むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

シャクナゲモドキ:石楠花擬き(ダブルの擬き) 

2016-03-31 15:11:48 | 植物観察記録

春めいて彩の増した植物園の中でも、派手に赤い花をつけた中高木がありました。
最近よく目に付くようになったといわれるシャクナゲモドキ:石楠花擬き(マンサク科)です。
シャクナゲの名がありますがツツジ科ではなくマンサク科で、1個の花は、複数の花が集まって、一つのまとまった「花冠」を形成しています。
1848年英国の軍人でプラントハンターでもあったJ.G.Championが香港で発見したといわれ、学名Rhodoleia Championiiの小種名は彼の名をとっているといいます。別名のHong Kong roseも発見地からきています。ツツジ科、マンサク科、バラ科などが絡んだ不思議な名前です。



ナナミノキメタマフシ       

2016-03-25 07:55:20 | 植物観察記録

私市物園を散策しているとき、葉脇に緑色の蕾のようなものをつけた若木を見かけました。
周囲に自生と思われる何本かのナナミノキ:七実の木(モチノキ科)があり、ナナミノキにしては少し鋸歯が目立つ気がしましたがそれは若木のせいとして、この蕾のようなものは虫こぶではないかということになり、あてずっぽうで“ナナミノキ芽の膨れ五倍子”とネットで検索すると、「ナナミノキメタマフシ」というのがヒットしました。
虫こぶの名前は、通常“「寄主植物名」+「虫こぶが生じる部分」+「虫こぶの形態的特徴」+フシ”
ように規則的に命名されていることが多いので、こんな調べ方もできるということです。
この虫こぶの形成者はイヌツゲタマバエとなっており、中を割ってみるとそれらしい幼虫がはいっていました。
それにしても周囲に何本かのナナミノキがありましたが、この若木だけに、それもすべての葉脇に虫こぶがついているのは不思議でした。

ボックスウッド:セイヨウツゲ:西洋黄楊(不思議な語源)   

2016-03-24 06:54:05 | 植物観察記録

刈り込まれた低い垣根のボックスウッド:セイヨウツゲ:西洋黄楊(ツゲ科ツゲ属)が小さい花をつけています。
地中海沿岸(南ヨーロッパ・北アフリカ)や西アジアに自生し、日本には高知県安芸市の須藤信喜氏が北米から持ち帰り、繁殖栽培し、全国へ普及したといわれています。常緑性低木で小さい葉が密生し、刈り込みに強いことから庭木や生垣などによく用いられています。
ボックスウッドの名でよく知られていますが、“BOX”を辞書で引くと原義は「ツゲで作った箱」となっており、"BOXWOOD“では「ツゲ」または「ツゲ材」となっています。
英語で「箱」を意味する名詞 box は、俗ラテン語の buxis、更には古代ギリシア語の πυξίς (pyxis; ピュクシス)に由来するといい、さらにこの語はセイヨウツゲを指す πύξος (pyxos; ピュクソス)から派生したものだそうです。古くから細工物に使われ、セイヨウツゲの材で作られた小箱を「ピュクシス」と呼んだものが、のちに小箱一般を指すようになったといいます。
ギリシャの小箱は化粧箱のことだそうですから、日本でツゲの櫛が高級品となっていることと不思議な共通点があるといえそうです。

フサザクラ:房桜・総桜(花弁も萼のない桜) 

2016-03-23 08:59:03 | 植物観察記録


格別珍しくなくても、分布地が限られている植物の花時にぴったり会えるのはなかなか難しいものです
谷筋や崩壊地、やせ地などに多いフサザクラ:房桜・総桜(フサザクラ科フサザクラ属)などもそんな一つです。
何年か前に、秋、翼果(袋果をつけた木を見つけておいて、翌春わざわざ貴船の奥まで見に行ったのに、わずかなことで花の盛りが過ぎていたということもありました。(‘10年4月17日記事)
今回たまたま出会えたフサザクラは幸運にもちょうど花のさかりでした。3月下旬~4月、花の展開に先立って開花します。短枝の先に5~12個の花が集まってつく花には花弁や萼がなく、垂れ下がった雄蕊がよく目立ちます。花糸は白い糸状で、垂れ下がった暗紅色の葯の先端には葯隔が突出して見えます。花糸の基部にある淡緑色の雌蕊は多数で、柄があり柱頭は広がります。
和名の房桜・総桜は花のつき方からきているといいますが、およそサクラには似ない地味な花といえます。実際に、サクラとは全く関係なく、むしろ花の様子がよく似るヤマグルマやカツラと類縁関係があるといわれています。
崩壊地などにいち早く進出するパイオニア植物の一つで、地崩れなどで横倒しになっても、すぐに垂直になる枝をだすなどして個体を維持し続けます。
谷地に多く葉がクワに似ているのでタニグワの名もあります。

メタセコイア  (雄花穂で色づく)

2016-03-22 08:30:14 | 植物観察記録


万博公園のメタセコイア(ヒノキ科)の並木が、いっせいに枝先に長い花序を垂らし、全体を薄い褐色に染めあげていました。
雌雄同株で、花期は2~3月、雄花は長さ約5mmの楕円形で、枝先から垂れ下がったなぎ花序に多数つきます。ま花は緑色で短枝の先に1個ずつつきますが、遠目にはよく見えません。
いろいろ話題のおおいメタセコイアは、過去何回か取り上げています。下記をご覧ください。
‘05年3月15日‘09年8月31日’11年11月2日



ウチワノキ:団扇の木(花ではわからない名前の由来) 

2016-03-21 10:11:38 | 植物観察記録

まが色彩の少ない植物園に、白い花をつけた低木が目につきました。
名札を見るとウチワノキ:団扇の木(モクセイ科ウチワノキ属)とありました。
この小さく白い花をつけた木がなんでウチワノキなのか、帰って調べてみると、直径1.5㎝程の果実が翼果で、種子の周囲に大きな翼が発達し、形が丸い団扇のようになるからということが分りました。
朝鮮半島北部原産の落葉低木で、雌雄別株、開花は2~4月、葉が展開する前に前年の葉腋に短い総状の花序をだし、白色または淡紅色の花をつけます。花冠は直径約1.5㎝で、4裂し、裂片の先は浅く2裂します。
朝鮮半島特産で、ウチワノキ属はこのウチワノキ1種といいます。

ソテツ:蘇鉄(野生状態の北限) 

2016-03-14 10:04:07 | 植物観察記録

室津港の守護神賀茂神社(昨日記事)の神門と石鳥居の中間参道脇にソテツ:蘇鉄(ソテツ科ソテツ属)の群生がありました。
20本の大株がそれぞれに⒑数本の分枝を持つこの群生は、古い歴史を持ち、冬季も藁覆いなどの保護を必要とせず、自生としては日本列島の北限に位置するとされて、県指定の天然記念物となっています。
本来ソテツは、九州南部、沖縄、台湾など熱帯から亜熱帯の沿岸地、特に海岸の風衝地や崖などに生えることが多いとされ、近時園芸植物として価値があるため減少しており、国際的な保護の対象となっているといいます。
年輪がない幹や、赤い種子にはでんぷんが含まれ、飢饉時には中に含まれる有毒成分を除去して非常食として利用されたりしました。
雌雄異株で、イチョウとともに精子を持つ裸子植物と知られ、室津の蘇鉄群では7割が雄株となっています。ほぼ隔年に花をつけるというここのソテツには、赤い種子をつけた株も見えました。

サカキカズラ:榊蔓(港町の神社に群生) 

2016-03-13 17:28:53 | 植物観察記録

古い歴史が息づく港町、播州御津の室津の町を散策しました。町並み端の方に緑に包まれた小高い丘があって、小さい港町にはおよそ似つかわしくないほど立派なお社、賀茂神社がありました。
長い石段の脇の漆喰の塀にまとわりついていたのがサカキカズラ:榊蔓(キョウチクトウ科サカキカズラ属)でした。
本州房総半島以西、琉球などの暖地の林に生える常緑の蔓性木本で、他物に巻き付いて高く伸び、太いものでは茎が直径10㎝にもなります。葉は対生し、長さ5~10cmの狭長楕円形で、厚くて光沢があります。
花期は4~6月、花は淡黄色で直径8~10㎝、テイカカズラと同じように花弁がねじれますが、花弁はテイカカズラよりかなり細く、果実は2個ずつつき、種子には長い絹毛があり、風に乗って飛んでゆきます。
どちらかといえば海岸地帯に多く見られるサカキカズラですが、港町の神社に榊蔓で取り合わせも上々でした。

バンクシア (山火事を予定) 

2016-03-07 10:32:19 | 植物観察記録
植物園にバンクシアと名札のついた植物がありました。
調べではヤマモガシ科の一種で約80種が含まれ、オーストラリアのもっとも乾燥した地域を除く全域に産し、特徴的な花序と果穂を持ち、オーストラリア産の野生の花の中では有名で人気があり、よく庭木として利用されるとありますが、あまりよくみられるというものでもなさそうです。
ユーカリやカリステモン(ブラシノキ)などとともに、山火事に逢うことで種子が発芽の刺激を受けて世代更新するという、生育環境に適応した特殊な生態を持っているということで知られています。
バンクシアの花序は柔毛質の覆いのある木質の軸でできていて、通常は直立し、軸に対して直角に着く密に配列した花によって覆われ、単一の花序で1000以上の花が含まれます。数年にわたって花は宿存し、毛の生えた花序の姿が残るものがあるそうです。
花序が大きく花の数が多いのに、果実をつけるのは少数だそうですので、火事に逢って初めて発芽するという果実はこの木では見当たりませんでした。


写真上は、終わった花がしなびたままついているもので、写真下は花殻が落ちた花序軸のように思えますがよくわかりません。
バンクシアの葉も種類によって針状のものから幅のある大きい葉、鋸歯の有無など様々といいますが,植物園のこの木には品種名もなく、あまり情報は得られませんでした。