安倍総理の年頭所感について

2017年1月1日、安倍総理は年頭所感を発表しました。

天皇陛下は、即位後の平成2年以降、毎年、新年にあたり「ご感想」を発表してこられましたが、今年は取りやめとなりました。その事情について、12月26日の時事通信は、次のように伝えています。


(時事)
宮内庁の西村康彦次長は26日の記者会見で、天皇陛下が新年にあたって公表される所感を取りやめると発表した。23日に83歳の誕生日を迎えられた陛下の負担軽減の一環という。

西村次長は「ご年齢を考え、陛下の了解も得て見直した」としている。

陛下は即位以来、新年の所感を宮内庁を通じて毎年文書で公表されてきた。

年末年始は、公務や行事が立て込んでいるほか、誕生日会見や新年の一般参賀などがあり、新年の所感をやめても気持ちを国民に伝える場があるのも理由の一つという。

新年の所感とともに恒例となっている陛下と皇后さまが前年に詠まれた歌については、宮内庁が例年通り発表する。

宮内庁は陛下の公務について「大幅に減らすのは難しい」と説明してきた。西村次長は今後の公務の見直しは「ケース・バイ・ケースで考えていきたい」と話した。
(以上)


記事の内容から、年頭の「ご感想」の取りやめは、陛下の了解を得て、宮内庁が決めた、ということです。首相官邸、安倍総理が決めたと言ってよいと思います。陛下のお言葉を封じ込めたとしか思えません。

産経新聞の報道では、11月中旬から検討していた、ということです。

安倍総理の「年頭所感」は、即位以来27年間続けてこられた天皇陛下の年頭の「ご感想」が取りやめとなったことを前提に発表されました。

「年頭所感」の冒頭で、安倍総理は30年前の昭和62年の歌会始における昭和天皇御製の歌を掲げます。安倍総理の「年頭所感」は6回目ですが、過去にそんなことは一度もありませんでした。天皇陛下の年頭の「ご感想」取りやめを強く意識していると思われます。

そして、この年、「日本は、そして世界はすでに大きな転換期に差し掛かっていました」として、
「出生数が戦後最低を記録します。経済はバブル景気に沸きましたが、それは、長いデフレの序章となりました。世界では、米ソが中距離核戦力の全廃に合意し、冷戦が終わりを告げようとしていました」
「あれから四半世紀の時を経て、急速に進む少子高齢化、こびりついたデフレマンド、厳しさを増す安全保障環境。わが国が直面する、こうした課題に、安倍内閣は、この4年間、全力を挙げて取り組んでまいりました」
と、続けています。

30年前の昭和62年に「出生数が戦後最低を記録します」と言っていますが、この年の出生数は134万6658人でした。2016年は、ついに100万人を割って、98万1千人となりました。安倍内閣が全力を挙げて取り組んだ成果は、全く上がっていません。それどころか、この少子化・人口減少が日本社会の危機である、という認識も全くありません。

「年頭所感」の後段では、「私たちの未来は、他人から与えられるものではありません。私たち日本人が、自らの手で、自らの未来を切り拓いていく。その気概が、今こそ、求められています」と記しています。産経新聞によれば、憲法改正の国民的議論を喚起する姿勢を強調したということですが、日本国憲法を遵守し、立憲主義に立つ天皇陛下に対して、対抗する考えのようです。

「驕れる者久しからず」と言うよりほかない、と思います。


首相官邸HP「年頭所感」(平成29.1.1)

 

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