教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

中学公民「裁判所」で何を学ぶか

2006年08月17日 | 人権
社会科の授業で裁判制度を学んだ中学三年生三人が、ぜひ裁判の傍聴をしたいと言ってきました。その三人に手渡したのが次の新聞投書です。犯罪者や被告人は、遠く離れたところにいるのではなく、被告人にも家族がいて、事件を起こす前には、ごくありふれた市民生活があったし、これからもあらねばならないのです。裁判は、人を抹殺するために行うのではなく、罪を犯した人を再び私たちの社会の仲間に迎えるにはどうすればいいかを、社会の構成員全体が考えるためにあるのだと思います。そんなことを気づかせてくれる投書でした。

斧孝明(団体職員42歳)
 小学三年生の息子を連れて裁判を傍聴しに行った。弁護士会が子供向けに開いている夏休みの催しに参加したのだが、私自身も裁判所に入ったことがなかったので興味深かった。テレビや映画で十分見慣れているはずだったが、手錠と腰縄で拘束された被告人が法廷に現れたときには、これはドラマではないことをはっきり思い知らされた。
 被告人は二十代の女性。容疑は覚せい剤の使用と保持。再犯。裁判は調書などを棒読みしていくだけで、退屈な流れ作業を見ているようだった。しかし、女性はずっとわれわれの方を振り向いては泣いていた。正確には、傍聴席後方にその女性の赤ん坊がいるのを見つけて、涙が止まらなかったようだ。一ヵ月余り拘束され、その間子どもに会うことを許されなかったらしい。その後もおそらくは何年かは子どものそばにいることはできないようだ。
 ほんの三十分ばかりだが、裁判を眼前にして初めて罪を犯すことの重大さが分かったような気がする。息子は身じろきもせずじっと裁判を見続け、閉廷後、再び手錠と腰縄を打たれて女性が出て行くと、「あの女の人はこれからどうなるのか」と心配顔で聞いた。息子なりに何かを感じ取ってくれたようだ。(朝日新聞1998年8月)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。