育児版「ケアプラン」の創設 6月7日

石川県の試みが興味深い。介護保険のケアプランならぬ、育児支援のためのケアプラン、さながら「チャイルド・ケアプラン」制度の創設だ。0歳から2歳までの未就園児を持つ家庭を対象に、介護保険のケアプラン同様に、1ヶ月単位で家庭の事情に応じた「チャイルド・ケアプラン」を作成し、子育て世代を支援する。プランを立てるケアマネジャーならぬコーディネーターは、県の養成講座を受講し「子育て支援コーディネーター」の認定を受けた保育士があたる。親の仕事や都合に合わせて、一時保育・子育て支援センター・保育ママ(幼児を自宅などで預かる有償ボランティア)などのサービスを組み合わせて、プランは作成される。

例えば、一時保育の場合、0歳児なら月4回まで、1~2歳児なら月8回までの利用が可能で、利用料金の1/2を県が補助するという。コーディネーターは、必要に応じて、育児サークルへの仲介や、自治体の保健師による訪問指導の調整を行う。サービスは今年の10月からスタートするが、介護保険とは異なり、プランの作成は無料だ。この制度が、本当に若い親たちを、子育てに関する不安やストレスから解消し、必要に応じて子育てから解放することができるのならば、子育て世代にとっては画期的な支援体制の構築ということになる。自治体が必要十分に子育て家庭にコミットすることは、例えば幼児虐待やネグレクトを、未然に防ぐことにもつながる。

ケアマネジャーの中立性が保たれていない介護保険制度は、介護産業の利益が最優先され、自立が促進されるどころか利用者はどっぷりと介護サービスに漬かり、結果的に膨らむ市場が保険料の引き上げを余儀なくさせるという悪循環に陥ってしまっている。チャイルド・ケアプランでは介護保険の轍を踏まぬよう、コーディネーターの中立性の確保が最大の課題となる。

有償ボランティアとして一時保育や育児相談にのるなど、この制度には潜在的なパートナーとして、団塊の世代の子育て経験者が大いに期待できる。団塊の世代の年金を保険料の形で負担する子育て世代への、目に見える対価として、年金受給者たる団塊の世代が子育てをサポートしていくことは、極めて理に叶った施策と言える。地域のニーズを体系的に捉えることは、自治体に課せられた責任でもあり、自治体にしかできないことでもある。子育て支援に地域の潜在力を活用することは、結果的に行政の無駄を省き、目指すべき「簡素な政府」へ向けての第一歩となる。

核家族化が当たり前のこんにちでは、子育てを地域全体でサポートしていくことが必要だ。何故なら、経済的にも社会的にも、決して親だけでは子育ては成立しないからだ。この先100兆円を超える年金を受給すると想定される団塊の世代が、子育て世代に有償ボランティアの形で貢献していくことは、子育てをバックアップするだけの十分な財源の確保に、欠くべからざる手段の一つとなる。高齢者施策と子育て施策とは、実は表裏一体なのだ。

団塊の世代の年金を十分に確保するためには、消費税を基礎年金の財源にすることは、もはや避けられない。しかし、団塊の世代は、いずれは自然減少する。その時、消費税を子育て支援にシフトすれば、子育て財源は十分に確保されるのだ。子育て世代が、社会から十分なバックアップを受けていると実感するためにも、子ども1人あたり毎月5万円の子育て手当ての支給が望ましい。チャイルド・ケアプランに、団塊の世代が有償ボランティアとして参加する仕組みをつくり、団塊の世代の年金財源を将来的には子育てにまわすことを国民の総意として、子育て財源を磐石なものにしなければならないのだ。チャイルド・ケアプランは、少子化対策において、まさにグッド・アイディアだ。石川県のアイディアを国は倣い、チャイルド・ケアプランが全国展開されることを、私は大いに期待したい。
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