へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

愛と書いて“めぐみ”という…

2006-11-20 21:34:21 | へちま細太郎
こんにちは、へちま細太郎です。

来ましたよ来ました、ついに来たおとうさんにお見合い話が…。
近所に住む“おせっかいばあさん”とおばあちゃんが呼んでいるおばさんが、おとうさんに、
「よい話なのよ~」
と、写真と“つりがき”というのを持ち込んできました。
「先方様のお嬢さんはそりゃもう気だての良い方で、お料理もお花やお茶のたしなみもあるそうですのよ」
「そんなすばらしいお嬢さんなら、何もうちのようなこぶつきとお見合いしなくてもよろしいでしょう?あら、それとも剛の方にいただいたお話でしたっけ?」
おばあちゃんも負けてないなあ。
「光一さんですよ。先様は細太郎君のことを承知の上で、このお話をお受けなさったのですからね」
「未婚の父を承知、とは随分できたお宅ですこと
おばさんの恩を売るような言葉に、ちょっとおばあちゃん、言葉にトゲが入る。
「まあ確かに、未婚の父、というのはあまり聞かない話ですものね。世の中女性に背負わせてしまう男性がいる中で、責任感がおありになるということで、先方様では感心なさっておられますのよ」
こういっておばさんは、とってつけたようにおほほほと笑った。
「ほら職業も保育士さんでいらっしゃいますでしょ?子供がお好きみたいだから、細太郎君と仲良くなれそうとおっしゃってるみたいで」
なんだかもう結婚するみたいな言い方だなあ。
「光一さんもいつまでもお1人というわけにはいきませんでしょ?細太郎くんにもおかさんは必要ですわよ」
余計なお世話だよ。
このあと、おばあちゃんのいやみにも負けなかったおばさんは、むりやり見合い写真とつりがきをおいていってしまいました。
「なんかあるのよねえ、光一に見合い話って」
おばあちゃんは、写真を開いてみながらつぶやいた。
「だいたい、うちをバカにしてんのよ、光一が未婚の父だからってさ、持ち込んでくる見合い相手みりゃわかんのよ」
おばあちゃん、プンプン怒ってます
「だいたい、細太郎の母親は医者の娘なんだからね。それとつりあいがとれる家の娘じゃないとだめなんだから」
あ、そうだった。ぼくのお母さんのおうちって、お医者さんだって言ってたっけ。
「なあにが、愛と書いて“めぐみ”と読みます、よ。田村正和のドラマじゃあるまいし」
「え?なに?」
「昔、“パパはニュースキャスター”ってドラマがあったのよ。その主人公が酔っ払って女を口説く時の決めセリフに“子供ができたら名前は決まっている。愛と書いてめぐみという”というのよね。笑った笑った」
田村正和って、古畑任三郎だよねえ。刑事やったりニュースキャスターやったり、総理やったり忙しい人だなあ。
「おとうさんだって同じじゃない」
ぼくは、ちょっと意地悪を言ってみたくなりました。
「あら、なんで?」
「だって、よっぱらうと、必ず“リカちゃん”に反応しちゃうでしょ」
ぼくはいたずらっぽく笑いました。
「細太郎…」
おばあちゃんは困ったような悲しそうな表情を見せました。それを無視して、
「ぼく、おとうさんがお見合いしてもいいよ、おばあちゃんがよければ、ぼくおばあちゃんたちと暮らすから」
よく考えてみたら、ぼくってあんなおばさんにバカにされるようなそんざいなのかな、と思えてきました。
ぼく、誰からみてもおじゃま虫なの?
ねえ、おかあさん。