教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

鍵盤叩く

2007年04月19日 | 短歌・詩
嫌いだった習わせられたこのピアノ 鍵盤叩く母亡き今も (東京都高校2年 萌子17歳)

子どもにピアノを習わせることが親たちのささやかな夢であった時代がありました。青春時代に戦争と飢えを体験した1920年代生まれの親たちは、高度経済成長の恩恵を受けた1960年代に子育て時期を迎えました。当時の親たちにとってピアノは平和と豊かさの象徴だったのではないでしょうか。近所で女の子がいるどの家からもピアノの音色が聞こえました。(そのとばっちりは私にも来そうになった)

家計に大きな負担を強いて購入されたピアノも10年も経てば大抵ほこりをかぶったり、物置台になっていきます。ところが孫(特に女の子)が生まれると、再びピアノに陽の目が当たります。母が弾けなかったピアノを娘に(母に弾けたのだから娘にもという場合もある)そんな願いが、プレッシャーにもなったと思います。

しかし母親から勧められた(強制された?)ピアノの練習が、いつしか自分の心を満たしてくれるようになる場合もあります。あれだけ嫌だった練習が亡き母親と自分を繋ぐ糸のように思えるのではないでしょうか。

そういえば卒業式の歌の伴奏をしてくれたN君。普段はサッカー部で活躍し真っ黒に日焼けした君がピアノを弾く姿に、参加したお母さん方から「カッコいい!家に連れて帰りたい!」という感嘆の声があがっていました。普段はパッとしなかった(失礼!)音楽科S先生の口癖は「クラブでピアノの弾き語りをするとモテルんだ」でした。下心は別として、男のピアノも素敵です。