伸びだしました。
コナラやクヌギなどの林床に多い多年草で、葉がでたばかりのときの形が、まるで破れた傘をすぼめたように見えるというのでこの名があります。若いときは根生葉が1個でるだけですが、株が大きくなるとや傘70~120cmの花茎がのびます。茎の株の葉は直径20~40㎝で、掌状に深く切れ込みます。
花期は7~10月、頭花は直径1㎝ほど、すべて白い筒状花でできています。
目立たない花より、面白い新芽を名前にしたのはうなずけますが、洋傘しか知らない若い人にはピンと来ないかもしれません。もっともお化け屋敷の妖怪が持っている傘といえばわかるかもしれませんが。
写真の中心にあるのは少し伸びすぎで、奥に小さく写っている方が破れ傘に似ているといえそうです。

地味な花

アテツマンサク:阿哲満作(芳香があるというが)

2017-04-11 07:06:17 | 植物観察記録
少し前の植物園にアテツマンサク:阿哲満作(マンサク科マンサク属)の花が咲いていました。
中国地方から四国・九州に分布する落葉の小高木で、暖帯の中・上部からブナ帯にかけての急傾斜地に生育します。
アテツは最初に発見された岡山県阿哲地方からきています。
一見普通のマンサクに似ていますが、萼片が赤いマンサクに対してこちらは花弁も萼片も黄色いこと、マンサクの花には香りがないのに対して、いい香りがすることが異なります。
もっとも、ここの植物園のアテツマンサクの花は、高いところにあって、香りを嗅ぐことができなかったのは残念でした。
>