むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

イヌザクラ:犬桜(少ない個体) 

2015-04-28 08:41:59 | 植物観察記録

知人に教えてもらって高槻北部神峰山寺の近くにイヌザクラ:犬桜(バラ科サクラ属ウワミズザクラ亜属)の花を見に行ってきました。
仲間のウワミズザクラはどこででもよくみられるのに、イヌザクラの方は個体が少ないようで、花の咲いているのを撮影距離で見るのは初めてです。
ウワミズザクラによく似ていますが、花期は10日ほど遅く、花序の先が細く、花序に基部に葉がないことなどが異なります。
ウワミズザクラと同じように果実は塩漬けにして食用にされます。
樹皮が白っぽいのでシロザクラの別名があり、樹皮を切ればサロメチールの匂いがするといいます。
イヌザクラの名は、ザクラの仲間なのにサクラに似ていないことからきています。

ウスギヨウラク:薄黄瓔珞 (浮き出る腺毛)

2015-04-26 08:49:53 | 植物観察記録

高槻北部のある村社の参道脇にウスギヨウラク:薄黄瓔珞(ツツジ科ヨウラクツツジ属)のつぼみが膨らんでいました。
本州長野・山梨以西、四国の山地の林縁などに分布する落葉低木で,高さは1~2mになります。
花は4~6月、枝先に黄緑白色にわずかに紅紫色を帯びた花が集まってつき、花冠は長さ1.2cm~1.8cmの筒形で、浅く5裂します。花柄は長さ1~3cmで腺毛があり、萼は浅い皿形で、ふちに腺毛が密生します。
瓔珞とは、印度の貴族が珠玉や貴金属に糸を通して、頭・首などにかる装身具のことで、それから仏像などの装飾品となったものです。
ツリガネツツジの別名があります。
薄黄の名がついいていますが、蕾の状態では先端部の紅紫色が目立ちます。斜面の上にあったのでカメラを望遠サイドにして撮ったところ、萼の縁や花柄に密生する腺毛が白く浮き上がっていて、思いがけない効果を出していました。

カスミザクラ:霞桜  (芽吹きの山に白く霞む) 

2015-04-22 13:28:39 | 植物観察記録

自宅から歩いて20分ほどの散歩道にカスミザクラ(バラ科サクラ属)が咲いています。
山桜より標高の高いところに生え、ヤマザクラと分布が重なることが多くて、混同されやすいのですが、開花期がヤマザクラより10日ほども遅く、新芽が緑色であること、葉柄や花柄に毛があることが多いなどで区別されます。
カスミザクラはケヤマザクラとも呼ばれていて、以前は山桜の有毛種と考えられた時期もありましたが、今ではカスミザクラとしてヤマザクラとは別種とされています。ケヤマザクラの名から毛の有無にとらわれることも多いのですが、実際にはカスミザクラでは、花序型、葉や花の毛の有無や多少、若芽や花の色、花の大きさなどの変異幅も大きいといいます。
写真の木も、花柄などの毛がルーペでよく見ないとわからないくらいだったので、当初はカスミザクラかどうか決めかねていましたが、総合的に考えて、いまではカスミザクラと判断しています。
樹皮は明るい灰褐色で、秋田県角館の伝統工芸品である樺細工では、オオヤマザクラとともにこのカスミザクラの樹皮が使われています。


散初めは紅色を帯びる

キランソウ:金瘡小草(大形の地獄の釜) 

2015-04-20 14:33:55 | 植物観察記録

高槻北部の静かな集落、バスの待ち時間に田んぼの縁を歩いていると一面にキランソウ(シソ科キランソウ属)が咲いていました。
畑や道端、林縁などによく見かける多年草で葉が放射状に広がり、地面にふたをしたように見えるところからジゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋)とも呼ばれます。牧野図鑑では春の彼岸のころに咲くので(地獄の釜の蓋が開く?)となっています。
全体に毛が多く、茎は地面を這って広がります。葉は4~6㎝の倒披針形で、ふちには波状の鋸歯があります。ふつう緑色ですが、紫色を帯びるものもあります。花は唇形で濃い紫です。
そこで見たキランソウは、一株の広がりも大きく、それが一面に生えていて、地下にさぞかし大きな釜が隠れているのでは、と思えてきました。

ソメイヨシノ:染井吉野(散ての後も)

2015-04-07 17:55:01 | 植物観察記録

今年の桜は文字通りパッとさいてパッと散ってゆきました。
江戸末期から明治初期に生まれたといわれるソメイヨシノ:染井吉野は(バラ科サクラ属)は、日本の桜の代表として桜全体の8~9割を占めるといわれるほどになっています。
そんな染井吉野ですが、あまりにもありふれているためか“むかご”に登場することがありませんでした。20数年前今のところに移ったときに植えた土手のソメイヨシノがずいぶん大きくなって、窓から花見ができるほどになっています。その木は今年咲き始めてわずか5日目の雨でずいぶん散りました。
道に散り敷いた花びらもこの桜の美しさの一つでしょう。(写真)
話題の多いソメイヨシノを考えてみました。
人気の理由
 ・葉より先に開花し華やか。
 ・一重なるも淡紅、満開に至って淡色、散り際花底より紅をさす、
  大輪で、花梗(萼筒)長し 
 ・生長が早く、若木から開花。10年で開花、20年で壮木、30年で名木?
 ・整った樹形で、並木などに適す
 ・接ぎ木、挿し木が容易で繁殖に適す
 ・クローンで、一斉開花。本州での開花標本木に
欠点
 ・病虫害に弱い
  (サクラテングステ病、コフキサルノコシカケ、アメリカシロヒトリなど)
・寿命が短い
 ・あまりにも多いので、遺伝的攪乱の可能性
諸説あるソメイヨシノの起源
・幕末ごろ江戸染井村の植木屋伊藤伊兵衛政武が開発して売り出した。はじめは吉野山にちなんで吉野桜といったが、吉野の桜と違うため明治23年(1890)藤野寄命がソメイヨシノと命名。翌年松村任三が正式に学名として命名
・大正5年(1916)米植物学者ウイルソンによってオシマザラ+エドヒガンの雑種と発表
・1965年竹中要が交配実験によってオオシマ+エドヒガン雑種説を証明のうえ、伊豆半島自然発生説を
唱える
・済州島に近似種があることから、済州島から渡来説があり、今も韓国内では主張されているが、日本の学者は否定
・北アメリカの学者が雑種起源ではなく独立種説を出すなどソメイヨシノの起源論争は今も続いている
とこんなところでしょうか。

ミヤコアオイ:都葵(ギフチョウを待っているのに) 

2015-04-05 15:26:32 | 植物観察記録

10年も前に植えておいたミヤコアオイ:都葵(ウマノスズクサ科カンアオイ属)が、世話もしないで放っておいたのにしぶとく生きています。
本州(近畿地方~島根県)、四国の山地の林内に生える多年草で。、葉は卵円形~卵状楕円形で長さ6~8cm、鈍頭で基部は心形、両側に耳状にはりだすことがあります。表面に雲紋がよくでます。
花は淡紫褐色で直径2cmほど、萼筒の入り口がぎゅっとくびれているのが特徴です。
カンアオイ類は、ギフチョウの食草となるので知られていますが、最近自生地が激減しつつあり、その結果を受けて、これを食草とするギフチョウも減少し、いまでは絶滅危惧種Ⅱ類に分類されています。
残念ながら庭に生えるミヤコアオイにはギフチョウが飛来した記憶はありません。

フタバアオイ:双葉葵(三葉葵は双葉葵)

2015-04-03 17:12:08 | 植物観察記録

10年ほど前、庭にわずかな株を植えておいたフタバアオイ:双葉葵(ウマノスズクサ科カンアオイ属)が年々少しずつ広がって今では畳一畳ほどにも広がって、根元に赤い花をつけています。
フタバアオイは、もっぱら自動的な同花受粉で結実するといい、また集団を作って生育する性質があるので、我が家の庭でもまだまだ広がっていきそうです。
本州福島県以南、四国、九州の山中の樹陰に生える多年草で、芽の中から1本の茎が伸び先端に柄のある長さ4~8cmのハート型の葉を必ず2枚互生します。和名はこのことからきていますが、賀茂神社の祭に使われることからカモアオイの別名もあります。

花期は3~5月で、葉の付け根から花柄をのばし、紫褐色の花を下向きに1個つけます。花弁のように見えるのは3個の萼片で、直径約1.5cm、下半分は寄り添うだけで合着しない椀形になり、上半分の三角上の裂片は強く外側に反り返り浅い釣鐘状になります。
初夏の京都の風物詩、下・上二つの賀茂神社の葵祭は、もともと賀茂祭といわれていましたが、元禄7年(1694年)再興されたとき、内裏宸殿、勅使、供奉者の衣装から牛車にいたるまですべてフタバアオイ:双葉葵を飾るようになってから葵祭と呼ばれるようになったといわれます。
黄門様の印籠でおなじみの三つ葉葵はフタバアオイを巴形にデザイン化した徳川家一門の紋所です。桐の紋所を欲しがった秀吉と違い家康は朝廷からの菊の紋章の話を断って、徳川一門のみが使うことができる紋所として、賀茂神社にも所縁のある葵を使い続けたというはなしがあります。本当の話かどうかは別にして、秀吉と家康の出自と気位の違いがあらわれているような気もします。

コゴメイヌノフグリ:小米犬陰嚢(今は珍しくても) 

2015-04-01 08:52:22 | 植物観察記録

京都植物園の櫻苑の下草のなか、紫色の花をつけたオオイヌノフグリのそばに、よく似た白い花をつけた見慣れぬ草が生えていました。
コゴメイヌノフグリ:小米犬陰嚢(ゴマノハグサ科クワガタソウ属)です。
小石川植物園が1961年にヨーロッパから種子交換で入手して栽培を始めたものが園内に広がり、やがて東京都内の市街地の空き地や道端に生育するようになっているといいます。
一般にまだよく知られていないコゴメイヌノフグリですが、ここ京都植物園のも種子交換で手に入れたといいますから、交換相手は小石川植物園であったのかもしれません。
花はオオイヌノフグリよりも一回り小さくて直径6~7㎜、4裂する花弁は純白色で、基部のみわずかに黄色を帯びます。
いまはまだ関西では見られないこの草ですが、オオイヌノフグリと同様にたちまち広がってゆくことになるのでしょうか。