むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

アマナ:甘菜(食べるに忍びない?) 

2014-03-30 08:08:06 | 植物観察過去ログについて

桜で知られる八幡市背割堤の土手の一角に、アマナ:甘菜(ユリ科アマナ属)が固まって咲いていました。地中の丸い鱗茎が甘く食用となることからこの名があります。
本州福島県以西、九州に分布し、日当たりのよい草地や畑の畦などに生える多年草で、葉は、長さ15~25cm、幅5~10mm、白緑色の線形で根元に2個つき、中脈は時として白い筋になります。
3~5月、高さ15~20cmの花茎に白地に紅紫色の筋が入った花をふつう1個つけます。花は日があたると開き、直径は2~3cm、花弁は6個で白地に紅紫色の筋が入ります。雄蕊は6個で花被片より短くなっています。
有史以前に大陸から移動したものという説もありますが、日本独特のものとして学名もAmana edulis HONDAといい、チューリップはこのアマナと極めて近い属です。
鱗茎の形がクワイ(慈姑)に似ているところからムギクワイ(麦慈姑)という別名があります。
菜というからには山菜です。もっと食べられていてもよいはずですが、あまりその話は聞きません。食べるに忍びない可愛い花ということしょうか。

シロバナホトケノザ:白花仏の座(さほど珍しくもない?) 

2014-03-29 16:05:22 | 植物観察過去ログについて

花見には少し早い28日の八幡市背割り堤で見かけたのがシロバナホトケノザ:白花仏の座(ソソ科オドリコソウ属)です。
普通のホトケノザの花は紅紫色で、茎も葉も赤色を帯びているの対し、こちらは花は純白、葉や茎も紅色を欠いて薄緑が勝っています。
いわゆる白花変種といわれるもので、顕花植物の中で、本来は色のついた花を咲かせるはずの種で、花弁において色素が形成されず、白い花を咲かせる個体にあたるものと考えられます。カルコン(黄色)、フラボン(淡黄色)、アントシアン(赤や青)などの各色素の発現に関わる遺伝子の異常に起因して生じ、花弁の細胞は一般に葉緑体が発達せず透明に近いので、雪と同様に光の乱反射で白く見えるとされます。
この種の白花は、和名に「シロバナ」を冠するもの(シロバナタンポポなど)は基本的に変種または別種であり、白花変種は「種名(白花型)」のように表記されます。ただ、白花変種に「シロバナ○○」といった和名を与える場合もあるのでややこしくなります。
シロバナのホトケノザは種名となっているかどうかはさだかではありませんが、ネットではシロバナホトケノザの名で数多く紹介されていましたのでこれに倣いました。
一般に植物でのアルビノは光合成組織に欠陥があるもので、白花変種が慣習的にアルビノと呼ばれる場合がありますが、正確には別のもので、植物のアルビノはクロロフィルが合成できずに光合成組織が白化した個体で、このような個体は独立栄養が営めないため、種子中の栄養を使い切ってしまった時点で枯死することになります。
白変種は、アルビノと異なり、正常な個体なので、遺伝情報に白花である事が既に含まれており、遺伝的には安定しているとされています。1年後、このシロバナホトケノザの生育状況がどうなっているか、同じ場所で確かめたいと思っています。

ユキワリイチゲ:雪割一華 (今年も行ってきました)

2014-03-27 15:41:49 | 植物観察過去ログについて
滋賀県甲賀市土山の瀧樹神社境内にユキワリイチゲ:雪割一華(キンポウゲ科イチリンソウ属またはアネモネ属)の群落を見るツアーが雨のためあえ無く中止となり、急遽ミホ ミュウジアム行きに変更になったことは「むかごの高槻」に書きましたが、少し癪なので、後日天気を見計らって篠山市大宮前追手神社へ見に行きました。
昼前なのに気温が低いのか花の開き加減がイマイチなので、以前見つけていたユニトピア篠山にまわりました。
そこでは、例年より花数は少なかったですが、春の日を浴びて満開のユキワリイチゲに出会うことができました。
昼過ぎ、天気も良く気温も上がってきたので、執念深く追手神社へ取って返しましたが、どういうわけか、陽があたっているのに半開きで、花弁も短いように見えます。

ユニトピア篠山にて


追手神社にて

半開きと満開のユキワリイチゲ、いずれもそれなりの美しさですが、ほぼ同じところで、同じ時間なのに品種が違うのではないかと思うほど違うのが不思議に思えてきました。
なお、3月16日のフクジュソウの記事で、「ギリシャ神話で混同されるように、フクジュソウ属とアネモネ属は互いに似ていますが、その区別は、前者は萼がはっきりし、萼の下に苞葉がなく、一方アネモネ属は、萼が花弁化し、花茎の上部、花の下に大きな葉状の苞葉が数枚つきます。日本には16種のアネモネ属の仲間が自生しており、イチリンソウ、ニリンソウ、セツブンソウ、ユキワリイチゲ、アズマイチゲなどが含まれます。」と書きましたが、牧野図鑑などではこれらはアネモネ属となっていますが、イチリンソウ属としているほうが多いようです。

サンショユ:山茱萸(黄金と珊瑚と) 

2014-03-21 06:04:42 | 植物観察過去ログについて
僅か1月ほど前、家の前の土手に植えたサンシュユ:山茱萸(ミズキ科ミズキ属)の赤い実に雪が降りかかる姿を取り上げました。(’14年2月15日記事)
そのサンシュユがいま枝いっぱい黄金色の花を咲かせています。花の間に小鳥も食べ残したのか赤い果実も見えます。早春、葉に先立って黄色い花をつけるので春黄金花(はるこがねばな)、秋は赤い実で秋珊瑚(あきさんご)と季節によって呼び名が変わるサンシュユですが、今の時季、黄金と珊瑚が同時に見られるという贅沢な風景です。

ヤマシロネコノメソウ:山城猫の目草(どっこい生きていた)

2014-03-19 09:52:33 | 植物観察過去ログについて
3月8日、ポンポン山に自生するフクジュソウを見るのに、ふつうは西尾根道をとるのに、今年は久し振りで竈ケ谷を遡行するルートをとりました。昨年の台風18号による豪雨被害が気になっていたからです。
寸断された登山川沿いの道は各所で迂回するなどであらかた修復がなされていましたが、豪雨の被害は想像以上で、川沿いの岩に付着していたいろいろな草は殆ど流されて岩だけが露出している状況でした。
特に気になっていたこの地域特有の植物であるヤマシロネコノメソウなかなか見つからず、川沿いの道が終わるあたりの岩の、それも下流側の平面でやっと見つけることができました。
トウノウネコノメソウの変種で,京都地方に分布するものがヤマシロネコノメソウとされており、萼裂片は方形、雄しべは萼裂片から突き出し、萼裂片に毛が多いのが特徴とされています。
僅かに残ったヤマシロネコノメソウ、果たして以前のように復活するのかどうか気になりましたが、現地で活動している自然保護団体の方から、もともと渓谷に育つ草なので、大水で流されるのは織り込み済みで、回復にはそう時間はかからないはずだと利いてなるほどと安心しました。

フクジュソウ:福寿草(神話と学名)  

2014-03-16 09:12:49 | 植物観察過去ログについて
このところ毎年の恒例になっているポンポン山西山稜に自生するフクジュソウ:福寿草(キンポウゲ科
フクジュソウ属)を見に行ってきました。
シカ除けの柵を作るなどボランティアの方々の熱心な保護活動で守られてきたこの山のフクジュソウですが、今年は柵の下を堀りくぐって侵入したであろう猪の仕業とかで、ずいぶん数が減っていて、獣の食害の激しさを感じさせられました。
寒さの中で真っ先に春を告げるフクジュソウには、洋の東西を問わずいろいろな伝説が語り継がれています。
なかでも有名なのはギリシャ神話の美青年アドニスの話です。
美の女神アフロディテ(ローマ神話のヴィーナス)には、アドニスというお気に入りの美青年がいました。ギリシャ神話の中でも1番の美しさを持つアフロディテに迫られても、幼かったアドニスはそれを愛として受け取ることができず、恋愛ごとよりも狩りに夢中でした。アフロディテが最高神ゼウスに呼び出された間に、アドニスは狩に出かけ、そこでイノシシに出会い、勇敢に立ち向かいますが、逆に牙に突かれ、血に染まって息が絶えます。その血を吸った大地から咲いた赤い花がアドニスつまりフクジュソウだというのです。ちなみにアドニスを刺した猪はアフロディテの愛人である軍神アレスがアドニスへの嫉妬心のために送り込んだといわれています。
このアドニスを取り込んだ学名Adonis amurensisは、日本でいうフクジュソウの属名で、花は黄色です。
ギリシヤ神話で赤い血を流したアドニスの化身はふつう学名anemone coronariaのアネモネとされています。アドニスの流した赤い血から生え出た花は、赤い花色を持つアネモネのほうがぴったりするのですが、西アジアからヨーロッパにかけては数種の赤い花を咲かせるフクジュソウが分布するといいますからフクジュソウの学名にAdonisが入っていてもそれほどおかしいとはいえません。ただキンポウゲ科には、別にリンネによって設けられたアドニス属があるとなると、この辺の混乱は少々ややこしい話といえます。
ギリシャ神話で混同されるように、フクジュソウ属とアネモネ属は互いに似にますが、その区別は、前者は萼がはっきりし、萼の下に苞葉がなく、一方アネモネ属は、萼が花弁化し、花茎の上部、花の下に大きな葉状の苞葉が数枚つきます。日本には16種のアネモネ属の仲間が自生しており、イチリンソウ、ニリンソウ、セツブンソウ、ユキワリイチゲ、アズマイチゲなどが含まれます。

ザゼンソウ:座禅草(発熱に関係するミトコンドリア)

2014-03-12 08:54:10 | 植物観察過去ログについて
伊吹山麓のセツブンソウ見て、今津弘川のザゼンソウ:座禅草(サトイモ科ザゼンソウ属)へ回りました。
仏像の光背に似た黒紫色の仏炎苞のなかにちんまりとおさまった黄色い花穂を、座禅を組む達磨大師のすがたに見立ててこの名があり、ダルマソウ:達磨草とも呼ばれます。
ミズバショウと同じ仲間ですが、開花時期は1月下旬から3月上旬とザゼンソウのほうが早くなっています。
開花する際に肉穂花序で発熱が生じ、約25℃まで昇温し、周囲の雪を溶かして、いち早く顔を出し、そのうえ花から強い悪臭を出して、この時期少ない虫を独占的に呼び寄せるための戦略をとっています。
最近の研究でザゼンソウの発熱に細胞内のミトコンドリアが関係していることがわかってきました。
ミトコンドリアは葉緑体でつくられた糖を分解してエネルギー源(アデノシン3リン酸・ATP)を生産していますが、ザゼンソウではミトコンドリアが熱生産にも関与しているというのです。ザゼンソウは雌性先熟で、雌期に発熱し、雄性期に発熱を終えます。またミトコンドリアの量は雌性期から雄性期に移行するのにともない減少します。ザゼンソウの発熱は雌から雄への性転換を促進するためとの説もあるそうです。
最初の雌期は5~7日くらいですから、花(肉穂花序)の温度が高いほど雌期から雄期への性転換が早く進むことがわかったといいます。
悪臭があることから英語ではSukunk Cabbageという呼び名もあるというザゼンソウですが、複雑な構造を秘めて、残雪の間にユーモラスな姿で春の訪れを告げていました。

セツブンソウ:節分草(雪中に開く) 

2014-03-11 09:22:17 | 植物観察過去ログについて


毎年恒例になっている湖北地方へ、早春に咲く花を見にゆくドライブを楽しみました。
目的は伊吹山麓大久保に咲くセツブンソウ:節分草(キンポウゲ科セツブンソウ属)と、今津弘川のザゼンソウ:座禅草(明日記事)で、両方一日でまわろうと280㎞のロングドライブトなりました。
節分のころに咲くのでこの名があり、主に石灰岩地の樹林内に群生する高さ5~15cmの多年草です。茎の上部にふぞろいに細かく切れ込んだ葉が2個対生します。花期は2~3月、茎の先に直径2cmほどの花を1個つけます。
白い花弁のように見えるのは萼片で5個あり、花弁は黄色の蜜腺に変化しています。雄しべの葯は紫色で、白い萼片とのコントラストがきれいです。
大久保のセツブンソウ群落は全体的に雪に覆われていましたが、初夏には地上部は枯れてしまいスプリングエフェラル(春の儚い命)といわれるセツブンソウは、健気に雪間から顔を覗かせて、儚く短い命いっぱいに咲かしているようでした。
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ターサイ:搨菜(デザイン的な野菜) 

2014-03-06 09:15:03 | 植物観察過去ログについて

植物園の一隅に真ん丸な形の濃い緑の野菜が育っていました。中心から外縁に向かって整然とならぶさじ形の葉は、一つのデザインをなしています。
ターサイ:搨菜(アブラナ科アブラン属)です。
白菜と同じ仲間で、中国の代表的な冬野菜です。長い葉柄の先に楕円形の葉をつけ、そのかたちがスプーンに似ていることから、シャクシナ:杓子菜、収穫の季節からキサラギナ:如月菜などの別名があります。
中国料理に使われて人気があり、ネットにはいろいろなレシピが載っています。
わが国でも近年、栽培が拡大していて、静岡県、長野県、北海道などが主産地となっています