教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

地域で育つ~俊介二十歳を迎え①

2008年02月13日 | 障害者とともに
 市内の○中を卒業した○○○○さんが二十歳になり友人たちと成人式に参加しました。『考える会通信』(「障害」児の生活と進路を考える会発行)に掲載されたお母さんの手記をご本人の了解の下、2回に分け紹介させていただきます。障害がある・ないにかかわらず、子どもたちが同じ学校に通い地域で育つことでお互いを強く優しく成長させてきたことが伝わるのではないでしょうか。

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俊介二十歳を迎え① ○○○○
 俊介がやっと、いや、とうとうと言うべきか、成人式の日を迎えた。11月に初めてのスーツを購入するために紳士服店を訪れた。3軒目(やっとサイズが合って)で、少々ご機嫌斜めだった俊介は、店員さんの「どんな感じが良いですか」の質問に、自分の頭をたたいて「ウヲーッ」と言った。その後俊介は私にあれこれ説明をしてくれたが、結局妹が選んだスーツを試着した。なんとりりしい・・・私は思わず涙がぐっと込み上げてきた。

 俊介20歳。私もお母さんになって20年。映画の回想シーンのようにいろんな場面が頭の中を駆け巡ってくる。ホンマにいっぱい、いっぱい苦しんだし、悩んだなあ。しかし、やはり私をホントの「お母さん」にしてくれた俊介には「私の子どもに生まれてきてくれてありがとう」の言葉を贈りたい。

 俊介を自閉症と認識した2歳の頃、自閉症という言葉の意味がよく知られていなかったと思う。「自閉症なんです」というと「自閉症って家から出られない人のことじゃないの?」と「引きこもり」と勘違いされることも多かった。近所の子どもと遊んでいても「多動がうつる」とか言われたこともある。

 社会に出て初めて障がいを持つ人と知り合ったとき、戸惑い、どう接したらよいのか分からないのは当然だろう。いきなり自分の頭を叩いて「ウヲー」と言われたら困るのも分かる。でも俊介が普通に学校に行ったので、一緒に暮らした子どもたちは、社会に出たとき障がいがある人と出会っても自然に当たり前だと思うに違いない。

 俊介には、6歳下の双子の弟と妹、10歳離れた弟がいる。弟と妹は俊介が大好きである。妹が小学生のとき、俊介の部屋の床にマジックで「俊くん大好き。20歳になってもずっと一緒にいようね」と書いていたことがある。20歳になったら家を出て行くと思っていたのかは知らないが、お兄ちゃんをスキだという気持ちと、それを率直に出せることが嬉かった。俊介もまた妹には特に優しい顔になる。成人式のスーツやネクタイ選び、市民会館への送迎にもついてきた妹。彼女も俊介がともに育った仲間の中にきちんと居場所があったことをうれしいと思っているに違いない。(続く)


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