むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

コケイラン:小蘭(雲ケ畑に頑張る) 

2016-05-31 09:20:33 | 植物観察記録



花が折り取られた株の葉

洛北雲ケ畑の林道脇ガードレールの外側にコケイラン:小蘭(ラン科コケイラン属)が咲いていました。
案内いただいた方の話では、雲ケ畑でも例年ここにだけ見られるとのことで、今年咲いた花は心無い人間によって折り取られたのが、幸いにもすぐ近くで、小型の花が今年初めて咲いたそうです。
日本各地の山地のやや湿った林内に生える多年草で、偽球茎は卵形、葉は長さ約25㎝の披針形でふつう2個つき、表面にはひだがあります。
花期は5-7月、高さ30-40cmの花茎が直立し、10-40個の黄褐色の花を総状花序につけ、下方から開花してゆきます。苞は長さ4-6mmの狭披針形で、先は鋭尖頭、萼片と側花弁は黄褐色披針形で長さ約1㎝、唇弁は倒卵形、萼片と同長、基部近くで3深裂し、白色で紅紫色の斑点があります。距はありません。
和名の小蘭は、シランやガンゼキランの類を中国で蘭といい、印象が似ているが小型だからという意です。
多少エビネに似ているが葉が狭くて長いということからササエビネ(笹海老根)の別名もあります。

ボウラン:棒蘭(形そのままの名前)      

2016-05-28 18:26:07 | 植物観察記録

牧野植物園で変わった形の蘭がつぼみ(または花後)?をつけていました。
名前を聞けば納得のボウラン:棒蘭(ラン科ボウラン属)です。
本州紀伊半島以西、四国、九州の温帯でハゼなどの落葉樹に着生する多年草で、高さは30㎝ぐらい、時に懸垂します。
茎は針金状ですが、緑色の葉鞘が順々に外側を覆っているので、直接は見えません。
葉は2列に互生し、長さ6~12㎝、径3~4㎜、多肉質で棒状を呈し、これが和名の由来となっています。
花は初夏、径10程で、横向きに1~5個、短い総状につきます。花弁、萼片ともに淡緑色、写真では定かではありませんが、唇弁は黒褐色を帯びます。花には異臭があるそうです。
普通の図鑑には載っていないことが多いので珍しいランに入っているようです。

トビカズラ:飛蔓(自生地限定) 

2016-05-25 10:10:05 | 植物観察記録



高知県立牧野植物園でちょうどトビカズラ:飛蔓(マメ科トビカズラ属)の花が咲いているのに出会いました。
植物園だから珍しい植物があるのは当たり前にしても、案内をしていただいた学芸員の方がかなり力を入れて説明してくれたことから、園内でも結構珍しく自慢のものにランクされているようでした。
それもそのはず、もともとは中国南部に分布する常緑の蔓性植物で、日本での自生は熊本県菊鹿郡相良町の俗称七枚畑の丘の上にのみ見られる推定樹齢1000年、高さ15m、周囲51㎝のトビカズラは、自生最北限として国の特別天然記念物になっています。トビカズラの名は遠くから飛んできたという伝説から、また別名のアイラトビカズラはもちろん地名の相良からきています。
木が珍しいだけではなく、その開花が極めて珍しいものとされています。どういう訳か牧野植物園では毎年開花を見るとのことですが、それでもその満開に出会えたのは幸運でした。
晩春~初夏に咲く花は暗紫色の大型の蝶形花で、長さ12~30㎝の花序に多数つき、一種独特の甘い香りを放ちます。
地元では、古来、留学層が中国から種を持ち帰ったとの説が有力だそうで、弘仁5(814)年、相良の源平合戦のおり、燃え盛る炎のなかで、観音様がこのアイラトビカズラに飛びうつり、難をのがれたとの伝説もあるそうで、この木を誇りとする地域の思い入れが伝わってくるようです。

ハシナガヤマサギソウ:嘴長山鷺草(長い名前は長い距から) 

2016-05-24 10:47:41 | 植物観察記録



四万十川最上流に位置する遠山湿原のあちこちに咲いていたのがハシナガヤマサギソウ:嘴長山鷺草(ラン科 ツレサギソウ属)でした。
日当たりのよい山地の低草地に生える多年草で草丈20〜40㎝、茎にはやや稜があり角張ります。葉は線状長楕円形〜狭長楕円形でふつう1個、他は小さくて鱗片葉に移行し2〜5個あります。
花期は5〜7月、花は黄緑色で花序には8〜12個の花がつきます。
ヤマサギソウやオオヤマサギソウに似ますが、距が長く20㎜以上になるのが特徴で、和名はこの長い距を鳥のくちばしに例えたものとされます。
北海道、本州、四国、九州と広く分布はしますが、各地で絶滅危惧種に分類されることが多く、ここ高知県では絶滅危惧種Ⅰ類となっています。
先年、高峰高原で見たタカネサギソウを取り上げています(’14年8月5日記事)。同じ仲間ですが遠山湿原のハシナガヤマサギソウのほうが多少ひ弱な感じがしました。


ショウベンノキ:小便の木(珍名ナンバーワン?)

2016-05-23 13:32:23 | 植物観察記録

高知県立牧野植物園でショウベンノキという変わった名前の札が下がった木を見かけて、これ何?とばかり思わず写真を撮っていました。
ショウベンノキ:小便の木(ミツバウツギ科ショウベンノキ属)は、四国、九洲、沖縄、台湾の山地に生育する常緑小高木で高さふつう3~4m、高いものでは10mを超えます。
対生する葉はふつう3出複葉、まれに小葉が1個のものや5個のもあり、革質で光沢があり、裏面中脈は隆起します。
初夏、枝先に円錐花序を出直立し、花茎5mmくらい、花弁、萼片、雄しべ5個ずつがつきます。
果実は肉質の液果で、長さ7~10㎜の広楕円形で11月ごろに赤く熟します。
へんな植物名の筆頭にあがってもよいこの名前は、春先に枝を切ると、切り口から臭気のある樹液が大量にあふれ出ることからきているといいます。一度聞いたら忘れないはずのショウベンノキ、高知で初めて知ったのは、分布の中心は九州以南の海岸地ということなので納得しました。

ズイナ:瑞菜・髄菜(四万十で出会う)   

2016-05-21 10:19:22 | 植物観察記録

高知県四万十川上流の川端にズイナ:瑞菜・髄菜(ズイナ科ズイナ属)が咲いていました。
庭に鉢植えのコバノズイナ:小葉の瑞菜があり、北アメリカ原産で明治初期に日本に渡来となっていたので、本来の国産を見たいと思っていましたが、今まで出会うことはありませんでした。
調べてみるとそれもそのはずで、本州近畿地方南部、四国、九州に分布が限られる日本固有種とありました。
林縁や沢沿いに生育する落葉低木で、高さは1~2m、枝は横に広がり、互生する葉は長さ5~12㎝の卵状長楕円形で先は鋭くとがります。
花は5~6月、枝先に長さ10~20㎝の総状花序をだし、白色の小さな花を多数つけます。花は節に1~3個ずつ束生します。
和名や和歌山地方の方言で別名となっているヨメナノキは、若葉を食用にすることからきています。
ズイナの分類は以前ユキノシタ科でしたが、新分類ではユキノシタ目のズイナ科で、1科1属となっています。

ジンチョウゲ:沈丁花(珍しい果実)

2016-05-17 13:53:14 | 植物観察記録

植物園で珍しいジンチョウゲ:沈丁花(ジンチョウゲ科ジンチョウゲゾク属)果実を見かけまし。
遠くからも流れる甘い香りが春の訪れを告げるジンチョウゲは、中国原産の常緑低木で、庭木として広く植えられておなじみですが、果実を見るのは大変珍しいことです。
ふつう図鑑では、雌雄別株で日本では雄株が多いなどの記述があります。
ところが、“朝日百科植物の世界”によると「ジンチョウゲにはふつう果実はできず、実のなる木はごく少ない。これは、ジンチョウゲが雌雄異株で、日本には雄株しかないからだと説明されている。ところが、花を解剖して調べてみると、実のならない株の花にも、完全な雄蕊と雌蘂があり、形態的には立派な両生株である。原産地である中国の図鑑にも、雌雄異株とは書かれていない。ジンチョウゲ属の雌雄性が生理的な条件によるものなのか、調べ直す必要があるだろう」となっているそうです。
とすれば、実がつかない庭のジンチョウゲも両性株なのに何らかの理由で結実しないのに、この植物園のは、植物園だからといって特別に結実する株をえらんで植えているのか不思議なところです。

カルミア:アメリカ石楠花(つぼみが面白い) 

2016-05-15 12:50:58 | 植物観察記録

近所のお宅の玄関先にピンク色のカルミア(ツツジ科カルミア属)咲いていました。
ちょうど開いた花の間に蕾も見えます。お願いして写真を撮らせていただきました。
アメリカ合衆国東部原産の常緑低木~小低木で、公園や庭園に植えられ、アメリカシャクナゲ(アメリカ石楠花)とも呼ばれています。
葉は枝先に集まってつき、厚くてやや光沢があります。
5月ごろ白またはピンクの花が多数集まってつきます。
面白いのはつぼみの形で、金平糖のような形をしています。これが開いて五つの角がある直径2㎝ほどのお椀形の花になります。


ムサシアブミ:武蔵鐙(武蔵野国で生えない?) 

2016-05-11 14:38:28 | 植物観察記録

庭のムサシアブミ:武蔵鐙(サトイモ科テンナンショウ属)の大きな葉の陰に、先が丸まった特徴ある仏縁苞が見えています。
10年ほど前に買い求めた1本のムサシアブミが、秋には赤い果実をつけ、こぼれ種でしょうか何時の間にか庭のあちこちに何本か生えています。ムサシアブミなどテンナンショウの仲間は、栄養の具合で雌雄性転換することで知られていますが、最初の1本の株が雄、雌どちらであったか覚えていませんが、
どちらか一方では結実しないはずで、どうして増えたのか不思議です。あるいはすでに受精した株を買っていたのかもしれません。
海岸に近い林のやや湿ったところに多い多年草で、葉は2個つき、それぞれ3個の長さ15~30cmの大きい小葉があります。3~5月、葉の間から花茎がのび、仏炎苞に包まれた暗紫から緑色まで変化が多い筋が目立ちます。
名前の由来は、この仏炎苞の形を武蔵の国で生産された鐙にたとえたもので、武蔵の国に生えているということではないそうです。事実、ある図鑑では関西以西に分布するとしています。
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オダマキ:苧環(自生種はないが)

2016-05-10 17:27:43 | 植物観察記録

庭のオダマキ:苧環(キンポウゲ科オダマキ属)が咲いています。高さ30~40㎝になる多年草で、古くから栽培されてきたようで、ツートーンの配色と、花のうしろにのびる距の形が面白く、江戸琳派の絵にもよく登場するといいます。
4~5月、茎頭に数個の花をつけ、花は5個の萼片と5個の花弁で、萼片は円状楕円形で紫青色、花弁は長楕円形淡黄色、基部の半分は萼片の間から突き出して距となり、先は内曲します。
和名は、花の形を、紡いだ糸を中が空洞になるように丸く巻き付けたオダマキ(苧環)に見立てたものです。
野生のミヤマオダマキ、ヤマオダマキなどのほか、いろいろな園芸種の西洋オダマキなどがあり、単にオダマキという名からは野生の原種のように思えますが、高山帯に自生するミヤマオダマキの改良種との説があるものの由来は定かではなく、自生種はなく、園芸店で売られることもないようです。ただ、性質は強く、種でよく増えるため人伝いで広く普及しています。