「世界に打って出る」なら、5億人市場のTPPより、33億人市場の「ASEAN+6」だ

政府は、「ASEAN+6EPA構想(東アジア包括的経済連携Comprehensive Economic Partnership in East Asia:CEPEA)」を次のように位置付けている。

 

(CEPEAとは)

・貿易投資自由化と経済協力を車の両輪とし、ASEANを扇の中心として進める東アジア地域の経済統合。

日本が主導して進めるイニシアティブであり、中国、インド、インドネシア等の新興国を巻き込んだ広域経済統合を推進し、経済政治両面で日本の影響力を維持・強化。

FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)のビルディングブロックとして、TPPと有機的に連関しながら推進すべきもの

 

(意義)

・日本企業を中心とする東アジア生産ネットワークという実態面での市場統合を政府として制度面から支援。

対象範囲の市場としての巨大さ・潜在性(インドまでカバーする経済統合)。

・GDPへの寄与度(対象範囲が広い。現状の「ハブ・スポーク」を「面」にすることで統合が一層深化。)

・日本の経済外交ツールとしてのオリジナリティ(ASEAN中心性の尊重、自由化・円滑化と経済協力(含インフラ整備)との併用、ERIA(東アジア・ASEAN経済研究センター)の存在等)

 

(産業界からの期待)

ASEAN+6の推進

(中略)わが国としては、将来におけるASEAN+6とTPPの円滑な統合を促し、FTAAPの実現に貢献すべきである。(中略)遅くともASEAN自由貿易地域(AFTA)の域内輸入関税が撤廃される2015年までにASEAN+6を完成すべきである。*(社)経団連「わが国の通商戦略に関する提言」(11年4月)より抜粋

 

以上、経済産業省・対外経済政策総合サイト CEPEA(東アジア包括的経済連携)(ASEAN+6EPA)構想概要より引用

 

政府は、日本が「世界に打って出る」ためにTPP参加が必要だと主張するが、まさに「世界に打って出る」ならASEAN+6EPA構想の方がより戦略的であり、日本にとっての国益だ。政府構想も指摘する通り、何よりもTPPとASEAN+6とでは抱える人口が桁違いだ。TPP(シンガポール・ブルネイ・チリ・NZ・米・豪・ベトナム・ペルー・マレーシア)の合計は5億人。対するASEAN+6(インドネシア・シンガポール・タイ・フィリピン・マレーシア・ブルネイ・ベトナム・ミャンマー・ラオス・カンボジア+日中韓印豪NZ)の合計は33億人。

 

TPPにあってASEAN+6にない国は、米・チリ・ペルー。ASEAN+6にあってTPPにない国は、インドネシア・タイ・フィリピン・ミャンマー・ラオス・カンボジアそして日本・中国・韓国・インド。インド・中国を含むASEAN+6の巨大市場は、日本に無限の可能性を与えるものだ。一方、米国が、日本をTPPに巻き込み、日本を通してASEAN+6の巨大市場を取り込みたいと考えるのは想像に難くない。

 

しかし日本はTPPを決して甘く見てはならない。前原誠司氏はTPP慎重派を事実に基づかない議論をする「TPPおばけ」と揶揄したが、事実に基づかない妄想を抱いているのはどっちの方か。米GMOメジャー「モンサント」が米政府と一体となってアルゼンチン、メキシコ、パラグアイ、インド、イラクの食糧主権・農業主権を奪った「事実」に基づけば、日本がTPPに参加する行為は、まさにカモがネギをしょって罠に落ちる姿そのものである。

 

外国市場での障壁撤廃のために「強い保護」と「最大限の市場アクセス」を求めた「TPPのための米国企業連合」にモンサントは名を連ねる(主役)。「TPPのための米国企業連合(米国1%の支配層)」は、2011.2.3、ジーン・スパーリング国家経済会議委員長宛ての文書で、自分たちに絶対優位にTPP交渉を推し進めるよう強く要請している。TPPでの日米winwinなどあり得ないことは、既にはっきりしているのだ。

 

奇しくも経産省・対外経済政策総合サイトで掲げるように、日本が目指すべきは、ASEAN+6(33億人市場)の経済連携を強化して、将来TPP(5億人市場)と統合し、更に、ロシア・カナダ・メキシコ等も含むFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を実現させることだ。今夏8/13、ASEAN+6の経産閣僚は、日本と中国の共同提案「東アジア自由貿易地域(EAFTA)及び東アジア包括的経済連携(CEPEA)構築を加速化させるためのイニシアティブ」を歓迎し協議を開始した。日本政府がとるべき「世界に打って出る」戦略は、中国・インドも推進するASEAN+6であって、米国支配層による日本支配となるTPPではない。

 

TPPに慎重な民主党191名の国会議員は、ただ署名をするだけでなく、米エージェントの前原誠司氏らTPP推進派を、「ASEAN+6」戦略で論破すべきだ。

 

 

(参考)

 

経産省HP「ASEAN+6EPA構想概要」(リンク切れ)

 

経産省HP「対外経済政策総合サイト」(リンク切れ)

 

外務省HP 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)

 

経済産業省HP 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)

 

TPPのための米国企業連合(はたともこブログ)

 

TPP米国支配の真実(はたともこブログ)

 

 

 

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