むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

ワレモコウ:吾木香(高原に秋を告げる) 

2014-08-30 14:11:23 | 植物観察過去ログについて
ワレモコウ:吾木香(バラ科ワレモコウ属)の暗紅色の花が揺れて、高原に秋風が吹き始めます。
日本各地の日当たりのよい草地に生える多年草で、高さは50~100㎝になり、奇数羽状複葉の小葉は2~6対あり、長さ4~6㎝の長楕円形で先は丸く、ふちには揃った三角形の鋸歯があります。
花は夏から秋、枝先に暗紅色の小さな花が集まった長さ1~2㎝の穂につきます。花には花弁はなく、4個の萼片が花弁のように見えます。花は先端から下部に向かって咲きすすみます。
和名は、キク科の木香(モッコウ)というのがあって、古くから日本の木香の意味で我の木香という名があったのが、名前だけが本種に移ったという説がありますが、いま一つスッキリしません。ほかにも吾毛香、吾亦香、吾亦紅など書くこともあります。何年か前、離婚を決めたことをお母さんに告げるといった歌詞の「吾亦紅」という歌が流行ったことがありましたが、離婚と吾亦紅が何の関係があるのか、全く意味不明の歌ではありました。



ワレモコウの花の拡大:
円筒形で長い花軸を持ち、苞葉と小苞葉があり、花弁はなく、4裂する暗紅色の萼がある。雄蕊4個は萼より短い。
花は上から下へ咲きすすむ。

テウチグルミ:手打胡桃(簡単に割れる) 

2014-08-29 05:54:02 | 植物観察過去ログについて

高峰高原から小諸市へ下る道の途中ブルーベリーを買うために立ち寄った農家の庭先にたくさん実をつけたクルミの木がありました。
オニグルミほどには果実表皮に密生する毛が少なく、羽根状複葉ではあっても小葉の数が少なくて、一見してよく見かけるオニグルミとは様子が違います。
農家の主人にたずねるとカシグルミだと教えてくれました。
カシグルミともいわれるテウチグルミ:手打胡桃(クルミ科クルミ属)は、中国原産の落葉高木で、主に長野、新潟、東北地方栽培されます。幹の高さは約20m、葉は5~7小葉からなり、長さ9~27㎝の広~長楕円形の奇数羽状複葉で互生します。
雌雄同種、雄花穂は長さ10~15㎝、雌花穂は短く緑の花穂を垂れ下げます。
10月に成熟する果実は、肉質に肥大した花床が割れて中の堅果が落ちます。落ちたばかりの堅果は手で簡単に割れ、中身が食用にされます。
オニグルミは核面の凹凸が鬼のように醜いところから名がついているといいますが、テウチグルミは堅果を手でも割れるということからきていると思われます。トウグルミの別名もあります。

シラカバ:白樺(日本一の美林) 

2014-08-28 06:07:53 | 植物観察過去ログについて

高峰高原からの帰り、上信越道・長野道経由中央道の回り道を避けて、八ヶ岳の中央を横断するメルヘン街道から茅野へ出るコースをとりました。
一つには何回か訪ねている八千穂高原の日本一といわれるシラカバ(シラカンバ):白樺(カバノキ科カバノキ属)の美林に再会したいと思ったからです。
白い木肌が美しく、北海道、東北、関東地方北部、中部地方の山地と高原に分布し、北国の高地のシンボル的存在のシラカバですが、高地といっても高山にまでは及ばす、本州では上高地付近が上限だろうといわれています。
いわゆるパイオニア植物の代表格で、明るいところを好む陽樹で、自然の群落はしばしば山火事や放棄耕作地・牧場などの跡の新たに開けた場所に一斉に進出、成長しますが、後に陰樹が生長すると追い越されて枯れてゆく遷移を辿ります。それに寿命も長くはないので、ここ八千穂高原のシラカバの美林もこのままであれば遠くない将来に姿を変える可能性があります。
成長が早いだけに材は軟らかく腐りやすい欠陥があるものの、白い肌が喜ばれ山小屋の内外装やベランダノ手すり、柵などに利用されます。
また、樹皮が油性分を含むためよく燃えるので、世界的に松明として使われます。盛大な結婚式を華燭の典といいますが、この〝華“は樺のことを指し、樺の樹皮を燃やして婚礼の式場明るく華やかにしたことが語源だといいます。

ヤマオダマキ:山苧環(色形と名前)

2014-08-25 07:03:22 | 植物観察過去ログについて

褐紫色の茎

緑色の茎

山や高原へ行ったときは、できるだけ土地土地の“○○の花”、“○○岳の高山植物”といった類の案内書を買い求めることにしていますが、同じような花で変種としてその地方名がついているのはまだしも、どう見ても同じなのに別の名があったり、どう見ても色などが違うのに同じ名前であったりして素人は迷います。
高峰高原のあちこちで咲いていたのがヤマオダマキ:山苧環(キンポウゲ科オダマキ属)です。地元版案内書ではヤマオダマキとあり、萼片、花弁がともに黄色のものと萼片が紫褐色で花弁が黄色のものとの2型あるとしています。実際に見たのは写真のように花茎が緑色と赤紫色との2型で、距の先が僅かに褐色を帯びているものの、萼片も花弁もともに淡黄色のものでした。
あちこちで見た記憶では、自生のオダマキの花茎、距、萼片、花弁の色には変化が多く、それぞれに名前をつけるほどの変化でもなさそうで、多くの図鑑がしているように、全体が褐紫色のをヤマオダマキ、黄色のがキバナノヤマオダマキとするのが順当のように思えてきました。
花の形が、紡いだ糸を中が空洞になるように丸く巻き付けた苧環に似ていることからこの名があります。よく見る一名ムラサキオダマキといわれ紫色のオダマキは、自生ではなく古から観賞用として植栽されてきたものであり、ほかにもアメリカ、カナダなど多くの園芸品種がさいばいされています。

ゴゼンタチバナ:御前橘(葉を2枚追加で開花)

2014-08-24 08:55:42 | 植物観察過去ログについて

浅間連山東篭の登山の登山路脇にゴゼンタチバナ:御前橘(ミズキ科ミズキ属)が咲いていました。本州中部地方以北、北海道に分布し、亜高山帯の針葉樹林下か高山帯のハイマツの下などに生える多年草で、根茎は細長く地下にはい、この根茎から高さ10㎝くらいの地上茎をだします。
葉は卵形または楕円形で、茎の頂端に集生し4又は6枚輪生状につきます。4枚のものは極めて近接する2節に相対して生じたもので、6枚のものは1対の葉の脇から短い枝をだし、その上に各1対の葉がでたもので、ゴゼンタチバナはこの6枚の形のものでないと花をつけません。
4弁の花のように見えるのは開出苞片で、中央に小花が頭状に集まっています。
この花は終わると各々1つずつの果実となってかたまりとなります。('06年10月17日記事)
和名は最初に発見されたのが白山の御前峰で、タチバナは果実の形をなぞらえてつけられたといいますが、白い花を橘の花とする考えもあるようです。

ヤマホタルブクロ:山蛍袋(色ではなく付属体の形で)    

2014-08-23 15:39:49 | 植物観察過去ログについて
ホタルブクロ(キキョウ科ホタルブクロ属)は、山野草としては結構繁殖力が強いのか、家内が茶花として庭に植えた、普通のホタルブクロ、筒が二重のもの、八重のもの、花色も白、薄紅色、赤紫色などがあちこちに散らばって毎年咲きます。
原則的に白花で萼片の湾入部の付属体がそり返るのがホタルブクロ、赤紫色で、付属体がふくらむだけのがヤマホタルブクロと承知していながら、庭の花を見る限り花色だけでは両者は区別しきれない感じを持っていました。
池の平湿原に咲いていたのは、きれいな赤紫色で、そり返る付属体がなく、花茎もなよなよした感じで、まぎれもなくヤマホタルブクロでした。
ところが図鑑では付属体が発達しないシロバナヤマホタルブクロというのも載っています。
もともと両者は、生育地も山地か平地かとはっきり分かれているわけでもなく、花色だけでも区別できないということで、結局付属体の形で区別するという原則に戻りました。

ミヤマヤナギ:深山柳(果穂の綿毛が目立つ)

2014-08-22 08:56:14 | 植物観察過去ログについて

高峰高原にミヤマヤナギ:深山柳(ヤナギ科ヤナギ属)が白い綿毛をつけた果穂を伸ばしていました。
本州中部地方以北、北海道の亜高山から高山に生える落葉低木で、樹高や樹形は変化が多く、高さ1~2mで地をはう匍匐性のものや、立ち性のものでは、1本立ちで高さ7mに達するものもあります。
葉は互生し長さ3~6㎝、革質で滑らか、裏面は粉白色になります。
雌雄異株で、花は春から初夏、葉と同時に開花します。
果実はさく果で、6~7月、2裂して綿毛に包まれた種子を出します。
ミネヤナギとも呼ばれています。

ミヤマウラジロイチゴ:深山裏白苺(名前の通り 

2014-08-21 08:42:26 | 植物観察過去ログについて

高峰高原のツツジ園の遊歩道にミヤマウラジロイチゴ:深山裏白苺(バラ科キイチゴ属)が咲いていました。
本州中部および北部の亜高山帯に生える落葉小低木で高さ約1m、全体にか細く、下向きの小さい刺がまばらにあります。
奇数羽状複葉の葉は互生して、長さ8~15cm、小葉は1~2対あり、質は薄く縁は重鋸歯、名前の通り裏面は白い綿毛を密生し、葉柄に棘と軟毛があります。
花は夏、枝先や葉腋に1~数個つき、花色は白で平開せず、花びらより尖った萼片が目立ちます。
この種はヨーロッパに隔離分布し、赤く熟す集合果は食用になるので、多くの改良栽培品種があります。
ツツジ園では、この木に対し、園内ではあまり多くない名札がかかっていたので、かなり珍しいのかと思って調べてみましたが、それほどでもないと知りました。

ツガザクラ:栂桜(地味でも捨てがたい果実) 

2014-08-19 09:10:41 | 植物観察過去ログについて

池の平湿原の少し盛り上がった岩場にツガザクラ:栂桜(ツツジ科ツガザクラ属)が生えていました。
花期は過ぎて、茶色の果実(さく果)がきれいに並んで立ち上がっていました。
本州、四国の高山帯~亜高山帯上部の岩の隙間や礫地にはえる常緑小低木で、茎は地に伏して、上部は斜上し高さ10~15㎝、葉は小形の線形で、ツガのように密生します。日本特産でPhyllodoce nipponia MAKINOの学名があります。和名は葉がツガに似て、花が桜色でサクラのように5裂しているところからきています。
初夏に咲く花は、枝の上端に1~5個つき、淡紅色の壺状鐘形で、萼も濃い紅色、いかにも高山に似つかわしい美しさです。
亜高山帯~高山帯に生育するツツジ科の小低木の多くは壺状鐘形のかわいい花をつけ人気の高山植物となっています。よく似た花をつける仲間でも、液果になって食べることができるクロマメノキ(‘12年9月4日記事)や、萼が成長し多肉になり、さく果を包ん液果状になり食べられるアカモノ(’12年9月26日記事)、花が散ると子房が熟し、これが萼に包まれて段々肥大して白い球形のさく果になるシラタマノキ(’12年9月5日記事)など、果実の形がさまざまになって、花も実も楽しめます。
ツガザクラの場合、果実は地味ですが、行儀よく並んだ茶色の姿も愛嬌があるといえます。
近い仲間に花梗と萼が緑色で、花が白いアオノツガザクラがあります。(’11年8月7日記事)

シキンカラマツ:紫金唐松(立派な名前)   

2014-08-18 18:18:14 | 植物観察過去ログについて

八ヶ岳の中腹八千穂自然園にシキンカラマツ:紫金唐松(キンポウゲ科カラマツソウ属)が咲いていました。半日陰のためか花つきはよくありませんでしたが、紫の萼片(花弁)と黄色い雄蕊が美しく、紫金唐松というりっぱな和名のとおりの美しさでした。
本州中部地方の群馬、福島、長野の各県に生える多年草で、全体に無毛、粉白色で高さ1m位、紫色を帯び上部で分枝します。葉は3回3出複葉で互生します。
花は夏、茎の先に多数分枝し大きな円錐花序となり、多数の紅紫色の小花をつけます。花弁状の萼片は4~5個で長さ約6㎜、雄蕊は多数で黄色い葯がつきます。
紫金唐松の“唐松”は、花の形がカラマツの葉に似ているところからその名があるカラマツソウと同じ属であることからきていますが、シキンカラマツの花はカラマツの葉には似ていません。
シキンカラマツより分布域が広く、花色が白いのでシギンカラマツと呼ばれる姉妹品種もあります。