僕、ミチオ(小4、10歳)の3歳の妹、ミカは、事件後、4歳で死ぬ。この妹は実はトカゲ。3年前、1ヵ月半で、流産で死んだ妹は、写真ではトカゲのような姿だった。妹ミカがこのトカゲに生れかわった。
1
S君が風に飛ばされて空を飛んでいくのを、ミチオが見つける。S君は、首を吊って自殺しその魂が空を飛んでいく。
犬、猫が多数殺され、その脚が折られ、口に石鹸が詰め込まれる。
ミチオのお母さんはゴミを決して捨てない。家はゴミだらけ。
妹のミカは、トカゲだがしゃべる。このミカの発言はすべて、ミチオの創作。つまりひとり芝居。
2
軍荼利(グンダリ)明王に祈るトコお婆さんは実は、人間でない。彼女は、2年前に死んだ人間のトコお婆さんの生れ変りのネコ。おばあさんが語ることは、ミチオのひとり芝居。
お爺さん、古瀬泰造は、一昨年、妻が死ぬ。娘がひとりいるが、今は会うことがない。
3
自殺したS君が、クモに生れかわる。
トカゲのミカと、クモのS君は仲がいい。もちろん二人の会話は、ミチオの創作。
S君が、「担任の岩村先生が、自殺した自分(S君)の死体を隠した」と言う。クモのS君の発言はミチオの創作。
岩村先生が、少年を殺害しその遺体を陵辱する小説『性愛の審判』を書いた。これは事実。
4
S君はやぶにらみで、「臭い」といじめられていた。
ミチオが好きな級友のスミダさんが「そのクモ、S君でしょう!」と言う。ところがスミダさんは1年前に交通事故で死んでいる。彼女の机の上の白い百合の花が、スミダさん。スミダさんの発言はミチオの創作。
5
岩村先生はS君を裸にしビデオにとっていた。
6
S君の死体が見つかる。犬のダイキチがビニールに入ったS君の死体を運んできた。
7
トコお婆さんの生れ変りのネコが殺される。脚を折られ口に石鹸が詰め込まれる。
かつてS君はビンの中で子猫を飼い、成長して出られないようにし殺す。これは事実。「ボトルシップと同じ、ボトルキャットだよ!」とクモのS君が言う。S君の発言はミチオの創作。
トカゲのミカと、クモのS君が、仲がいいのを見て、ミチオが嫉妬する。ミチオが、クモのS君が入っているビンに女郎蜘蛛を入れ、クモのS君を殺そうとする。残酷な感情。思いなおしてミチオは殺すことをやめる。
交通事故で死んだスミダさんの死体の、脚の骨をお爺さん=古瀬泰造が折る。
8
お爺さん=古瀬泰造の父は早く死んだ。残された美しい母がいた。母は村の夫たちに体を売って生活。村の女たちに母は毒殺される。殺した女が仕返しに来ないよう、葬儀の日、女たちが死体の母の脚を折った。
しかし母は墓から蘇り、腐った死体が石を振り下ろし、村の女たちのリーダー、駐在の妻の頭をつぶし殺す。当時、泰造は9歳だった。
お爺さん=古瀬泰造は、死体のスミダさんが間違って自分に仕返しをしないよう脚を折った。スミダさんは、泰造が交通事故を目撃した直後はまだ生きていた。彼女は、泰造を犯人と間違え、彼に向かい「許さない!」と何度も言った。
9
S君はいじめられていたので残酷なことがしたかった。S君が犬・ネコをたたきつけ顔をつぶし殺す。
生き返るのが怖くて、泰造が、死体の犬の脚を折るのを、S君が発見。S君は泰造の心の闇を察する。
S君が、自分が殺した犬、猫の死体を、泰造に提供。
泰造が、その脚を折る。骨が折れる音に快感する泰造。
S君が飼う犬のダイキチが、S君が殺した犬・猫の死体を運び去らないよう、ダイキチの嫌いな石鹸を犬・猫の死体の口に、詰め込んだ。
9-2
ミチオは、「担任の岩村先生が、自殺した自分の死体を隠した」と言った噓つきのクモのS君を嫌いになり、指でつまみ、つぶす。ただしクモのS君の発言=嘘は、実は、ミチオの創作・ひとり芝居である。
S君を好きなミカ(人間、実はトカゲ)がクモのS君のつぶれた死体を食べる。
9-3
交通事故で死んだスミダさんの脚を折った後、泰造は、自分が怖くなる。母親の死体が蘇ったとの自分の思いが勘違いだと確認すれば、自分は救われると思い、泰造は故郷の九州に行き調べる。
泰造が知る。母は墓から蘇ったのでなく、野犬が掘り出した。母の脚が折られたのは座棺に遺体を入れるため。駐在の妻は通り魔殺人。
すべてが勘違いと知った空虚。しかし死体の脚を折りたいという衝動が残る。死んだ犬の脚を折ったときの解放感。少女の脚を折った狂える行為の快感の記憶。泰造の孤独やさびしさが消える。
9-4
S君が最後にくれたプレゼントが、S君の自殺した死体。
S君の死体を泰造が物置に運ぶ。しかし脚を折りたい欲求と、S君の死の哀れさとの葛藤で泰造がためらう間に、S君の飼い犬のダイキチが彼の死体を見つけ運び出した。
泰造は、死体遺棄が警察にばれるのがひたすら怖かった。
9-5
泰造の狂える欲求が、ネコ=トコお婆さんをたたきつけ殺し、その脚を折るに至らす。
10
ネコ=トコお婆さんを殺した泰造を、ミチオ許さない。ミチオが泰造を、包丁で殺す。
警察は、「S君を殺害した泰造が、罪の重さに気づき自殺した」というストーリーを採用。
泰造がカマドウマに生まれ変わる。
10-2
ミチオはS君と二人で組んでやる演劇会が嫌だったのでS君に「死んでほしい!」と言った。そして本当にS君は自殺した。
10-3
母が階段を滑り落ち、1ヵ月半の赤ちゃん=ミカを流産。母は赤ん坊を産めないからだとなる。
母が階段を滑り落ちたのは、ミチオが「火事だ!下駄箱が燃えている!」と言って母を呼ぶ演出をしたため。母の誕生日のプレゼントをミチオは下駄箱の中に隠していて母を驚かせ喜ばせたかった。
これ以後、母は狂い、人形をミカと呼び、大事にする。ミチオには「嘘つき!」としか呼ばない。
10-4
もう「物語を壊す」とミチオ。家の自分の部屋のカーテンに花火で火をつける。
母の物語:ただの人形を3年もミカと呼ぶ。ミカは3年前に、1ヵ月半で流産した、ミチオの妹。
ミチオの物語:トカゲがミカ。クモがS君。ネコがトコお婆さん。白百合がスミダさん。皆、死んだ後、生れ変った。
火事でミチオを2階の窓から外に投げおろし助けた父親が死ぬ。燃える人形のミカに執着した母親も死ぬ。
ひとり、ミチオだけ生き残った。
《評者の感想》
(1)
3年前に、ミチオが演出した母に対する冗談が、引き起こした重大な結果。
ミカが、トカゲに生れ変る。ミチオは、ミカ=トカゲを大事にする。ミカの生まれかわりの「物語」。
母は人形をミカと呼ぶ。母にはミカの死が信じられない。母が持つ「物語」。
誰もが自分を慰める「物語」を作る。
しかしその「物語」に疲れてしまうときが来る。その時は「物語」が壊される。
(2)
ミチオは結局、多くの人の死にかかわる。
妹のミカは、ミチオの火事の「演出」で結果的に死んだ。ミカはトカゲに生れ変る。
仲が良かったトコお婆さんは、寿命で死んだ。トコお婆さんはネコに生れ変る。
S君は、ミチオが「死んでほしい」と頼んだために死んだ。S君はクモに生れ変る。
ミチオが好きなスミダさんは自動車にはねられ死ぬ。スミダさんは白百合に生れ変る。
お爺さん=泰造は、ミチオが包丁で刺し殺す。お爺さんはカマドウマに生れ変る。
生れ変りの話は、すべてミチオの創作した物語。
ミチオが、物語を終わらす。家に火をつける。
母が、焼け死ぬ。父も、焼け死ぬ。
生きて残ったのは、ミチオだけ。ミチオの周囲には死が充満する。
1
S君が風に飛ばされて空を飛んでいくのを、ミチオが見つける。S君は、首を吊って自殺しその魂が空を飛んでいく。
犬、猫が多数殺され、その脚が折られ、口に石鹸が詰め込まれる。
ミチオのお母さんはゴミを決して捨てない。家はゴミだらけ。
妹のミカは、トカゲだがしゃべる。このミカの発言はすべて、ミチオの創作。つまりひとり芝居。
2
軍荼利(グンダリ)明王に祈るトコお婆さんは実は、人間でない。彼女は、2年前に死んだ人間のトコお婆さんの生れ変りのネコ。おばあさんが語ることは、ミチオのひとり芝居。
お爺さん、古瀬泰造は、一昨年、妻が死ぬ。娘がひとりいるが、今は会うことがない。
3
自殺したS君が、クモに生れかわる。
トカゲのミカと、クモのS君は仲がいい。もちろん二人の会話は、ミチオの創作。
S君が、「担任の岩村先生が、自殺した自分(S君)の死体を隠した」と言う。クモのS君の発言はミチオの創作。
岩村先生が、少年を殺害しその遺体を陵辱する小説『性愛の審判』を書いた。これは事実。
4
S君はやぶにらみで、「臭い」といじめられていた。
ミチオが好きな級友のスミダさんが「そのクモ、S君でしょう!」と言う。ところがスミダさんは1年前に交通事故で死んでいる。彼女の机の上の白い百合の花が、スミダさん。スミダさんの発言はミチオの創作。
5
岩村先生はS君を裸にしビデオにとっていた。
6
S君の死体が見つかる。犬のダイキチがビニールに入ったS君の死体を運んできた。
7
トコお婆さんの生れ変りのネコが殺される。脚を折られ口に石鹸が詰め込まれる。
かつてS君はビンの中で子猫を飼い、成長して出られないようにし殺す。これは事実。「ボトルシップと同じ、ボトルキャットだよ!」とクモのS君が言う。S君の発言はミチオの創作。
トカゲのミカと、クモのS君が、仲がいいのを見て、ミチオが嫉妬する。ミチオが、クモのS君が入っているビンに女郎蜘蛛を入れ、クモのS君を殺そうとする。残酷な感情。思いなおしてミチオは殺すことをやめる。
交通事故で死んだスミダさんの死体の、脚の骨をお爺さん=古瀬泰造が折る。
8
お爺さん=古瀬泰造の父は早く死んだ。残された美しい母がいた。母は村の夫たちに体を売って生活。村の女たちに母は毒殺される。殺した女が仕返しに来ないよう、葬儀の日、女たちが死体の母の脚を折った。
しかし母は墓から蘇り、腐った死体が石を振り下ろし、村の女たちのリーダー、駐在の妻の頭をつぶし殺す。当時、泰造は9歳だった。
お爺さん=古瀬泰造は、死体のスミダさんが間違って自分に仕返しをしないよう脚を折った。スミダさんは、泰造が交通事故を目撃した直後はまだ生きていた。彼女は、泰造を犯人と間違え、彼に向かい「許さない!」と何度も言った。
9
S君はいじめられていたので残酷なことがしたかった。S君が犬・ネコをたたきつけ顔をつぶし殺す。
生き返るのが怖くて、泰造が、死体の犬の脚を折るのを、S君が発見。S君は泰造の心の闇を察する。
S君が、自分が殺した犬、猫の死体を、泰造に提供。
泰造が、その脚を折る。骨が折れる音に快感する泰造。
S君が飼う犬のダイキチが、S君が殺した犬・猫の死体を運び去らないよう、ダイキチの嫌いな石鹸を犬・猫の死体の口に、詰め込んだ。
9-2
ミチオは、「担任の岩村先生が、自殺した自分の死体を隠した」と言った噓つきのクモのS君を嫌いになり、指でつまみ、つぶす。ただしクモのS君の発言=嘘は、実は、ミチオの創作・ひとり芝居である。
S君を好きなミカ(人間、実はトカゲ)がクモのS君のつぶれた死体を食べる。
9-3
交通事故で死んだスミダさんの脚を折った後、泰造は、自分が怖くなる。母親の死体が蘇ったとの自分の思いが勘違いだと確認すれば、自分は救われると思い、泰造は故郷の九州に行き調べる。
泰造が知る。母は墓から蘇ったのでなく、野犬が掘り出した。母の脚が折られたのは座棺に遺体を入れるため。駐在の妻は通り魔殺人。
すべてが勘違いと知った空虚。しかし死体の脚を折りたいという衝動が残る。死んだ犬の脚を折ったときの解放感。少女の脚を折った狂える行為の快感の記憶。泰造の孤独やさびしさが消える。
9-4
S君が最後にくれたプレゼントが、S君の自殺した死体。
S君の死体を泰造が物置に運ぶ。しかし脚を折りたい欲求と、S君の死の哀れさとの葛藤で泰造がためらう間に、S君の飼い犬のダイキチが彼の死体を見つけ運び出した。
泰造は、死体遺棄が警察にばれるのがひたすら怖かった。
9-5
泰造の狂える欲求が、ネコ=トコお婆さんをたたきつけ殺し、その脚を折るに至らす。
10
ネコ=トコお婆さんを殺した泰造を、ミチオ許さない。ミチオが泰造を、包丁で殺す。
警察は、「S君を殺害した泰造が、罪の重さに気づき自殺した」というストーリーを採用。
泰造がカマドウマに生まれ変わる。
10-2
ミチオはS君と二人で組んでやる演劇会が嫌だったのでS君に「死んでほしい!」と言った。そして本当にS君は自殺した。
10-3
母が階段を滑り落ち、1ヵ月半の赤ちゃん=ミカを流産。母は赤ん坊を産めないからだとなる。
母が階段を滑り落ちたのは、ミチオが「火事だ!下駄箱が燃えている!」と言って母を呼ぶ演出をしたため。母の誕生日のプレゼントをミチオは下駄箱の中に隠していて母を驚かせ喜ばせたかった。
これ以後、母は狂い、人形をミカと呼び、大事にする。ミチオには「嘘つき!」としか呼ばない。
10-4
もう「物語を壊す」とミチオ。家の自分の部屋のカーテンに花火で火をつける。
母の物語:ただの人形を3年もミカと呼ぶ。ミカは3年前に、1ヵ月半で流産した、ミチオの妹。
ミチオの物語:トカゲがミカ。クモがS君。ネコがトコお婆さん。白百合がスミダさん。皆、死んだ後、生れ変った。
火事でミチオを2階の窓から外に投げおろし助けた父親が死ぬ。燃える人形のミカに執着した母親も死ぬ。
ひとり、ミチオだけ生き残った。
《評者の感想》
(1)
3年前に、ミチオが演出した母に対する冗談が、引き起こした重大な結果。
ミカが、トカゲに生れ変る。ミチオは、ミカ=トカゲを大事にする。ミカの生まれかわりの「物語」。
母は人形をミカと呼ぶ。母にはミカの死が信じられない。母が持つ「物語」。
誰もが自分を慰める「物語」を作る。
しかしその「物語」に疲れてしまうときが来る。その時は「物語」が壊される。
(2)
ミチオは結局、多くの人の死にかかわる。
妹のミカは、ミチオの火事の「演出」で結果的に死んだ。ミカはトカゲに生れ変る。
仲が良かったトコお婆さんは、寿命で死んだ。トコお婆さんはネコに生れ変る。
S君は、ミチオが「死んでほしい」と頼んだために死んだ。S君はクモに生れ変る。
ミチオが好きなスミダさんは自動車にはねられ死ぬ。スミダさんは白百合に生れ変る。
お爺さん=泰造は、ミチオが包丁で刺し殺す。お爺さんはカマドウマに生れ変る。
生れ変りの話は、すべてミチオの創作した物語。
ミチオが、物語を終わらす。家に火をつける。
母が、焼け死ぬ。父も、焼け死ぬ。
生きて残ったのは、ミチオだけ。ミチオの周囲には死が充満する。