むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

ヒモヅル:紐蔓 (希少なシダ植物)

2016-08-31 09:14:27 | 植物観察記録
滋賀県竜王町鏡山山麓のハイキングコースにヒモヅル:紐蔓(シダ植物ヒカゲノカズラ科)が、木に絡みついて這い登っていました。
近畿地方以西、紀伊半島、中国地方西部、九州地方などの一部の山地の疎林に生じる常緑性のシダで、茎の主軸は数メートルに達します。
かつては生け花の材料として乱獲されたこともあり、最近では森林伐採や土地造成などにより顕著に減少していて、環境省RDBⅡ類(VU)に分類されているほか、滋賀県では絶滅危惧種Ⅰ類、和歌山県では絶滅(EX)など希少種となっており、各地で保護か活動も行われています。
鏡山のハイキングコースでも見かけたのは1ケ所だけだけでした。ヒカゲノカズラの仲間とあれば、2叉分岐に見るように、最初に地上に進出した最も古い植物の仲間とおもわれます。元気で生き延びてほしいものと願わずにはいられませんでした。

ヒモヅルの胞子葉

高野山不動坂の女人堂近くで見た、これも今では珍しくなっているヤマシグレ:山時雨?(レンプクソウ科ガマズミ属)です。

2016-08-25 19:15:42 | 植物観察記録

高野山不動坂の女人堂近くで見た、これも今では珍しくなっているヤマシグレ:山時雨?(レンプクソウ科ガマズミ属)です。
本州福島県以南、四国、九州の山地~亜高山の林床や林縁にはえる落葉低木で高さは2mほどになります。
分布から見ると昨日取り上げたソハヤキ要素植物のひとつとおもわれます。
対生する葉は長さ5~12cm、幅3~6cmの長楕円状披針形~卵形で、枝先に集まってつく傾向があります。
6~7月、枝先に散房状花序をだし直径2~3cmの白色~淡紅色、ときに暗紅色の筒状花をつけます。果実は核果で、長さ7~8mmの広楕円形で、はじめは赤くのちに黒く熟します。
マルバミヤマシグレと呼ぶこともあり、背丈が1mほどのをミヤマシグレとすることもありますが、両者の区別は背丈のほかは難しいようです。
和名ヤマシグレのシグレは、山で出会う時雨のことなら情緒がある名だと思いましたが、実は時雨ではなく、京都地方のことばでガマズミのことをシブレといっているのが訛ったのだとありました。
APG分類で、ガマズミ属はスイカズラ科からレンプクソウ科に変わりました。レンプクソウ科は1科1属1種のレンプクソウだけでしたが、新しい分類でレンプクソウ属に加え、ニワトコ属、ガマズミ属が加わってにぎやかな科になりました。

シコクママコナ:四国飯子菜(そはやき要素植物の) 

2016-08-24 09:38:25 | 植物観察記録


高野山麓極楽橋から不動坂を上り、女人堂近くになったあたりに咲いていたのがシコクママコナ:四国飯子菜(ハマウツボ科ママコナ属)です。
ママコナの仲間は半寄生植物の1年草で、紅紫色の花冠は筒状で先は唇形となり、下唇は浅く3裂して内面に黄白の2条の隆起があるので、これを米粒に見立てて飯子菜の名があるといわれますが、別に未熟な種子が米粒に似ているからという説もあります。
ママコナの区別は花の付け根の苞の鋸歯の有無、花冠の色、花冠内部の黄色の斑点の有無などでされますが、高野山のものは、苞葉に刺毛状の歯牙を散生するするほか、下唇弁の色が白っぽく、弁の奥に黄色い斑点が広がっていること、分布地の共通性などからシコクママコナと判断されます。
シコクママコナはソハヤキ要素植物のひとつとされています。このなじみのない言葉は、漢字では「襲速紀」と書き、南九州の古名「襲国」(そのくに)のソ、豊予(ほうよ)海峡の旧名「速吸瀬戸」(はやすいのせと)のハヤ、「紀伊」のキをつないだ名称で、31年に京都帝大の小泉源一博士が提唱したもので、ソハヤキ要素植物は、九州山地と四国山地、紀伊山地に特徴的に分布する植物を指します。
現在ではソハヤキ地域は、関東地方の秩父や日光までを分布域に含む地域として理解されていて、これらの植物は中央構造線に沿うように分布が見られ、中国南西部や東部ヒマラヤのアジア大陸に起源を持つ植物と指摘されているものも多いといいます。主な種類としては、ヤハズアジサイやクサヤツデなどが挙げられ、紀州地域の植物相を特徴付ける種類となっていいます。
シコクママコナは分類上ミヤマママコナ(’05年8月31日記事)(12年10月6日記事)の母種とされ、ほかに苞が葉状で、毛状に長くとがった鋸歯があるママコナ(10年10月19日記事)などもあります。

モミジカラスウリ:紅葉烏瓜(花は小さく実は大きく) 

2016-08-21 15:37:54 | 植物観察記録



野山女人坂(不動坂)を覆うように伸びたモミジカラスウリ:紅葉烏瓜(ウリ科カラスウリ属)のつるに青い実がぶら下がっていました。
本州紀伊半島以西、四国、九州に分布し、山地に生えるつる性の多年草で、葉は卵心形でモミジのように
掌状に5~9裂するのでこの名があります。
雌雄異株で、花は比較的小さく径3㎝以下となり、周辺のレース状の糸もカラスウリほどは長くありません。(‘05年7月5日記事)逆に、秋に熟す赤色で橙色の縦縞の入る卵形の液果は、長さが10㎝ほどあり、カラスウリの5~7㎝よりも大きくなります。
カラスウリと違って、分布地の関係からか、めったにお目にかかれないモミジカラスウリですが、今回はたまたまカラスウリの記事と連続することになりました。

カラスウリ:烏瓜(夏の短夜に咲く) 

2016-08-15 09:21:25 | 植物観察記録
いつも通る散歩道にカラスウリのつるがあり、早朝、しぼんだ花殻がいくつも見えました。
夕方蕾を取って帰り花瓶に挿しました。
夕方6時45分、わずかに蕾の先が動きはじめ、わずか15分でほとんど開花、30分も経つと白いレースの先まで伸びましたが、以前見たようにはレース糸の先端部がすっきり伸びず少し縮じれてています。
調べてみると、持ち帰った蕾は雄花のものでした。雄花は雌花に比べて開花が1時間程はやく、花びらが大きくて先の方が縮じれるとありました。
時間を追って開花を観察しました。










以前撮った雌花(花弁の先端まで伸びている)

カラスウリ:烏瓜(ウリ科カラスウリ属)は、太い根のあるつる性の多年草で雌雄異株、三角状円心形の葉は白い短毛があり柔らかい手触りです。何といっても特徴的なのは、夕方に開く真っ白な花で、5~6cmの花筒の上の花冠は5裂し、裂片の縁はさらに長いレース状になって垂れ下がります。
受粉の仲立ちをするのがスズメガなど夜行性蛾なので、夜目にもくっきり目立つ白い大きな花をつけ、甘い香りを放つ戦略です。
誰でも知っている秋の真っ赤な実と違って、この白い幻想的な花は、時間的に一般の人の目に触れにくく、あまり知られていません。この日、散歩道で話をした近所の方に開花状況の写真をメールしますと、初めて見て大いに驚いたというコメントが返ってきました。

アサガオ:朝顔(銘花を育てる)

2016-08-10 11:05:52 | 植物観察記録

公益財団法人遺伝学普及会というところへ書籍を注文したらおまけ?にアサガオの種子がついてきました。
江戸時代から幾度ものブームを繰り返し、保存されてきた変化朝顔の系統がさきの大戦の影響で多くが失われたが、少数の愛好家の手で保存されてきたものを遺伝学研究所の竹中要博士が収集・保存活動されました。分与した種子の改変、改良および第三者への分譲等はは行ってはいけないとの条件が付いたこの種子の名前は「青林風南天葉白綴淡紅筒咲」という立派な名前でした。名前の由来は、葉に切れ込みがあり捻じれるので林の中を風が吹き抜けるような風情があり、花弁が白く縁にプリーツ状のシワがあり、筒の部分がわずかに紅色を呈するということからきているといいます。
これは大事に育てねばと、初めての行灯作りに挑戦したのが数日前から咲き始めました。
咲いた花は大仰な名前に反して直径5.5~6㎝、長さ4.5~5.5㎝の白い小型の花でした。
朝顔市で売られているような大型の色鮮やかな花を想像していただけに少しがっかりしましたが、よく見ると、さすが銘花だけあって、花といい葉といい、なかなか味があります。
小学生が学校で必ず育てるほど誰にもお馴染みのアサガオ:朝顔(ヒルガオ科アサガオ属)ですが、もともと原産は中國西南部からヒマラヤの山麓地帯といわれ、日本には古く中国から伝来しました。花としてだけではなく、種子が牽牛子という下剤としての効用も重宝されたようで、「今昔物語」に税金を滞納した某が、取り立てに来た役人に朝顔の種子を入れた酒を振る舞い、下痢をさせて追い返したという話が残っています。試したことはありませんが、知らずに種子を食べた子供がひどい下痢になったという話を聞きます。
せっかくの銘柄品の朝顔ですが、種子ができても、第三者への分譲を禁止されているので、ひたすら自家で作り続けてゆかねばなどと考えています。

オミナエシ:女郎花(多彩な名づけ)

2016-08-08 09:45:33 | 植物観察記録

休耕田を利用して盆花としてのオミナエシ:女郎花(オミナエシ科オミナエシ属)を栽培している京都宕陰地区の越畑へ行った来ました。
山地や丘陵の日当たりのよい草地に生える多年草で、秋の七草のひとつとして知られているオミナエシも近頃は自生のものを見ることは少なくなっています。
高さは1mほどになり、地下茎は横にはい、先端に新苗をつくってふえます。ここ越畑でも同じ畑で毎年栽培されている様子ですが、盆花としての市場が小さくなっているのか、年々栽培面積が減りつつあります。
花期は8~10月、茎の上部で枝分かれし、枝先に黄色の小さい花を多数つけます。
昔から親しまれた野の花だけあって、万葉集での表記も乎美奈蔽之、娘部四、娘子部四、姫押、娘部思、娘部志、姫部思、佳人部志、美人部師など多彩です。
逆に、根茎を乾燥したものを敗醤といって漢方薬に用いられますが、醤油の腐ったような匂いがするのでこの名がついています。
漢方薬でなくとも、越畑のオミナエシ畑でもかなり強い花の匂いがしましたし、花瓶に挿しておくとさらに強烈な悪臭がします。
オミナエシを女郎花ともいう語源は諸説ありますが、黄色い花を粟飯に例え、オミナ(女)、エシ(飯)、とし、白い花の仲間を米飯にたとえて、オトコ(男)、エシ(飯)=オトコエシとしたという有力説があります。それかどうか、謡曲の「女郎花」は「おみなめし」と読んでいます。
また「女郎」の語は、もとは高貴な女性を指す言葉で、後世のような商売女を意味するものではありませんでした。
長い暦史の中で多くの人に愛されてきたオミナエシですが、少々人気が薄れつつある気がするのは淋しいことです。

越畑のオミナエシ畑

オニバス:鬼蓮(巨大な葉に小さい花)

2016-08-05 15:12:47 | 植物観察記録

巨大な葉に小さい花

オミナエシ咲く京都嵯峨越畑地区へ行く途中亀岡市平の沢池に立ち寄りました。
ここはオニバス:鬼蓮(スイレン科オニバス属)の全国的にも珍しい自生地として知られています。
葉や萼、果実など全体に棘があるのを鬼に例えてこの名があります。
池や沼に生える大型の1年生の水草で、葉は直径2mを超えるものもあります。
ところどころに咲く花は直径約4㎝で、萼片は緑色で棘が多く、花弁は紫色で多数あります。
大きく丸い葉で平の沢池の広大な水面を覆いつくしたオニバスは、壮大な景観をなしています。
池一面に広がるこの巨大で剛強そうなオニバスの葉も、冬になるとすべて姿を消すというのが信じられない気がします。

広い水面を覆いつくすオニバス