へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

釣り人知らず…

2021-09-13 15:31:06 | へちま細太郎

細太郎です。

大学の生物を勉強する学部棟構内の人工池に流れ込んでいるこれまた人工の小川は、できてからかなりの年月になっていて、もはやこれが人工だって誰も思っていない。学園都市ができてから新興住宅地も増え、砂漠のど真ん中に街ができたアメリカの都市のような雰囲気を醸し出している。とってつけたような並木はもはや大木と化して、秋には神宮外苑にまけないイチョウ並木となっている。臭くてたまんねえけどな。
この人口の川と池には、誰が放したかしらんがブラックバスが生息する。たまにいって、駆除するんだがとても追いつかない。そのバス釣りにやってくる連中がいるんだ。勘弁してくれよ、大学構内だ。
で、久しぶりにはれた土日にタモとバケツを持って、研究室の連中とバスの駆除にやってきた。池の水を抜きますよろしく、中に入ってタモで掬い取っていると、
「おまえら、やめろ、池から出ろ!」
と叫ぶ連中がいた。
「は?」
と、声の方を振り返ると、知らんオヤジ連中が立っている。釣りをする気だ。
「邪魔だ、どけっていってんだ」
その横柄な態度に、
「あんたたちこそ誰なんですか!関係者ですか!」
と、どうみたって釣り人だろうってやつらだ。しかも部外者だ。
「大学のものだ」
嘘つくなや、俺らみたことないぞ。
「だったら、俺たちの活動知ってますよね。ここで釣りも禁止ですし、外来種の駆除はぼくら研究室の役割ですから」
「余計なことするな」
釣りオヤジたちは、釣り竿を振り回して、
「早くでろでろ」
と、理不尽な怒りを向けてきた。
「何いってんですか!!」
ちょっと、キレてきたところで、つづく


さんま…

2021-09-09 15:11:06 | へちま細太郎

オス、藤川だ。。。

さんまが食いたいと思ったが、おふくろさんにさんま~というわけにはいかない。
最近は、さんまの漁獲高もバカにはならない。料亭なみに高い。うちの実家は高級料亭は経営していないが、定食屋は経営している。高級料亭は政治家がロクでもない話をする場所と相場が決まっている。
だから、俺のオヤジや実孝も呼ばれていく。絶対に金は出さないらしい。わざわざ呼びつけるんだから、そっちが金を出すのが当たり前だという。嫌みも添えてくるらしいが、要求もきいてやらんらしい。相手もそのうち諦めるだろうと思うのだが、藤川家というより田吾作のネームバリューは捨てがたいらしい。
田吾作の製作会社はそこんところをよくわかっているらしく、以前は築地、現在は豊洲市場の中にある寿司屋だの、神保町のカレー屋だの、
「いかがですか?」
と言ってお誘いしてくる。もちろん、手土産には会津やのタコ焼きを持参する。会津やのタコ焼きは世界一うまい。大阪のタコ焼きを口にすると、申し訳ないがどこぞのたこ焼きはしばらく食べられなくなる。
が、1か月もすると、やっぱり食べたくなる。
そんなことはおいといて、定食屋だの学食だの安くてうまいものに、さんまはつきものである。そしてさんまが食いたいということは、
「秋になった」
ということなのだ。晴れた日の夕方にどことなく漂ってくるさんまの食欲をそそるにおいはたまらんぞ~。
「あ、今日はさんまのかんづめ」
細太郎のところに寄ったら、昔の猫缶みたいに缶詰が並んでいた。
「さんま、いわし、さばなんでもあるよ~」
きけば魚をやくとにおいがこもるので嫌なんだそうだ。なんでえ、つまんねえやつ。。。



久しぶりに晴れた

2021-09-07 15:12:23 | へちま細太郎

へちま細太郎です。

大学院の自分の研究室にも薄気味の悪いあの小百合の子供を飾っている。研究室仲間からはえらく評判が悪いが、しかし貴重な蘭の原種とあり観察することだけは忘れない。名前は、
「小百合の子供だからこゆりだ」
で、母親と同じく好物の小児用リポDを少々根元にかける。
「薄気味悪いが、研究対象と思えば何と言うことはない」
研究室仲間も、ゼミ時代からと一緒なのでドドメ色のこゆりにも慣れた。
え?子どもなんてどうやって作るんだって?株分けだよ、株分け。ある程度大きくなると鉢を植え替えてやらなけりゃならない。そういう時に株分けするんだ。いくつに分かれているかは、まあ、鉢から出してみないとわからない。
「まさか、耳栓とか必要ないですよね。変な悲鳴みたいな声をあげたり、ニキビ面になったりするとか」
なんてどこの魔法植物か、ドラクエの魔物かって感じで聞いてきたやつもいたな。
「心の目でみるとニキビがびっしりってこともあるかもよ」
「え?」
「そん時は、ニキビのクスリ塗っといてね」
「えええええええええええ」
女子学生は悲鳴を上げるも、荒波や後藤たちにけって表情されていたっけな。
なんにしても、今日は晴れた。リモートワークも実験が必要な理系にはなかなか難しいものがある。密にならないように研究室にやってきて、実験をすすめていく。
「あ、細太郎さん、メダカまた卵産んだんで、別にしときました」
「あ、さんきゅ」
メダカ、くっちまうからなあ。以前、金魚に稚魚食われてえらい目にあったし、なんで魚って節操がねえんだよ、と文句を言いつつ今日も論文を書くために水生植物にウィンクしているのであった。
「あ、今日、わかめの味噌汁飲みたい」
作るのめんど~、はるみとそろそろ一緒にくらそうかなあ、などと思い浮かべるのであった。
そしたら、俺、ヒモじゃねえかよ~。。
とほほ…。

 


藤川先生はアナログ人間

2021-09-02 13:10:20 | へちま細太郎

藤川だ、寒いな…

リモートワークの準備をしないとわかったのは、夏休み終了の二日前だ。
といっても、わかってはいたんだがな。
でも、いきなりはない。準備が大変なのである。
そこでだ、俺様はネットで遊ぶのが大好きだ。ExcelもWordもこなせる。でも、それだけじゃあだめなんだそうだ。
今は、zoomという遠隔で会議ができる代物がある。会議をやっている時だけ上だけワイシャツにネクタイ、とう姿で下半身はパジャマだとか。さらに、ネコが邪魔をしにきたとか、よくある話だ。
ほんとかよ。
「あんたの場合、女が映ってそうだね」
久保田がzoomをclassroomに招待する旨を入力して、
「ロイロでやるの?パワポにする?」
と聞いてきたが、なんのこっちゃだ。
「パワポはいつも使っているアレ、ロイロはくにくにやるアレ」
余計なんのこっちゃだ。
確かにいつも遊んでいるアレがパワポでロイロだっていうのはわかっていはいるが、生徒が目の前にいるから楽しく遊べるのであって遠隔じゃつまんね。
反応がわからん。
「だからzoomでしょうが」
俺と対してかわらん年なのに、何えらそうなこと言ってんだ。
「いやさ、グループ組みたくないとか、発表したくないとかっていう生徒にはありがたいものだぞ」
何でそこまで気を遣ってやらにゃあならんのだ。
「時代が変わったんだよ。プリンセスが借金持ちの男と駆け落ち結婚する世の中だ」
「駆け落ちって…」
弟の実孝はナンパなんだが…。
「あんたでもよかったんじゃないの?」
他人のお古なんてふざけんな。まともな男から奪い取ったんならいざ知らず。
なああんて言いながら、冗談じゃないや、だったら英語の生放送でも聴いてろって思ったもんだ。
「あああ、小窪がロッテ入り~!!!!」
遠くで元祖Carpババアの桜井が叫んでいた。
ネットはああいう風に使うもんだ、なあおい。
「仕事中になにやってんだか」
上本のぼやく声が聞こえて、仕方ねえ仕事すっか、とExcelを開いてプリント作成に精を出す俺様だった。
あ、プリントは課題ね。なに?プリントもロイロで作れだと?
面白くねえだろ~がっ!!


やんごとない人の結婚(ちょっと訂正した)

2021-09-01 15:05:14 | へちま細太郎

こんちは、久しぶりな孝太郎です。
俺は大学院を卒業して企業して、といっても不動産関係でアパートやらマンション経営してる。俺の所有するアパートには細太郎たちが住んでいる。
一応、土地は余るほどあって、母親が所有している土地にアパートやらビルやらを建ててそこからの収入で生活してるんだな。でも、今日びビルなんてなかなか埋まらないから、試しに塾に営業賭けたらうまくのってくれて大繁盛だ。
商売能力のないジジイのせいで金がなくなったから、あいつには小遣い程度の5万しか渡していない。渡したらえらいことになる。だから今では藤川家の山の中の誰もこない別荘に閉じ込めている。たまに軽トラで山を下りてくるらしいが、知ったことか。離婚すりゃいいのにバアさんもなんで籍を抜かねえんだ、と思ったら西村家の跡取りはかわいい孫の俺しかいないからこのままなんだと。負の遺産もない代わりにすっからかんだから、これ以上金を持たせて借金持ちになったらえらいことになる。西村家代々の墓も、もと家臣の人たちがやってくれているらしいが法事で顔を見せて管理費を渡してきっちり収支報告をさせている。そしたら、えらく感激されて困った。早く代替わりをして、当主になってくださいだと。まあ、あと少ししたらオヤジを隠居させようと思っている。うん、かなりおれ冷徹だな。
ところで、今日のニュースで驚いたのなんのって。日本のプリンセスが借金持ちと結婚するって。すげえなあ。どうやって食わしてやるんだろう。
じゃなくて、やんごとない結婚って、うちの悠樹先輩のことだ。うちのじいさんつまり藤川家のご隠居の執事である北別府さんの孫娘との結婚が決まったんだと。前々からそうなるんじゃないかと思ってたんだが、いよいよ決まったか。最初はお見合いで、長い付き合いの果てのことらしい。
これで、悠樹さんは北別府家の婿養子となり、北別府姓を名乗ることになったんだとか。う~ん、先輩はうちでいただこうと思っていたんだが、やり手の執事もいないから仕方ないか。どんだけ家臣まで無能の家なんだよ。
なんにしろめでたい話だ。ちなみいうが、先輩は田中マー君に似ている。ニューヨークは行ったことがないそうだぞ。わははは。