へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

月がとっても青いから

2006-11-06 18:41:40 | へちま細太郎
こんばんは、へちま細太郎です。

満月の時は、十五夜。十六日が「いざよい」、十七日が「たちまち月」…というのだそうです。
「満月には、おおかみ男が人間に変身して、おおかみをおそうんだってよ」
「はい
国語の授業の時に、たかのり君がへんなことを言って大爆笑になりました。
「たかのり、それをいうなら、人間が狼に変身するだろ」
「あ、えーと、そうともいいますね」
「こら」
たかのり君はクラスのムードメーカーで、いつもみんなを笑わしてくれます。
ぼくなんかジョーダンのひとつもいえないから、たかのり君がうらやましいな。
「あ、でも、最近は、うさぎに変身しちゃうんですよね」
「はあ?…あ、キムタクかあ」
たかのり君は、CMでSMAPの木村拓哉の姿を思い出してまたまた発言しました。
「おまえは次から次へと、よく言葉が出てくるな」
「オレ、キムタクのファンだから」
よく言うよ、先週は、嵐の櫻井翔のファンだっていっていたのに…。その前は・・・、キリないから、このへんでやめておこう
「十五夜は満月だろう?昔の人は、別な言い方で『望月』とも言っていたんだ」
さらだ先生は授業をもとにもどしました。
「藤原道長という人は、自分の権力がこの満月の夜のように、夜なのに明るくすみずみまで照らしているようだ、という和歌を詠んで力を示したんだぞ」
「どんな歌ですか?」
「難しいぞ…いいか、『この世をばわが世とぞ思う望月の、かけたることもなしと思えば』…どうだ」
どうだって言われても…
「それじゃ、ちょっと切ない歌はどうだ?…『嘆けとて月やは物を思はする、かこち顔なるわが涙かな』…月は嘆けといって照っているわけではないけれど、でも、月を見てるとどうして涙が出てくるほど哀しいのかなあ、という歌だ」
ぼ、ぼく、わかりません…
「かっこいい」
たかのり君が手をあげて言いました。
「わけわかんないけど、なんかかっこいい」
「かっこいい…って、そうか、たかのりはそう感じたか。他はどうだ?」
女子たちは顔を見合わせてひそひそと話していましたが、
「はい」
と、まっすぐ手をあげたのはきょうこちゃんです。
「私は、月をみるたびに、目玉焼きが食べたいと思います」
「え?」
さらだ先生、あんぐり。
「マックの月見バーガーが、ちょっとしか発売にならないのをとてもざんねんに思います」
きょ、きょうこちゃん、それ、じょうだんのつもり…?
「きょうこは、月をみるたびにお腹が空くのか?」
「そんなわけじゃないですけど、なんとなく、そう思っただけです。たしかに、月を見ると、すすきだの、おだんごだの、うさぎだの、と思い浮かべますけど…」
「はあ…」
さらだ先生、なげかないで、このクラスの女子に期待しても無理だと思います。
その時、ぼくの中に1組のりょうこちゃんのことが思い浮かびました。
りょうこちゃんなら、きっと…。
「やっぱ、月ならサイヤ人の変身でしょ」
たかのり君が突然言いました。
ひえええ…いきなりアニメの世界なんて…。
「何言ってんだ、月は、うさぎ団だ」
さらだ先生も負けてはいません。むきになっちゃったみたいだ…。
「先生、うさぎ団は古いよ~」
どこまでものんきなクラスだなあ・・・。
でも、ぼくは、女子をのぞけば、このクラス大好きです。