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心原性と呼吸原性・・・

2015-05-24 08:44:27 | CPR & AED
スタッフ Q です。

新年度が始まり、GWを過ぎると、県内の各小学校で救命の短期講習が始まります。

指導員もフル回転です(ちょっと大袈裟)。

毎年、体育の授業で水泳が始まる前に「心肺蘇生&AED」のやり方をおさらいする、
そんな感じです。


水の事故に備えて・・・ということですが、「一般の救命講習」は、

普段の社会生活 という環境において

成人の心停止

を「主な対象」にしています。

その場合、「心室細動」による心停止の可能性が圧倒的に多いので、胸骨圧迫からのCPR、
AEDによる除細動が効果的です。

最近、よく言われる「人工呼吸無しでの救命率の方が高い」というのも、このケースです。
(この件に関しては、また詳しく書きます)

このような「心臓疾患(急性心不全や急性心筋梗塞など)」による心停止を 心原性心停止
といいます。


しかし、心停止にいたる原因は心臓疾患だけではありません。

気道に異物などが詰まったり(気道閉塞)、水に溺れたりして呼吸が出来なくなって、
カラダが酸欠になって心臓が停まる。

このような呼吸から止まって心停止に至るものを呼吸原性心停止
といいます。

子どもの場合、呼吸器系の発達が未熟であったり、ぜんそく等の疾患、
さらに小さな子どもであれば、モノを口の中に入れてしまうという事故により呼吸が止まって、
心停止に至る。そんなケースが多いのだそうです。

さっきまで、きゃっきゃ言いながらテレビ観てたのに、気がついたらぐったりしてた・・・

そういう事例ですね。


この場合、「人工呼吸」が重要になってきます。
赤十字の「幼児安全法」では、子どもの場合は、人工呼吸の準備ができしだい、
胸骨圧迫の途中でも止めて、人工呼吸を始める、としています。

呼吸停止が先に起こった場合、心臓は直ちに停止しません。
意識がなくなっても、しばらくは動いています。
体内酸素の低下とともに脈が弱くなっていきます(徐脈といいいます)。
そして、心停止(この場合「心静止」)に至ります。


カーラーの救命曲線というものがあります。

正確性に問題があり、とも言われていますが、「心原性心停止」」と「呼吸原性心停止」を
理解するのに都合が良い資料です。

心原性心停止は
 心疾患により突然心臓が止まる(心室細動)。血流が停まるので各臓器も直ちに止まる。
 (呼吸も直ちに止まるので、「意識なし、呼吸なし=心停止」と考えてよい)

呼吸原性心停止は
 呼吸が止まるが、体内の酸素を消費するまで各臓器は動く。
 なので、心臓が止まるまでには数分~10分程度、時間がかかる。
 したがって、呼吸停止からの時間が短ければ、人工呼吸だけでも効果があり、
 さらに短い時間であれば、「気道確保」だけでも自発呼吸が再開するときがある。

ということになります。


そして、水の事故の場合、少々やっかいで・・・

どちらの心停止も起こる可能性がある!

ということです。

「溺れた」ならば呼吸原性心停止ですが、
いわゆる「心臓マヒ(という疾患はないのですが)」であれば心原性心停止でしょう。

どちらなのか?は、普通はわかりません
(病院であれば、モニターとか繋げているのでわかるかもしれませんが)。


水の中であれば、水面にあげて、まず出来るコトをする=人工呼吸ですね
(水面で、心臓マッサージはできません)。

出来るだけ早く陸地(プールサイド、ボートなど)に上げ、胸骨圧迫、AEDとなります。

大事なのは、どちらの心停止パターンも可能性があると考えて対応することです。
制限された環境下では出来るコトから始める。そして、使えるモノはすべて使う!です。

餅をノドに詰まらせて、という事故がときどきあります。
心停止に至った場合、呼吸原性心停止ですが、通報を受けた救急隊は通常、
AEDを装着します。
(呼吸原性心停止なら、ふつう心静止なので除細動の対象外=AEDは働きません)

それは、餅が気道閉塞して呼吸停止が起こったのか?
心疾患で、心停止が起こり、意識を失って口のなかの餅がノドに落ちたのか?

どちらかを証明するものはないから、です。


普通の社会生活において、成人が突然倒れた!というケースを想定した場合、
一般的な救命講習でならうことで充分です。

しかし、水に触れる機会の多い方は、上記ように少々複雑です。
ぜひ、よく理解していただきたい、と思います。


最後に、ざっくりですが・・・簡単に



          成人   子ども
     
普通の社会生活   心原性  呼吸原性

激しい運動等の最中 心原性  心原性

水の事故      両方   両方


あくまでも、参考ということで


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