BSE:SRM付着検査キットで水際作戦 6月4日

米国産牛肉輸入再々開というお土産と3兆円の持参金を持って、今月末、小泉総理は訪米する。いずれも、日本国民を犠牲にしても尚、どうしても小泉ポチ総理が成し遂げたかったパフォーマンスだ。しかし現実には、それらがもたらす禍根は想像以上に深く、日本国民の生命と財産を著しく侵害するものだ。特に酷いのは、香港や台湾向けの米国産牛肉に、今尚相次いで脊柱などSRM(特定危険部位)の混入が発覚している最中に、日本政府が米国産牛肉の安全性は確保されたと判断して、輸入再々開に踏み切ることだ。誰の目にも、安全性は後退こそすれ、改善されたとは映っていないにもかかわらず、「安全」と言い張る日本政府のアメポチぶりには、あきれてものが言えないくらいだ。

BSEのヒトへの感染リスクを考えれば、世界の公衆衛生の観点から、日本は勿論、米国がとるべき態度に選択の余地はない。即ち、日本がそうであるように、最低でも「全頭検査の実施」「SRMの除去」「肉骨粉使用の全面禁止と焼却」」「トレーサビリティの確立」の四重の防御策を実施する必要がある。ところが、現実には、米国のリスクマネジメントは、限りなくゼロに等しく、BSE検査は、加工処理される牛のわずか1%に留まっている。24時間フル稼働のベルトコンベアーに吊り下げられた牛からのSRM除去作業は、見るからに完璧とは程遠く、しかもSRMの除去自体、米国内向けでは月齢30ヶ月以上の牛に限られている。更に、除去したSRMは、焼却されずにそのままレンダリングされて鶏や豚の飼料用の肉骨粉に加工されるのだ。

問題は、鶏糞や鶏舎内のゴミ(チキンリッター)が牛の飼料とされ、そこには当然、鶏が食べ残した肉骨粉が混入しているという点だ。一説には、飼料となる鶏糞およびチキンリッター100万tのうち30万tが肉骨粉であるというデータもあり、実数値がこれより少なかろうが勿論多かろうが、わずか1gの異常プリオンでも感染リスクはあるわけで、いずれにしても非常に危うい現実であることに相違ないのだ。少なくとも、日本向けに輸出される牛肉のトレーサビリティを、100%ディスクロージャーする責任が米国政府にはある。日本向けの肉牛の飼料に、鶏糞およびチキンリッターは使用されているのか否か、まずは、正確な情報を日本に報告する義務を、米国政府は負っている。

ただ、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が集団発生した発生源とされるテキサス州の競馬場レストランを、競馬場ごと解体して証拠を跡形もなく抹消する米国において、FDA(食品医薬品局)やUSDA(農務省)が日本向けに公表する資料にどれほどの信憑性があるかについては、甚だ疑問だ。昨年12月13日の日本の現地調査団の報告書を、日本国内で公表する前に米国が検閲し、多くの部分を真っ黒に塗りつぶして突き返してきた米国への信頼感は、限りなくゼロに近いものだ。そして最も腑に落ちないのは、それでも日本政府は、米国産牛肉の輸入再々開を決定するということだ。

であるならば、最後の砦である日本の税関で、徹底的に再検査する以外に方法はない。まさに、水際作戦だ。ロットごとに抜き取り検査を実施し、目視によるSRM付着検査の徹底、更に飛び散った脊髄液など目視できないものをも見逃さないために「SRM付着検査キット」の使用を義務付けることが必要だ。これまでSRM付着検査キットの使用は、日本でも義務付けられていなかったが、今後は繁用しているEUを見習って、日本でもチェック項目の一つに加えるべきだ。

そして、米国産牛肉同様に不安に満ちあふれているのが中国産牛肉だ。牛丼チェーンの松屋が、中国産の牛肉を使用しているが、中国でのBSE感染に関するデータは、ゼロではなく「不明」。即ち、データのない中国産牛肉は、米国産牛肉以上にリスキーであると考えざるを得ないのだ。農薬まみれの野菜を、平気で日本に輸出する中国の牛肉を、安全とは到底判断できない。ただし、消費者の求めに応じて、商品は開発されている。消費者の意識が、食品業界のモラルを左右する。何よりも、安心・安全の確保された食材を求め続ける消費者の態度こそが、全てに優るセイフティネットであることを、私たちは決して忘れてはならないのだ。
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