宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

出村和彦『アウグスティヌス』第2章(その2):「心」の哲学へ!アウグスティヌスの思考は大きく転換した!「自らの意志の弱さ」を思い知らされ、彼は「神」に呼びかけ、祈りはじめた!

2022-11-06 20:13:35 | Weblog
※出村和彦(デムラカズヒコ)(1956-)『アウグスティヌス 「心」の哲学者』岩波新書(2017、61歳)

第2章「遅れて来た青年」(その2):伴侶との離別後、「情欲」に従ってしまい、「自らの意志の弱さ」を痛いほど思い知らされ、アウグスティヌスの思考は大きく転換した!
(12)15年間、カルタゴ、ローマ、ミラノと同棲してきた伴侶との離別は、アウグスティヌスの「心」の問題をあらわにする試金石になった!(アウグスティヌス31歳、385年)
(f)アウグスティヌス31歳、385年、母モニカが帝都ミラノにやって来た。彼女はミラノ社会での息子の地歩を固めるため、良家の息女との正式な「婚姻」の世話に奔走した。かくてアウグスティヌスと、ある良家の少女との正式婚約が結ばれた。ただし少女が婚姻可能な年齢になるまで2年待つ必要があった。(41頁)
(f)-2 アウグスティヌスは、今や渇望していた「名誉と利得と結婚」のうち、「結婚」も手に入れた。かなりの確実度で「知事くらいの地位には就ける」と彼は思った。(42頁)
(f)-3 だが正式縁組の差し障りになるという理由で、厳格な司教や母の要請で、アウグスティヌスは「16歳から15年間、カルタゴ、ローマ、ミラノと同棲してきた伴侶の女性」と離別した。伴侶は息子アデオダトゥスを残し、アフリカに去った。(42頁) 
(g)だがこの別離はアウグスティヌスに強い衝撃を与えた。彼は「この女(ヒト)に固く結びついていた私の心は引き裂かれ、傷を負い、どっと血を滴らせました」と述べている。(42頁)
(g)-2 アウグスティヌスは、婚約者との結婚までの2年間を待てず、闇雲に他の女性と関係を持つに至った。「分別ある大人」だったはずが、自分の「心の調和」が失われた。「情事」に走り、「情欲」に従ってしまう。(43-44頁)
(g)-3 アウグスティヌスにとって、「情欲に対して同意してしまう自らの意志」こそが問題だった。自分の厭っていること、醜悪と思っていることをしてしまう「自分の弱さ」が問題だった。伴侶との離別は、アウグスティヌスの「心」の問題をあらわにする試金石になった。(44-45頁)

(13)「心」の哲学へ:アウグスティヌスの思考は、ここで大きく転換した!「自らの意志の弱さ」を痛いほど思い知らされ、どん底のうめき声をあげた時、アウグスティヌスは「神」に呼びかけ、祈りはじめた!
(h)この時から、アウグスティヌスの「心」の哲学の形がようやくはっきりしてくる。(45頁) 
(h)-2 「性や肉体」を「醜悪なもの」、「清く聖なる生活を損なうもの」として蔑視するマニ教的な考えから、アウグスティヌスはすでに脱却していた。(45頁)
(h)-3 アウグスティヌスにとって問題は、「みずから行う意志」である。「自らの意志」の問題であるならば、「情欲や衝動」のせいにできない責任が生じる。(45頁)
(h)-3-2 アンブロシウスの「自分たちが悪をなす原因は、自分たちの自由意志(意志の自由選択)にある」という考え方が、アウグスティヌスには身につまされて理解された。(46頁)
(i) アウグスティヌスの思考は、ここで大きく転換した。「自らの意志の弱さ」を痛いほど思い知らされ、どん底のうめき声をあげる時、この自分のざまを見てあわれみを覚えてくれるのはいったい誰なのか。彼は「神」に呼びかけ、祈りはじめた。(46頁)
(i)-2 「神はおごり高ぶる者を退け、謙虚にへり下る者に恵みを与えてくださる。」気がつくと、そんな声が不思議にアウグスティヌスの耳に響いてくるのであった。(46頁)

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